武者陵司「高市氏と安倍氏の決定的相違点」

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コラム

―高市氏が日本の救世主になる理由―

――日本初の女性首相が誕生。米国、フランスに先駆ける歴史的快挙なのに、人々の評価は低く、困難山積の船出というものがメディアと専門家の評価です。連日史上最高値を更新している株式市場の評価とは熱量がだいぶ違いますね。

武者: 市場の熱狂が正しいのではないだろうか。強烈な株高は持続し、3年後、遅くても5年後に日経平均株価10万円が見えてくるだろう。

――力強い見通しですが、まず当面のスケジュールから教えてください。

武者:臨時国会での首班指名に続き、次のようなことが起きるだろう。(1)懸案インフレ対策としての家計支援(給付金付き減税、ガソリン・軽油引取税の暫定税率の廃止)、医療機関支援などの補正予算成立。(2)ASEAN(東南アジア諸国連合)首脳会議、トランプ訪日での外交デビューなど華々しいものに。トランプ氏の高市氏支援は鮮明。「知恵のある人……」などの好意的紹介とエール。(3)メディアや自民党党内、野党などの反高市派の批判も強まろう。まるで揚げ足取りのような。政策遂行が滞る場面もあり得る。

――日本維新の会が連立に加わったとはいえ、少数与党であることは変わりません。政権の不安定が続くとなると、解散・総選挙が早まりそうですね。

武者:少数与党というだけでなく、新政権は選挙の洗礼を経ておらず、国民の信任を得たとは言えない。それは今回の政変劇が戦後政治の基軸を変えるものだからである。これまでの自公連立リベラル中道連合 (憲法改正やスパイ防止法、防衛力増強などを後回しにしてリベラル政策を推進、財政健全化路線)と言えるものであった。それに対して自民・維新の新連合は保守連合(改憲、自主防衛、積極財政)と言え、これは保守革命ともいえる基軸の大旋回である。公明の連立離脱は、高市氏率いる自民党の路線大転換を見越してなされたものであり、平和主義に徹する公明党にとって、他の選択肢はなかった。これほどの路線転換が永田町内の論理でなされた以上、国民の審判を受けるべきという世論は高まる。高市氏は年内、または新年早々に解散総選挙を打ち出す可能性が高い。

――来るべき解散総選挙はどのような結果になるでしょうか。

武者:高市自民党の圧勝の可能性が高い。高市氏には、(1)政策に対する国民の支持、(2)市場の支持、(3)高市氏個人の人気、という3要因がある。

 (1)政策に対する国民の支持→そもそも下馬評で劣勢であった高市氏が自民党総裁に選ばれたのは、議員での不人気を上回る、国民の支持があったから。(A)オールドメディアでの劣勢をネット・SNSで覆す、(B)エリート層での劣勢を一般人の支持で覆す、(C)既得権益グループの支持皆無の中で国民の既得権益批判を得る、(D)建前偽善の理念優勢に対して、リアリズムに基づく解決策で対抗する、(E)建前・解決策なしの反資本主義に対して経済合理性で対峙する、などの対抗軸で支持を得た。選挙では自民党の失地回復、与党の過半数確保はほぼ確実であろう。

 (2)市場の支持→財政健全化路線は、決定的に重要な市場の支持も得られない。過去、政権誕生時の株価の反応は二つに分かれる。金融所得課税を打ち出した岸田氏、財政健全化路線を主張していた石破氏の政権発足時、株式市場は大幅下落で反応し、厳しい財政スタンスの緩和を余儀なくされた。それに対して第二次安倍政権発足時には、日経平均株価は半年で73%という急騰を見せ、安倍氏の政策(アベノミクス)遂行を後押しした。株式市場の支援がなければ、アベノミクスは頓挫していただろう。

 (3)高市氏個人の人気強まる→主流派メディアの反高市報道(「支持率下げてやる」「支持率下げる写真」「支持率下げることしか書かないぞ」といった報道など)で判官びいきが高まるだろう。また、高市氏の強面(こわもて)の右翼政治家という、誇張されたイメージが是正されると思われる。SNSでの圧倒的人気を見ると、議会全会一致の不信任決議で失職した斎藤兵庫県知事が、その後の出直し選挙で再選を果たしたことの再現が起きるかもしれない。

――となると、高市政権の長期政権化の可能性が強まってきますね。

武者:長期政権になると思う。高市氏には先達者である安倍元首相にない3つの優位性がある。(a)稼ぐ力、(b)保守・ナショナリズムを正当化する現実、(c)ネット・SNSによる情報発信力、である。

 (a)稼ぐ力→2012年12月の第二次安倍政権発足時の日本の稼ぐ力は奈落の底にあった。2000年以降、十数年にわたって名目GDP(国内総生産)は500兆円前後、法人企業利益は40兆円前後で低迷し、株式時価総額や税収は10年前に比べ1~2割減少、1ドル=85円の超円高の下で日本企業の競争力は地に落ち、総力を結集した日の丸半導体エルピーダメモリは破綻した。雇用も10年間で5%減少した。安倍政権が投資や国民生活向上に振り向けることができる原資は全くなかった。それに対して、高市政権船出の現在、アベノミクスの成功と円高是正により企業収益は劇的に改善し、税収は倍増、株式時価総額は4倍となり、国民の富は激増している。政府には恒常的税収の上振れ(年間6~10兆円)に加えて、米国国債保有の為替益40兆円、日銀ETF(上場投資信託)投資含み益50兆円、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)累積運用益166兆円など、巨額の隠れた投資原資もある。いかに高市政権の船出が投資余力に恵まれているかは、クリスタルクリアであろう。

 (b)ナショナリズム・保守主義を正当化する現実→第二次安倍政権誕生時、日中は尖閣で対立し、米国の態度は不明であった。靖国神社に参拝した安倍首相を、米保守系新聞であるウォール・ストリー・ジャーナル(WSJ)までが危険な国家主義者の登場とのキャンペーン記事を連載した。中国は日本軍国主義に対して共に戦った米中は、日本の軍国主義復活に対しても共に戦うべきだと米国に呼び掛けた。中国の南沙諸島の埋め立ても、中国国内における民族抑圧も、ロシアによるウクライナ侵略も見えていなかった。北朝鮮のミサイルも火遊びと軽視されていた。国内では従軍慰安婦捏造報道を朝日新聞が自己批判(2014年8月)する前であり、執拗にこの問題を取り上げた安倍氏を報道の自由に対する権力の介入と、メディアは一斉に攻撃していた。安倍氏の主張したナショナリズム・保守主義を正当化できる現実は何も見えていなかった。しかし、高市政権誕生の今、日本の領土と国民の命を守る必要性は、ほぼすべての国民の前に明らかになっている。

 (c)情報発信・拡散力→2012年当時、インターネットによる個人の情報発信は限られ、SNSの利用も普及しておらず、情報発信は圧倒的にマスコミ4媒体(テレビ・新聞・ラジオ・雑誌)が支配していた。しかし今日、インターネット広告はマスコミ4媒体を大きく凌駕し、マスメディアの影響力は顕著に低下した。政府も企業団体もSNSにより情報発信し、受け手である個人もそれに呼応する双方向チャンネルが確立している。かつて存在していた情報格差はSNSの登場によって劇的に縮小し、既存メディアによる世論支配力は著しく弱くなった。メディアに対する安倍氏の攻撃は、権力による言論統制と見なされてしまったが、今日対等な空間での論戦をすべての国民が観察できるようになった。米国でのトランプ政権の誕生も、先の参院選挙での保守系新興政党の躍進も、この情報環境の激変によっている。高市政権はマスメディアを通さず直接にSNSにより国民に呼びかけ始めている。

――高市政権が長期政権になれば、日本は復活できますか。

武者:その可能性は十分ある。(1)アベノミクスの大いなる遺産がある。(2)トランプ革命からの教訓がある。(3)日本政治に真のリアリズムを取り戻せる。

 高市政権は(Ⅰ)米中冷戦下のグローバル秩序の構築・米国主導に寄与、(Ⅱ)Net革命の下での情報格差の解消・恩恵、(Ⅲ)日本復活論の確立……日本自立、日本美徳の再評価、などの歴史的役割を果たすだろう。

――高市政権、日本ルネサンスに基づけば株式シナリオはどうなるか。

武者:爆騰。3~5年で10万円。もともと日本株は(A)超割安、(B)超好需給(株持たざるリスク大)に加えて、株高に必須の(3)株高ストーリーが、高市日本ルネサンスで整う。驚くほどの明るい日本が待っている。

(2025年10月24日記 武者リサーチ「ストラテジーブレティン390号」を転載)

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