アノマリー覆し最高値更新、市場を覆う楽観 (1) 【シルバーブラットの「S&P500」月例レポート】
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S&P500月例レポートでは、S&P500 の値動きから米国マーケットの動向を解説します。市場全体のトレンドだけではなく、業種、さらには個別銘柄レベルでの分析を行い、米国マーケットの現状を掘り下げて説明します。 ●THE S&P 500 MARKET:2024年9月 個人的見解:FRBの利下げと市場の最高値更新で喜びに沸くも、財政支出と増税に対する懸念が強まる(何ということ) 9月は月間騰落率が最も悪い月であり(1926年以来、平均で1.16%下落)、市場に対する期待感は低く、最初の1週間で4.25%下落するという、週間では2023年3月(週間で4.55%下落)以降で最悪のスタートを切りました。こうした状況を受けて、投資家は「最悪に備えて計画を立て、そこまで悪くはならないことを祈る」をモットーに9月相場に臨みました。 しかし、弱気相場(つまりは景気後退、失業率の上昇、原材料価格の高騰)へと向かう過程で奇妙なことが起こりました――懸念されていたことが何一つ起きなかったのです。経済は堅調さを維持し、インフレは制御され、米連邦準備制度理事会(FRB)は0.50%の利下げを決定し、さらに年内にあと2回、0.25%ずつの利下げが予想されています。そして(警戒されていた)円キャリートレードについても再び話題になること(あるいは検討されること)はありませんでした。2024年第2四半期の企業利益は公式に過去最高を記録し(売上高は過去最高に0.3%及びませんでした)、第3、第4四半期の利益も過去最高となることが見込まれています。また、(月末近くになると)中国も思い切った景気支援策を打ち出しました(中国が不動産市場の下支えと消費の喚起という目的を達成するためには、今後も刺激策を継続する必要があります)。こうした状況も米国への低コストの供給を後押ししています(米国の政治家がその阻止を公約に掲げていたとしても)。 結果として9月の株式市場は終値で最高値を5度更新し(年初来では43回目)、S&P500指数は最高値を更新して(5762.48)、9月の取引を終えました。またダウ・ジョーンズ工業株価平均(ダウ平均)も9月中に7回最高値を更新し(年初来では33回)、過去最高値(4万2330.15ドル)で月を終えました。S&P 500指数の2024年末の目標株価も上昇しました(6000、9月末のS&P500指数はこれを4.1%下回る)。金価格も(ようやく)上昇基調を辿った一方で、ガソリン価格とエネルギー株はともに下落しました。9月のS&P500指数の騰落率は2.02%上昇(配当込みのトータルリターンはプラス2.14%)と極めて満足できる結果となり、年初来でも20.81%上昇(同プラス22.08%)となりました。 市場関係者にとっては全てが順調に進みました。ブローカーが顧客宛てに送付した四半期運用報告書には、S&P500指数が過去1年間で34.38%上昇(同プラス36.35%)したことが誇らしげに「弊社の運用実績をご覧ください。僅かな手数料でこれだけ成果を達成しました)という文章とともに記載されており、「利益を確定して、売り抜けましょう」(もしくは年内はもう休暇を楽しみましょう)というコメントはほとんどありませんでした。市場参加者の間では楽観的なムードが支配的で、この先の暗い見通しの可能性について話題にしたがる人はいませんでした。 ●インデックスの動き ○9月はS&P500指数の月間騰落率が最も悪い月で、1926年以降の平均騰落率は1.16%の下落となっています。2024年9月も最初の週に4.25%下落しました。背景には、金利動向、FRBの金融政策、円キャリートレード、景気に対する警戒感があり、売り一色の展開となりました。売りが一巡すると、市場では見直しの動きから底値買いが入り、第2週には相場は反発に転じて4.02%上昇しました。投資家のセンチメントが一変し、市場の注目はFRBの金融政策に集まりました。 FRBに関して言えば、政策金利を0.50%(賛成11票に対して反対は1票)引き下げて、4.75%-5.00%とすることを決定しました。その後の数日間でS&P500指数は5700を(終値でも)突破し、終値での過去最高値を更新しました。ダウ平均も史上初めて終値で4万2000ドルを突破し、過去最高値を更新しました。9月中にS&P500指数は5回にわたり最高値を更新し(年初来では43回)、ダウ平均は7回更新しました(年初来では33回)。 ⇒9月にS&P500指数は2.02%上昇しました(配当込みのトータルリターンはプラス2.14%)。8月は2.28%上昇(同プラス2.43%)、7月は1.13%上昇(同プラス1.22%)でした。 ⇒過去3ヵ月間のS&P500指数の騰落率は5.53%の上昇となりました(同プラス5.89%)。 ⇒年初来では20.81%上昇(同プラス22.08%)となり、年率換算すると23.94%上昇(同プラス29.43%)に相当します。 ⇒過去1年間では34.38%上昇(同プラス36.35%)となっており、四半期報告書に素晴らしい運用成果として記載されるでしょう。 ⇒9月は値上がり銘柄数が324銘柄、値下がり銘柄数が179銘柄となり、差は縮小したものの、引き続き値上がり銘柄数が圧倒的に多くなりました(8月は値上がり銘柄数が355銘柄に対し、値下がり銘柄数は148銘柄)。 ⇒9月は20営業日のうち12営業日で上昇し(8月は22営業日のうち13営業日で上昇、年初来では168営業日のうち107営業日で上昇)、5営業日で1%以上変動しました(3営業日が上昇、2営業日が下落)。年初来では41営業日で1%以上変動しました(27営業日が上昇、14営業日が下落)。 ⇒11セクターのうち、8セクターが上昇しました(8月は9セクターが上昇)。 ○S&P500指数の時価総額は9月に1兆2630億ドル増加して(8月の1兆590億ドル増加を上回る)、48兆7010億ドルとなりました。年初来では8兆6620億ドル増加しました。2023年は7兆9060億ドルの増加、2022年は8兆2240億ドルの減少でした。 ⇒ダウ平均は、9月に終値での最高値を7回更新し(年初来では33回)、4万2000ドルを(終値でも)突破しました(終値最高値は4万2330.15ドル、取引時間中の最高値は4万2628.32ドル)。なお、8月は4回、7月は3回最高値を更新しています。同指数は9月に1.85%上昇して(配当込みのトータルリターンはプラス1.96%)、4万2313.00ドルで月を終えました。8月は1.76%上昇して(同プラス2.03%)4万1563.08ドル、7月は4.41%上昇して(同プラス4.51%)4万0842.79ドルで月を終えました。過去3ヵ月の騰落率は8.21%上昇(同プラス8.72%)、年初来では12.31%上昇(同プラス13.93%)、過去1年間では26.33%上昇(同プラス28.85%)となっています。2023年は13.70%の上昇(同プラス16.18%)、2022年は8.78%の下落(同マイナス6.86%)でした。 ○9月の日中ボラティリティ(日中の値幅を安値で除して算出)は、1.08%と8月の1.32%から低下し(7月は0.95%)、年初来では0.93%となっています。なお、2023年通年は1.04%、2022年は1.83%、2021年は0.97%、2020年は1.51%でした(長期平均は1.42%)。 ○9月の出来高は、8月に前月比1%増加した後に、同8%増加し(営業日数調整後)、前年同月比では8%増加となりました。2024年9月までの12ヵ月間では前年同期比6%減少しています。2023年通年では前年比1%減で、2022年通年では同6%増でした。 ○9月は1%以上変動した日数は20営業日中5日(上昇が3日、下落が2日)、2%以上変動した日数は1日(下落)でした。8月は1%以上変動した日数は22営業日中9日(上昇が6日、下落が3日)、2%以上変動した日数は2日(上昇が1日、下落が1日)でした。年初来では、1%以上変動した日数は41日(上昇が27日、下落が14日)で、2%以上変動した日数は5日(上昇が2日、下落が3日)でした。2023年通年は、1%以上変動した日数が250営業日中63日(上昇が37日、下落が26日)、2%以上変動した日数が2日(上昇が1日、下落が1日)でした。 9月は20営業日中9日で日中の変動率が1%以上となり、3日で日中の変動率が2%以上となりました。対して8月は1%以上の変動が22営業日中14日で、2%以上変動した日が4日ありました。年初来では、65日で日中の変動率が1%以上となり、2%以上変動した日数は9日ありました。2023年通年では1%以上の変動が113日、2%以上の変動が13日で、3%以上の変動はありませんでした(直近で3%以上の変動があったのは2022年11月30日)。2022年は1%以上の変動が219日、2%以上の変動が89日、3%以上の変動が20日でした(4%以上の変動が4日、5%以上の変動が1日)。 過去の実績を見ると、9月は43.8%の確率で上昇し、上昇した月の平均上昇率は3.28%、下落した月の平均下落率は4.70%、全体の平均騰落率は1.16%の下落となっており、最もパフォーマンスの悪い月となっています。2024年9月のS&P500指数は2.02%の上昇でした(9月では2019年の1.72%以来のプラスリターン)。 10月は57.3%の確率で上昇し、上昇した月の平均上昇率は4.25%、下落した月の平均下落率は4.61%、全体の平均騰落率は0.51%の上昇となっています。 今後の米連邦公開市場委員会(FOMC)のスケジュールは、2024年は11月6日-7日、12月17日-18日、2025年は1月28日-29日、3月18日-19日、5月6日-7日、6月17日-18日、7月29日-30日、9月16日-17日、10月28日-29日、12月9日-10日となっています。 ※「アノマリー覆し最高値更新、市場を覆う楽観 (2)」へ続く 株探ニュース