AI相場で株価変貌の前夜、「半導体材料」関連・大化けの系譜6銘柄 <株探トップ特集>

投稿:

コラム

―世界上位の実力株が目白押し、半導体材料セクターは投資妙味抜群のお宝株が満載―

 世界的な 生成AI市場の拡大を背景に米国を基点とするAI相場の大潮流が発生している。AIデータセンター の増設ラッシュが世界各地で相次ぐなか、株式市場でもこれをテーマに投資マネーの攻勢が一段と勢いを増している。データセンター内に設置されるAIサーバーが、米エヌビディアが製造するGPUを筆頭にAI半導体を鯨のように飲み込んでいく。東京市場でもエヌビディアを主要顧客とする半導体検査装置大手のアドバンテスト <6857> [東証P]をはじめ、今のAI全盛時代の礎となっている半導体に絡む企業群が、かつて経験したことがない商機の高まりに株価を躍動させている。

●生成AIによって爆増する最先端半導体のニーズ

 スマートフォンが半導体の需要先の代名詞となっていた時代は変貌を遂げつつある。生成AIの基盤となるデータセンターや、今後普及加速が予想される自動運転分野で使われる最先端半導体が主役となっていく。これらが牽引する形で、今から5年後の2030年までに半導体の市場規模は1兆ドル(約150兆円)を超えるという試算もある。

 また、生成AIは凄まじいスピードで進化を遂げているが、現状はその活躍のフィールドは2次元の世界が中心である。しかし、今後は3次元の世界で物理的な力を発揮する時代が迫っているようだ。いわゆるヒト型ロボット など次世代ロボティクス分野にAIの“頭脳”が融合する「フィジカルAI」の歴史のページがめくられる時代に突入した。10月8日、ソフトバンクグループ <9984> [東証P]はスイスの大手重電メーカーであるABBのロボット事業を、日本円にして総額約8000億円で買収することを発表した。

●フィジカルAIが半導体の新たな歴史を作り出す

 この時、孫正義会長兼社長は次のフロンティアはフィジカルAIであるとし、「ASI(人工超知能)とロボティクスを融合させることで人類の未来を切り開く画期的な進化を実現していく」と言い切った。ソフトバンクGは英半導体設計大手アーム・ホールディングスを傘下に置くが、孫氏はASIの実現のために必須となる4つの項目として、半導体、ロボット、データセンター、電力を掲げており、この4分野へ経営資源を集中的に投下していく構えを示している。

 半導体 は産業のコメとも言われるが、それはこれから本番を迎えるAI全盛時代においても重要なリソースとなることは間違いのないところだ。ここで、注目しておきたいのは“完成品”ばかりがイメージされやすい半導体ではなく、その半導体の原料や半導体を作り出す過程で必要となる材料であり、これらに関わる企業も当然ながら収益成長の切符を手にしていることになる。半導体メーカーという観点で日本企業は米国、韓国、台湾の大手に全く及ばないポジションに位置しているが、半導体製造装置や半導体材料という範疇では世界においても上位を占めていることに着目したい。個別企業でも世界トップシェアを誇る 半導体材料メーカーは少なくないのである。

●半導体材料メーカーからニュースター輩出へ

 AI関連相場は、現在進行形で行われている巨額の投資が商業的な見地でその後回収できないというような見方もあり、折に触れバブル的な要素が指摘される。しかし、その答えが見えてくるのはおそらく10年以上は先の話となるであろう。AI市場への先行投資というのはかなりの部分を半導体が占めることになる。そのなか、足もとでAI半導体に用いる先端フォトレジストや製造装置へのニーズが極めて旺盛な状態が続いている。AIサーバーなどに搭載される半導体は最先端スペックであるがゆえ、その単価もレガシー半導体とは比べ物にならないため、半導体市場の規模拡大に大きく貢献する構図となっている。

 既に米国株市場ではエヌビディアをフロントランナーにAI関連の象徴として時価総額を膨張させる半導体企業が相次いでいる状況だ。東京市場でもこの流れに乗る新たなニュースターが出番を待っている段階にあるといってよいだろう。AIの加速度的な進化は、AI半導体周辺に位置する企業にとっても強力な成長ドライバーとなり得る。そして、半導体材料で高シェアを誇る日本企業は、大化けを果たした米半導体関連企業ともビジネス上の接点を持つケースは多い。今回のトップ特集では、日本が強みとする半導体材料分野で活躍が見込まれる企業群の中から、株価的にも評価機運が急速に高まりそうな6銘柄をエントリーした。

●ダイナミズム溢れる半導体材料株選りすぐり6選

◎フジミインコーポレーテッド <5384> [東証P]

 フジミインコは半導体研磨剤であるCMPの世界最大手。売上高の8割近くを海外で上げており、独自技術を駆使した高い商品競争力でリーディングカンパニーの座を不動のものとしている。AIデータセンター関連需要が牽引し先端ロジック半導体向けが好調。また、AIサーバーは高速・大容量のストレージが必要で記憶装置であるSSDの需要が増勢を強めていることから、出遅れていたNAND型メモリー分野についても風向きが変わっている。業績は25年3月期に営業43%増益と急回復を果たし、続く26年3月期も前期比3%増の121億円を見込むが、会社側予想から上振れる公算が大きい。更に27年3月期は4期ぶりの過去最高利益更新も視野に入りそうだ。配当利回りも3%前後あり、配当性向55%目標に基づく今後の増配余地を考慮してインカムゲイン面でも魅力がある。

 株価は10月9日に2454円の年初来高値を更新後は調整を入れているが、中期的に下値切り上げ波動が続く可能性が高い。昨年3月につけた上場来高値3940円から時価は4割もディスカウントされた水準であり、上値追い余力は十分とみられる。当面は2000円台後半から3000円大台回復を目指す動きが想定される。

◎レゾナック・ホールディングス <4004> [東証P]

 レゾナックは総合化学メーカー大手だが、半導体材料が収益主力の一角を担っている。前工程では高純度ガスやCMPスラリー、後工程材料では封止フィルムやダイシングテープなど多岐にわたる製品を製造している。直近では北川進・京都大学特別教授のノーベル化学賞に関連し「金属有機構造体(MOF)」の共同研究を進めてきた同社にもスポットが当たった。MOFは半導体製造分野における分離や貯蔵でも活用されている。大手顧客である韓国サムスン電子が米オープンAIとメモリー分野で提携したことにより、同社の生成AI分野でのビジネスチャンスも広がるとの思惑が株価の刺激材料となっている。業績は25年12月期は増収見込みながら営業利益は490億円と前期比4割強の減益を見込む。しかし、26年12月期については2ケタ成長で切り返す公算が大きい。

 株価は4月以降下値切り上げ波動を形成してきたが、9月に入ってから大口資金の流入で上げ足を一気に加速した。10月9日に6174円の年初来高値を形成した後はやや戻り売りに押される展開となっているが、売り物をこなし早晩切り返しが予想される。6000円台で漸次水準を切り上げる動きが期待できる。

◎東京応化工業 <4186> [東証P]

 東応化はフォトレジストで世界のトップメーカーとして名を馳せる。フォトレジストは半導体製造工程で回路の形状を基板に転写する際に使われる材料であり、今後の成長領域として超微細な回路パターン形成を可能とするEUV(極端紫外線)露光装置向けの需要が注目されている。同社は微細化に必要なArF用やKrF用のほか、EUV用までワンストップでレジストを供給できる点で優位性を持っている。AI半導体の爆発的な需要を背景にEUV用が会社側の予想を上回る高水準の伸びを示しており、25年12月期の営業利益は期初予想を増額、前期比21%増の400億円と連続過去最高更新を見込む。更に一段と上振れの可能性を指摘する声が強い。26年12月期も2ケタ成長が濃厚だ。

 4月以降は25日移動平均線をサポートラインとする下値切り上げ波動を継続中。10月9日に5103円の上場来高値を形成した後は上昇一服となり、時価は5000円台手前でのもみ合いとなっているが、業績面に死角はなく目先25日線絡みでの踊り場形成は買いに分がある。信用買い残は低水準が維持されており、株式需給面からも上値の重さが感じられない。5100円台から上は戻り売り圧力から解放された青空圏が広がる。

◎SUMCO <3436> [東証P]

 SUMCOは半導体シリコンウエハーの専業大手であり、その商品シェアは信越化学工業 <4063> [東証P]と並び世界で双璧となっている。特に300ミリウエハーなど大口径ウエハーを得意としている。そうしたなか、生成AI市場の拡大を背景としたデータセンター向けなどで大口径ウエハーの受注拡大が中期的に見込まれる状況となってきた。25年12月期は営業損益が赤字となる可能性が高いものの、これは株価には織り込み済み。26年12月期については第1四半期で底が入り、通期ベースでもこれまでの見通しから一転して収益回復トレンドに入る公算が大きいとの見方が支配的だ。株式需給面では貸株市場経由の空売りが溜まっていることから、ショートカバーによる株価浮揚力が働きやすい。

 7月から9月にかけて約2カ月間1200円を軸とするもみ合いを続けてきたが、9月中旬を境に一気に上放れた。10月6日に1768円の年初来高値をつけた後はひと押し入れているが、時価近辺は大勢3段上げに向けた踊り場とみておきたい。滞留出来高の多い1900~2100円のゾーンを抜ければ値運びも軽くなる。昨年7月までのボックス圏上限ラインである2600円台が中期上値目標として意識される。

◎大阪有機化学工業 <4187> [東証P]

 大有機は独立系化学メーカーで、特殊アクリル酸エステルのリーディングカンパニーとして存在感を示す。化成品、電子材料、機能化学品の3部門を展開しており、主力の電子材料部門では半導体レジスト用原料としてハイクオリティーなアクリルモノマーの開発を手掛けている。そのなか、半導体製造プロセスで使用される感光性材料でArFエキシマレーザーに対応したレジスト用原料が、高水準の需要を捉え業績に貢献している。営業3割増益を達成した24年11月期に続き25年11月期も前期比9%増の50億円と増益基調を維持する見通し。来期以降は最先端のEUVレジスト原料の需要回復によって収益への浮揚効果が期待できそうだ。更に株主還元にも前向きに取り組んでいる。15年11月期から毎期配当を増やし、今期までで11期連続の増配となる見込みだ。

 株価はマドを開けて買われた7月11日以降も一貫した下値切り上げ波動を継続、年初来高値圏での頑強展開を続けていたが足もとで押し目買い場を提供。昨年7月中旬に4200円台まで買われた経緯があり、戻り相場としてはまだ5合目といえ上値余地は大きいと判断される。信用買い残も枯れた状態にあり、当面は3000円台後半を指向する動きに。

◎関東電化工業 <4047> [東証P]

 関電化はフッ素系特殊ガスの大手で半導体製造用エッチング・クリーニングガスなどを中心に需要を取り込んでいる。特に微細化に対応した環境性能も高いエッチングガスである「KSG―14」などの新製品が今後収益に貢献することが期待される。KSG―14についてはデータセンター向け記憶装置であるSSDに使われるNAND型メモリーの需要が急速に拡大していることで商機が高まっている。なお、キオクシアホールディングス <285A> [東証P]の3D―NAND型フラッシュメモリーのエッチングプロセスで採用されている。26年3月期営業利益は前期比6%減の40億円を見込むが、27年3月期は大幅増益転換の可能性が濃厚だ。アクティビストのエフィッシモ キャピタル マネージメントが同社の大株主となっており、経営に関与する姿勢を示していることも株価を刺激する。

 株価は8月19日にマド開け大陽線で上放れ、その後調整を挟みながらも株価水準をじりじりと切り上げている。時価は4ケタ大台近辺でのもみ合いだが、今後はAIデータセンター関連の特需が期待されるなどテーマ性も内包するだけに、ここは強気に対処して報われよう。昨年12月初旬の高値水準である1130円払拭から一段の高みを目指す。

株探ニュース

オンラインで簡単。
まずは無料で口座開設

松井証券ならオンラインで申し込みが完結します。
署名・捺印・書類の郵送は不要です。