【北浜流一郎のズバリ株先見!】 ─ 船の大敵を退ける「知られざる世界企業」とは?
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「船の大敵を退ける『知られざる世界企業』とは?」 ●好ましい想定外、日経平均の最高値更新は近い 最近、驚かせられることが多くなっていないだろうか。その一方で、想定内の出来事であり、特に驚くことはない。こういうこともある。参院選での与党大敗はその一つではないか。そして、日米ともに金利の現状維持が決まった。これも想定内であり、「まあ、そうなるよね」で済んだ人がほとんどのはずだ。しかし、「想定外」の出来事は正直気になるところ。それには好ましいものと、そうではないものとがある。まずは好ましくないものから見ていこう。 選挙での自民党大敗を受けた後の同党の内部抗争の余波だ。低下した同党のイメージをさらに損なうにも関わらず、醜い権力争いを繰り広げている。それが困るのは、選挙で自民党を含めて各党が国民に約束した公約の実行が難しくなっている。これになる。そんなことなどお構いなしに不毛な責任追及をやっているわけで、マスコミを通じてそれを目にする度に「こんなことでは政治家たちは頼りにならない。株でしっかり頑張って資産を増やさねば」――こう思うのは私ばかりではないだろう。 もちろん、好ましい「想定外」もあり、その筆頭が米国による対日関税15%の決定だ。これにより企業は覚悟ができたはずで、今後15%の関税ダメージを補うべく、どの企業もあらゆる手を打つことになる。それがすべてうまく行くなんてことはない。しかし、日本企業はこれまで幾多のプレッシャーを乗り越えてきた。今回もコストダウンや新製品の開発、リストラなどで乗り切る。こう見てよい。 すでに東京市場ではそれに期待して、 TOPIX(東証株価指数)が先月、史上最高値をクリアした。米国市場は主要2指数が同様に史上最高値を更新するなど、驚きの強さだ。では、「日経平均株価はどうなっているの?」となるだろう。残念ながら史上最高値まではまだ距離がある。日経平均株価はファーストリテイリング <9983> [東証P]や東京エレクトロン <8035> [東証P]など値がさ株の影響を受けやすく、それらの不安定な動きが響いている。しかし、その他は概ね堅調な値動きになっているので、間もなく史上最高値の突破に向かうだろう。 ●米国の振興要請で、風雲急を告げる造船業界 こんな状況になってくると、多くの銘柄が魅力的だが、今回は久しぶりに1銘柄だけにしたい。となると、かなり期待をもたれてしまいそうだが、目先一服はあっても再起力が強いとみて取り上げたい。 それが、中国塗料 <4617> [東証P]だ。社名で明らかなように 塗料会社だ。もちろん、中国企業ではなく、広島県大竹市に拠点を置く企業だ。塗料会社としては、日本ペイントホールディングス <4612> [東証P]、関西ペイント <4613> [東証P]に次ぐ国内3位の企業になる。そのどこが魅力的なのか。実はこの会社は船舶用塗料に強く、この分野では国内首位、世界でもなんと2位なのだ(1位はノルウェーのJotun 社)。つまり、日本にある「知られざる世界企業」であり、これだけでも十分魅力的ではあるのだが、投資対象としてはこれだけでは株価は上がらないだろう。では、他になにがあるのか。トランプ米政権が日本に米国の造船業への投資を強力に求めている。これがある。韓国にも声をかけているようで、韓国はすでに国が主導する形で米国への投資の準備に入っている。 それにしても造船の塗料がそんなに大事なのか。こう思うのではないだろうか。実は、非常に大事なのだ。船は水面下にフジツボが密着すると、海水から抵抗を受けて速度が落ちてしまうのだ。速度が落ちれば当然、目的港までの航行に時間がかかるし、エンジンの消耗も激しくなる。エネルギーコストもかさんでしまう。それを防ぐには、船の大敵であるフジツボの付着を防ぐ必要がある。しかも、環境を害することなし、にだ。こんな切実なニーズを満たすのに不可欠なのが、中国塗料の海の環境にやさしい塗料だ。 今後、日本の造船各社がトランプ大統領の要請に応じて米国で造船事業を展開する場合(そうするのはほぼ確定的だろう)、中国塗料の製品が使われると見るのが自然だ。株価はすでに高値圏となっているため、目先一服はあるだろう。それでも造船業界の米国進出を考えると、株価の先高確率は高いとみる。 2025年8月1日 記 株探ニュース