【杉村富生の短期相場観測】 ─AIに続くのは量子コンピューター!

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コラム

「AIに続くのは量子コンピューター!」

●アメリカは利下げ、量的金融緩和を断行!

 マーケットにはありとあらゆる情報があふれている。マトハズレというか、フェイク(ニセ)ニュースも多い。投資家は目先の動きに振り回されがちだ。それに、最近の株式市場は乱高下を繰り返している。急騰→強気、急落→弱気のパターンでは疲れるし、利を得るのは難しい。やはり、肝要なのはトレンドの確認だろう。

 トランプ米政権の外交・通商政策に一喜一憂しているのはアメリカ市場も同じだ。連邦政府機関の一部閉鎖は続いている。ウォール街は米中貿易戦争について、「TACO(Trump Always Chickens Out→トランプ大統領はいつも腰砕けになる)」と称される朝令暮改(早い段階の和解)に期待しているようだが、今回はどうか。

 ただ、FRB(米連邦準備制度理事会)は10月28~29日のFOMC(連邦公開市場委員会)において、0.25%(25ベーシスポイント)の利下げに進むとともに、量的金融引き締め(QT)政策を止め、量的金融緩和(QE)政策に方針を転換するだろう。現在、4%前後のFF(フェデラルファンド)レートは下げ余地が大きい、と思う。

 パウエルFRB議長はデータ主義を貫いてきた。しかし、データ重視と言ったって、政府機関の閉鎖で多くの統計が発表されていない。データを収集し、解析する職員がいない。自宅待機だ。このため、有力理事を中心にフォワード・ルッキング(過去のデータに固執せず、予測に基づいた金融政策)の方向に舵を切るべきではないか、との声が高まっている。

 日本市場は21日に新首相が選出され、新しい時代がスタートする。基本テーマは日本再生だ。この35年間に国民負担利率(財政赤字を含む)が38.5%→48.8%(2025年度見通し)と、10%も上昇した。逆に、一般政府債務残高のGDP(国内総生産)比率は6年間で258.4%→234.9%(IMF推計)と、23ポイント以上も低下している。国は豊かになったが、国民は貧乏になった、ということ。

●アップル、エヌビディアのCEOが相次いで来日!

 まず、新政権に求められているのは減税・財政出動である。改めて述べるまでもない。政府の責務は国民の生命、財産、そして生活を守ることにある。残念な話だが、この1年、この3点がすべてないがしろにされてきた。目先のバラマキに走ったのだ。昨年の衆議院選、今年の都議会選、参議院選での与党の“3連敗”は当然の結果だろう。

 肝心なのは国民負担率の引き下げ(減税および社会保険料の軽減)と成長戦略の推進である。幸いなことに企業の稼ぐ力はとみに高まっている。実は、日本企業の潜在能力を評価しているのは、アメリカの巨大IT企業のトップであろう。サプライヤー・テクノロジー企業としての存在感である。

 9月下旬から10月初旬にかけて、アップルのティム・クックCEO(最高経営責任者)、オープンAIのサム・アルトマンCEO、エヌビディアのジェンスン・フアンCEOなどの大物が相次いで来日した。彼らは日立製作所 <6501> [東証P]、富士通 <6702> [東証P]、バンダイナムコホールディングス <7832> [東証P]などと接触した、という。

 エヌビディアと日立製作所は業務提携に進んだ。AIデータセンターおよび電力供給に関する協定である。彼らは日本企業の生産力、技術力を欲しがっている。「iPhone」は日本企業の協力がないと完成しない。アメリカ市場は超金融緩和が株価を支え、日本市場は企業の強さが支える。

 テーマ的には 量子コンピューターが面白い。この技術は開発段階といわれているが、金融機関の一部では実用化されているらしい。大手調査機関の予測によると、3年後には化学、ライフサイエンス、交通(自動運転)、金融分野などにおいて、本格的な実用化の時代が到来する、という。実は、これがAI(人工知能)の需要を加速度的に激増させる。

 すでに、アメリカ市場ではリゲッティ・コンピューティング、イオンQ、Dウェイブ・クアンタムなど、量子コンピューター関連株が人気を集めている。日本市場ではオキサイド <6521> [東証G]、セック <3741> [東証P]、フィックスターズ <3687> [東証P]などをピックアップできる。

 このほか、YKT <2693> [東証S]、シンデン・ハイテックス <3131> [東証S]、テラスカイ <3915> [東証P]、ブレインパッド <3655> [東証P]などがある。もちろん、日立製作所、富士通、NEC <6701> [東証P]、三菱電機 <6503> [東証P]を忘れてはいけない。NTT <9432> [東証P]もこの分野に注力中である。

 日本の成長戦略は技術力をメインにするべきだろう。新型太陽電池「ペロブスカイト」がそうだが、量子コンピューターはその柱になり得る。高市氏が首相に選出されれば、その新政権は技術立国を目指すだろう。巨大IT企業の経営陣の来日は提携先の確保のほか、そうした国策を先取りする狙いがある、と判断する。

2025年10月17日 記

株探ニュース

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