明日の株式相場に向けて=金利高の逆風を凌げるか、天下分け目のエヌビディア決算
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きょう(20日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比746円安の5万9804円と大幅安で5日続落。フシ目の6万円大台を割り込み、同時に25日移動平均線も下回った。前日までの4営業日で2700円あまり水準を切り下げていたが、きょうはこれに追い討ちをかけるように一時1200円超の下落を示し、いよいよ波乱含みの様相を呈した。この急落モードのスイッチが入る直前の今月13日に、日経平均は6万3272円の史上最高値をつけていた。更に踏み込んで言えば、翌14日のザラ場にそこから500円強水準を切り上げ6万3799円まで駆け上がったのだが、同日は結局600円あまり下落し安値引けとなった。まさに“好事魔多し”というべきで、ここから相場のベクトルが見事に向きを変えてしまった。背景にあるのは世界的な金利上昇がモンスター化の気配を漂わせていることだ。不透明な外部環境すべてを要約する長期金利がついに牙を剥いたともいえる。 トランプ米大統領がフォーチュン誌のインタビューで、ウォーシュ次期FRB議長に対して「早期の利下げを求めずウォーシュ氏の裁量に委ねる」という考えを示したことが伝わっている。タカ派のDNAを宿すウォーシュ氏に対するこのコメントは、FRBが一転して利上げに動くという思惑を増幅させた。このトランプ氏の現実路線へのシフトチェンジは中東有事によるインフレ圧力を認めたことにもなり、世界的な債券売りを誘発するに十分なインパクトがある。そして、このタイミングで売りの仕掛けが入るとすればそれは紛れもなく脅威となる。 前日はAI・半導体関連の主力銘柄が一斉に売られ、日経平均を押し下げたが、個別株をみるとプライム市場全体の7割以上を値上がり銘柄で占めるなど、実質的には上げ相場でTOPIXもプラス圏で引けた。これをみて、これまで出遅れていたバリュー株への資金シフト、いわゆるセクターローテーションが反映されたと前向きな見解を示す市場関係者も少なからずいた。日々の全体出来高から過剰流動性が担保されているという安心感があり、これが割高なAI・半導体関連が売られてもリターンリバーサルの動きにつながるというシナリオの根拠ともなっている。しかし、きょうは内需系の好業績銘柄や割安株にも売りが波及し、十把一絡げ(ひとからげ)に叩かれる格好となっている。大引け時点で値下がり銘柄数はプライム市場全体の82%に達した。 そのなか、フジクラ<5803.T>の崩れ足は尋常ではなく、既に追い証も発生したもようだが、これがAIデータセンター周辺銘柄すべてに共通しているわけではない。例えば同業で光ファイバー関連のツートップであった古河電気工業<5801.T>は下げても25日移動平均線がサポートラインとなっており、くっきりと明暗を分けている。今期の業績予想はフジクラより明らかに優位だが、ここまで激しく株価の値動きに差が出るのは、株式需給に支配された部分が多い。 AIサーバー用SSD(記憶装置)向けで爆需を飲み込んでいるキオクシアホールディングス<285A.T>は5日移動平均線を絡めた上値追いトレンドを維持している。これは驚異的な業績の伸びが投資資金誘導のドライバーとなっているのは間違いないが、実は需給面で順回転しているという要素が大きい。4~6月期の業績変化を織り込めば、その次に来る四半期は更にハードルが高まるため、いったん流れが止まった時は注意が必要である。PERなどファンダメンタルズからのアプローチは車輪止めとはなりにくい。 そして日本時間の21日早朝に開示されるエヌビディア<NVDA>の決算に世界中の投機マネーの視線が注がれることになる。データセンター部門の伸び率と、5~7月期のガイダンス、最先端AIチップ「ブラックウェル」の出荷モメンタムなどが焦点となるが、いずれもハードルは高い。ちなみに同社のトップラインに関してコンセンサスは2~4月期が80%前後の伸び、5~7月期は86%というが、グロスマージン(粗利益率)がどうなるかも重要である。まさにこの金利高の逆風が吹く難しいタイミングで、張り巡らされたレーザービームに触れることなく前に進めるのかどうか、あすのエヌビディアの時間外取引の株価動向と、それを受けた東京市場でキオクシアを筆頭とするAI・半導体関連主力株の動向が、日経平均のベクトルの向きを決めることとなる。 あすのスケジュールでは、週間の対外・対内証券売買契約、4月の貿易統計、3月の機械受注がいずれも朝方取引開始前に開示される。また、午前中に日銀の小枝審議委員が福岡県金融経済懇談会で挨拶を行い、午後に記者会見が予定されている。後場取引時間中には4月の食品スーパー売上高、4月の首都圏マンション販売が発表されるほか、日銀が実質輸出入の動向を公表する。海外では5月のユーロ圏購買担当者景気指数(PMI)、5月の英PMI、独PMI、仏PMI(いずれも速報値)が発表されるほか、米国でも5月のPMI(S&Pグローバル調査・速報値)が注目される。このほか、4月の米住宅着工件数、週間の米新規失業保険申請件数、5月のフィラデルフィア連銀製造業景況指数が開示される。なお、個別にウォルマート<WMT>の2~4月決算発表が予定されている。(銀) 出所:MINKABU PRESS