明日の株式相場に向けて=日銀利上げラッシュ狂騒曲は聞こえるか
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きょう(8日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比1130円安の6万5269円と大幅反落。前日の米国株市場がレイバーデーの祝日で休場となったことで、手掛かり材料難というフレーズが枕詞のように使われるが、実際のところ今はそういう感じでもない。米株価指数先物の値動きや、近年は韓国KOSPI、台湾加権指数の値動きなどが同時進行で目に入ってくる。これらが東京市場の地合い、特に日経平均を動かすカタリストとなっており、長期金利や外国為替市場の動向も加えれば材料不足というのはあたらない。 足もとで急激にドル安・円高方向への揺り戻しが入っている。目先1ドル=152円台まで突っ込む場面もみられた。もちろん対ユーロや豪ドルに対しても同様で、これまでのテコでも動かなかった円売りトレンドの巻き戻しが一気に進んでいる。まさしくショート筋が一斉に手仕舞う動きが怒涛の円高を演出した。対ドルで今月1日、2日の時点では1ドル=160円台で取引されていたことを考えると、そこから1週間程度で約7円も円高に振れるというのには驚かされる。 一方、最近の東京株式市場(日経平均)は為替市場とテクニカル的にあまりリンクがなされていなかったことから、劇的な円高反転にも思ったほどネガティブには作用しないのではないかという指摘もあった。ところが、きょうは後場中盤を境に売り仕掛けが入り、日経平均株価はそこから釣瓶(つるべ)落としの下げに見舞われた。サウジアラビア当局が複数のエネルギー施設で火災の発生を公表した、という報道が引き金になったようだが、これが尾を引く話なのかどうかは今のところ不明。実際のところは、原油先物価格の突発的な上昇に連動して売りプログラムが発動したというのが正しい解釈かもしれない。なお、円高は日本にとってインフレ圧力の低減につながるが、輸出セクターには収益面で円高デメリットが生じるのはいうまでもなく、その規模感は円高メリットで潤う企業と比べて桁違いに大きい。タイムラグを置いて、企業のファンダメンタルズ面からのアプローチで売り方のネタにされる可能性は十分にあり、その点は注意が必要となる。 ともあれ、高市早苗政権にとってはインフレ圧力の解除が最重要であるため、その意味で円安の呪縛から逃れることは必須のテーマといえた。植田和男日銀総裁や片山さつき財務相とベッセント米財務長官の会談で、(片山氏は否定したが)ベッセント氏が日本に事実上の利上げ要請をしたという見方がもっぱらである。自国を棚に上げて、日本のしかも中銀に直に圧力をかけてくるというもの驚かされるが、それだけトランプ米政権が米金利の上昇に神経を尖らせ余裕がなくなっているという現状を示唆している。ロジックとしては、日本が今後“小手先の”円買い介入を行う際に、その資金を米国債の売却で賄おうとしているということ、これがトランプ政権にとって極めて不都合な現実ということになる。いずれにせよ、内政干渉のようでもこの為替問題に関しては日米の利害が一致している。 そして介入のような小手先ではなく土壌の改良、つまり日銀がいよいよ利上げラッシュに動き出すというコンセンサスがマーケットに形成されつつある。来週17~18日の日銀金融政策決定会合で0.25%の利上げはほぼ確定的。さすがにいきなり0.5%の利上げは植田総裁のキャラクターから除外してよいと思われるが、タカ派姿勢を打ち出すことで、今回を含めて年内あと2回利上げを行い、政策金利を1.5%まで引き上げるシナリオをマーケットに織り込ませるだろう。片や米国では、ウォーシュFRB議長に水面下でかなりのプレッシャーがかかっていることは想像に難くない。ジャクソンホール会議の講演でタカ派的な舵取りを巧みに印象づけたウォーシュ氏だったが、トランプ砲に早くも腰が引けている印象を残すのは、これからの政策運営にも支障をきたす。しかし現象面で足もとの為替動向を見る限り、フェドウォッチはともかく、結局FRBは「年内利上げなし」という選択肢を採る可能性が高まってきていることを暗示している。前日の当欄で9月利上げは濃厚としたが、どうやらその路線からは外れた感触もある。 カギを握るのは今週末11日に開示される8月の米消費者物価指数(CPI)で、大義名分を得るためにここでインフレ沈静化を示す数字が必要となる。事前予想では、コアCPIが前年同月比ベースで7月が2.5%増だったのに続き、8月は2.4%増と鈍化傾向をたどるとの見方で、この場合は利上げ見送りの公算が大きくなる。加えて、今月末(30日)に開示される過去のPCEデフレーターが下方改定されれば、金利を据え置いた正当性を裏付ける(過去に遡って証明される)材料ともなるわけだ。もっとも今週末に8月のコアCPIの伸び率が予想に反し加速するような状況であった場合は、これはどう転んでも政策金利引き上げは回避できない。ウォーシュ氏にとって、トランプ米政権との軋轢を避けるうえで、今は8月のコアCPIが鈍化していることを願う時間帯にあるかもしれない。 あすのスケジュールでは、8月のマネーストックが朝方取引開始前に日銀から開示されるほか、前場取引時間中に6カ月物国庫短期証券の入札が行われる。また、午後3時以降に8月の工作機械受注額が発表される。個別にANYCOLOR<5032.T>の5~7月期決算発表、アサヒグループホールディングス<2502.T>の臨時株主総会が行われる。海外では8月の中国消費者物価指数(CPI)と中国卸売物価指数(PPI)に耳目が集まる。これ以外ではポーランド中銀が政策金利を決定、米国では全米抵当貸付銀行協会(MBA)住宅ローン申請指数が発表されるほか、10年物国債の入札が予定されている。(銀) 出所:MINKABU PRESS