アノマリー覆し最高値更新、市場を覆う楽観 (2) 【シルバーブラットの「S&P500」月例レポート】

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市況

●主なポイント

 ○9月の市場は減速したものの上昇を続け、FRBによる0.50%の利下げもあり、結果的に2.02%の上昇となりました(配当込みのトータルリターンはプラス2.14%)。8月は2.28%上昇(同プラス2.43%)、7月は辛うじて1.13%上昇(同プラス1.22%)、6月(3.47%上昇、同プラス3.59%)と5月(4.80%上昇、同プラス4.96%)は力強い上昇を見せていました。これにより、2024年第3四半期の3ヵ月間では5.53%上昇(同プラス5.89%)となりました。年初来では20.81%上昇(同プラス22.08%)となり、年率換算すると23.94%上昇(同プラス28.43%)に相当します。過去1年間では34.38%上昇(同プラス36.35%)となっています。

  ⇒マグニフィセント・セブンは、8月は下落してS&P500指数 のトータルリターンを0.75%押し下げましたが、9月は反転して同指数のトータルリターンの55.2%を占めました。これら7銘柄のS&P500指数の年初来上昇率に占める割合は45.3%となっています。9月は、7銘柄の株価が平均5.72%上昇したのに対し、指数構成銘柄の平均騰落率は2.10%上昇でした。

 ○9月の主なデータ

  ⇒9月のS&P500指数は、上昇基調が続いて過去最高値の更新を続け、2.02%上昇して月を終えました。これで5ヵ月連続の上昇となり(8月は2.28%上昇、7月は1.13%上昇、6月は3.47%上昇、5月は4.80%上昇)、5ヵ月累計では14.43%上昇しています。9月は20営業日のうち12営業日で上昇しました(8月は22営業日のうち13営業日で上昇)。また、値上がり銘柄数が324銘柄、値下がり銘柄数が179銘柄となり、差が縮小したものの、依然として値上がり銘柄が上回りました(8月は値上がり銘柄数が355銘柄、値下がり銘柄数は148銘柄でした)。9月の出来高は前月比7%増、前年同月比では8%増となりました。

  ⇒9月は11セクターのうち8セクターが上昇しました。8月は9セクターが上昇、7月も9セクターが上昇しました。9月のパフォーマンスが最高となったのは一般消費財で、7.02%上昇しました(年初来では13.21%上昇、2021年末比では0.33%下落)。パフォーマンスが最低だったのは前月に続いてエネルギーで、2.79%下落しました(同5.69%上昇、同60.02%上昇)。

  ⇒S&P500指数は9月に2.02%上昇して、5762.48で月を終えました(配当込みのトータルリターンはプラス2.14%)。8月は2.28%上昇(同プラス2.43%)して5648.40、7月は1.13%上昇(同プラス1.22%)して5522.30でした。過去3ヵ月間(第3四半期)では5.53%上昇(同プラス5.89%)、年初来では20.81%上昇(同プラス22.08%)、過去1年間では34.38%上昇(同プラス36.35%)となりました。2023年通年は24.23%上昇(同プラス26.29%)、2022年通年は19.44%下落(同マイナス18.11%)でした。

  ⇒S&P500指数はFRBによる0.50%の利下げに反応し、初めて5700を突破しました。9月には終値での過去最高値を5回更新しました(8月は0回、7月は7回、6月は7回、5月は2回、4月は0回、3月は8回、2月は8回、1月は6回)。年初来での最高値更新回数は43回となりました。2023年の最高値更新回数は0回、2022年は1回、2021年は70回でした(過去最高は1995年の77回)。

  ⇒コロナ危機前に付けた2020年2月19日の高値からは70.18%上昇(同プラス83.08%)となっています。

 ○米国10年国債利回りは8月末の3.91%から3.78%に低下して月を終えました(2023年末は3.88%、2022年末も3.88%、2021年末は1.51%、2020年末は0.92%、2019年末は1.92%、2018年末は2.69%、2017年末は2.41%)。30年国債利回りは8月末の4.20%から4.13%に低下して取引を終えました(同4.04%、同3.97%、同1.91%、同1.65%、同2.30%、同3.02%、同3.05%)。

 ○英ポンドは8月末の1ポンド=1.3131ドルから1.3374ドルに上昇し(同1.2742ドル、同1.2099ドル、同1.3525ドル、同1.3673ドル、同1.3253ドル、同1.2754ドル、同1.3498ドル)、ユーロは8月末の1ユーロ=1.1050ドルから1.1136ドルに上昇しました(同1.0838ドル、同1.0703ドル、同1.1379ドル、同1.2182ドル、同1.1172ドル、同1.1461ドル、同1.2000ドル)。

 円(対米ドル)は8月末の1ドル=146.14円から143.71円に上昇し(同141.02円、同132.21円、同115.08円、同103.24円、同108.76円、同109.58円、同112.68円)、人民元は8月末の1ドル=7.0930元から7.0180元に上昇しました(同7.1132元、同6.9683元、同6.3599元、同6.6994元、同6.9633元、同6.8785元、同6.5030元)。

 ○9月末の原油価格は7.1%下落し、8月末の1バレル=73.58ドルから同68.36ドルとなりました(2023年末は同71.31ドル、2022年末は同80.45ドル)。米国のガソリン価格(EIAによる全等級)は9月に3.8%下落し、1ガロン=3.303ドルとなりました(8月末は3.433ドル、2023年末は同3.238ドル、2022年末は同3.203ドル、2021年末は同3.375ドル)。2020年末から原油価格は41.2%上昇し(2020年末は1バレル=48.42ドル)、ガソリン価格は41.8%上昇しました(2020年末は1ガロン=2.330ドル)。

  ⇒2024年8月時点のEIAの報告によると、ガソリン価格の内訳は、55%が原油、17%が販売・マーケティング費、13%が精製コスト、15%が税金となっています。

 ○金価格は8月末の1トロイオンス=2535.40ドルから上昇し、2654.50ドルで9月の取引を終えました(2023年末は2073.60ドル、2022年末は1829.80ドル、2021年末は1901.60ドル、2020年末は1520.00ドル、2019年末は1284.70ドル、2018年末は1305.00ドル)。

 ○VIX恐怖指数は8月末の15.00から16.73に上昇して9月を終えました。月中の最高は23.76、最低は14.90でした(2022年末は21.67、2021年末は17.22、2020年末は22.75、2019年末は13.78、2018年末は16.12)。

  ⇒同指数の2023年の最高は30.81、最低は11.81でした。

  ⇒同指数の2022年の最高は38.89、最低は16.34でした。

  ⇒同指数の2021年の最高は37.51、最低は14.10でした。

  ⇒同指数の2020年の最高は85.47、最低は11.75でした。

 ○目標株価は引き続き上昇しています。S&P500指数に対する市場関係者の1年後の目標株価は2023年11月末時点から10ヵ月連続で上昇し、現在値から8.7%上昇の6265となっています(8月末時点では10.4%上昇の6238、7月末時点では6119)。それ以前の目標値は、9ヵ月連続の低下から11ヵ月連続の上昇を経て、2023年11月まで2ヵ月連続で低下していました。ダウ平均の目標株価も3ヵ月連続の上昇から2ヵ月連続の低下を経て、9月まで10ヵ月連続で上昇し、現在値から5.1%上昇の4万4468ドルとなっています(8月末時点では6.5%上昇の4万4282ドル、7月末時点では4万4097ドル)。

●米国経済

 ○8月の製造業購買担当者景気指数(PMI)は、事前予想の48.0に対して47.9となりました。速報値は48.0、7月は49.6でした。

 ○8月のISM製造業景気指数は、事前予想の47.5に対して47.2となりました。7月は46.8でした。

 ○8月のサービス業PMIは、7月の55.0から上昇して55.7となりました。事前予想は55.2でした。

 ○8月のISM非製造業景気指数は、事前予想の51.1に対して51.5となりました。7月は51.4でした。

 ○9月のPMI速報値は、製造業が8月の47.9を下回る47.0、サービス業は8月の55.7を下回る55.4となりました。

 ○8月の消費者物価指数(CPI)は、事前予想通りの前月比0.2%上昇となりました(7月は同0.2%上昇)。前年同月比では2.5%上昇となり、7月の同2.9%上昇から低下しました。食品とエネルギーを除いたコアCPIは、前月比で0.3%上昇、前年同月比では3.2%上昇となりました(7月も同3.2%上昇)。

 ○8月の生産者物価指数(PPI)は、予想通りの前月比0.2%上昇となりました(7月は同0.1%上昇)。前年同月比では1.7%上昇となり、7月の同2.2%上昇から低下しました。コアPPIは、前月比で0.3%上昇、前年同月比では2.4%上昇しました(7月も同2.4%上昇)。

 ○2024年第2四半期のGDP成長率確報値は、市場予想通りの前期比年率3.0%となりました。個人消費支出(PCE)は前期比2.8%増でした。

 ○2024年第2四半期の企業利益は前年同期比14.2%増となりました。

 ○8月の個人所得は前月比0.2%増となりました。事前予想は同0.4%増でした(7月は同0.3%増)。個人消費支出は事前予想の同0.3%増に対し、同0.2%増となりました(7月は同0.5%増)。8月のPCE価格指数は、前月比0.1%上昇、前年同月比では2.2%上昇となりました(7月は同2.5%上昇)。8月のコアPCE価格指数は、前月比0.1%上昇、前年同月比では2.7%上昇となりました(7月は同2.6%上昇)。

 ○2024年第2四半期の労働生産性の改定値は前期比年率2.5%上昇と、速報値の同2.3%上昇から上方修正されました。単位労働コストは前期比0.4%上昇と、速報値の同0.9%上昇から下方修正されました。

 ○8月の鉱工業生産指数は、市場予想の前月比0.1%上昇に対し、同0.8%の上昇となりました。7月は当初発表の前月比0.6%低下から同0.9%低下に下方修正されました。設備稼働率は78.0%となり、7月の77.4%から上昇しました。

 ○7月の製造業受注は市場予想の前月比4.6%増に対して同5.0%増となりました。6月は同3.3%減でした。

 ○8月の耐久財受注は市場予想の前月比2.7%減に対し、同横ばいでした。7月は同9.9%増でした。

 ○7月の卸売在庫は市場予想の前月比0.3%増に対し、同0.2%増となりました。6月は当初発表の同0.2%増から同横ばいに下方修正されました。

  ⇒8月の卸売在庫は前月比0.2%増(市場予想通り)となりました。7月は同0.3%増でした。

 ○8月の小売在庫は前月比0.5%増となりました。7月は同0.8%増でした。

 ○7月の企業在庫は前月比0.4%増となりました。6月は同0.3%増でした。

 ○7月の建設支出は市場で前月比0.1%増が見込まれていたのに対し、同0.3%減となりました。6月分は当初発表の前月比0.3%減から同横ばいに上方修正されました。7月は前年同月比では6.7%増(6月は同7.2%増)でした。

 ○7月の貿易収支の赤字額は市場予想通り788億ドルとなりました。6月は733億ドルの赤字でした。

  ⇒8月の財の貿易収支の速報値は1000億ドルの赤字が見込まれていたのに対し、943億ドルの赤字となりました。輸入は前月比1.6%減(7月は同2.3%増)、輸出は同2.4%増(7月は同横ばい)でした。

 ○8月の輸入物価指数は前月比0.3%下落しました。7月は同0.1%上昇でした。前年同月比では0.8%上昇と、7月の同1.6%上昇から鈍化しました。輸出物価指数は前月比0.7%下落となりました。7月は当初発表の同0.7%上昇から同0.5%上昇に下方修正されました。8月は前年同月比では0.7%下落と、7月の1.4%上昇から低下しました。

 ○9月のミシガン大学消費者信頼感指数の速報値は前月の67.9から69.0に上昇しました。1年先のインフレ期待は前月の2.8%から2.7%に低下しました。

 ○8月の景気先行指数は前月比0.2%の低下となりました。7月は同0.6%の低下でした。

 ○民間調査機関コンファレンスボードが発表した9月の消費者信頼感指数は事前予想の103.0に対し、98.7となりました。8月は当初発表の103.3から105.6に上方修正されました。

 ○9月のミシガン大学消費者信頼感指数の確報値は事前予想の69.9に対し、70.1となりました。1年先のインフレ期待は速報値から変わらずの2.7%でした。

※「アノマリー覆し最高値更新、市場を覆う楽観 (3)」へ続く

株探ニュース

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