千年の都が世界をリード、良質な「京都関連銘柄」に海外勢も熱視線 <株探トップ特集>

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コラム

―高度人材の輩出地で優良企業が集積、銘柄選別の難しい相場環境で有望な投資対象に―

 株式市場は堅調な展開が続いている。日経平均ベースの株価指標も修正が進み、予想PER(株価収益率)は18倍、実績PBR(株価純資産倍率)は1.6倍となり、過去との比較でも国際的な比較でも特に割安とも言えない状況になっている。個別銘柄・セクターを見回してみても、出遅れ組の水準訂正が進みつつあり、銘柄選択には苦慮する状況だ。このような市場環境だからこそ「質」に注目したい。なかでも、いわゆる「京都関連銘柄」は利益率の高さや財務基盤の健全性といった特徴があるとされている。株式相場が難しい局面には、有望な投資対象となるに違いない。

●国際的なブランド力

 京都発の企業が注目される理由には諸説ある。千年の都の歴史、伝統工芸からの派生、大学との距離、技術者などの人材、ネットワーク・集積効果など、それぞれ一理あると言えるだろう。例えば清水焼で蓄積した要素技術は、積層セラミックコンデンサー(MLCC)の開発に不可欠なものとなった。美に関連する伝統工芸も数多く存在し、明治期に発展した印刷技術はやがて半導体産業を支えることとなる。

 京都は高度人材の集積地としても名高い。2025年のノーベル賞は、生理学・医学賞で「制御性T細胞」を発見した大阪大学特任教授の坂口志文氏、化学賞で「多孔性金属錯体」を開発した京都大学特別教授の北川進氏が受賞することとなった。坂口氏は京大医学部、北川氏は京大工学部の出身である。中間子理論の研究で戦後に日本で初めてノーベル賞を受賞した湯川秀樹博士は帝大時代の京大理学部出身だ。京都が長年にわたり、日本の科学技術の発展に多大な貢献をした人材を創出し続けてきたのは紛れもない事実となっている。

 歴史と伝統が息づく京都ではあるが、グローバルに開かれた地域でもある。外資系企業では例年、春と秋に海外から経営幹部が来日することが多いという。桜と紅葉のシーズンにあわせて日本でのビジネス状況の把握などを目的に来日し、その際に上洛する海外の経営プロフェッショナル人材は一定数存在する。今年の紅葉シーズンもビジネス面で人的往来が活発化すると推測され、海外投資家と京都企業の接触の機会も増えることが見込まれる。都市としての国際的なブランド力の高さゆえ、京都企業は海外投資家の関心を集める素地を備えており、潜在的な投資需要が常に存在した状態にあると言えるだろう。

●グロース株として注目継続の任天堂と村田製

 京都銘柄と一括りにいっても、グロース株もあればバリュー株も存在する。主要どころでグロース株としてまず注目されるのが、任天堂 <7974> [東証P]だ。祖業は花札で、トランプから電子玩具、そしてゲーム機へと事業を拡大してきた。独自開発のゲーム専用機にこだわり、スマートフォンなど他デバイス向けのコンテンツ配信は限定的。IP(知的財産権)管理に厳格なことでも知られ、ハローキティなどと比べると限定的な露出にとどめている。逆に考えると、他のプラットフォームでの展開やメディアミックス、コラボレーションの余地は大きい。足もとの業績は好調で、今年6月に発売した新機種「Nintendo Switch 2」が人気を博している。発売初年度の予想販売台数は1500万台だが、上振れの可能性が高く、年末商戦の動向が注目される。ハードの普及に伴って好採算のソフト販売本数が増加するため、今後数年間は高い利益成長が見込めるだろう。

 村田製作所 <6981> [東証P]は、MLCCで世界シェア首位の電子部品大手。MLCCはスマートフォンや自動車、家電、医療機器、産業機器などに搭載され、市場拡大が見込まれている。フィルターやセンサー、二次電池にも事業展開し、直近では自動車関連とAIサーバー向けが拡大している。26年3月期の業績予想は減収減益だが、海外売上高比率が9割を超え、為替見通しを1ドル=140円(前期実績は152円57銭)に設定していることが主因。受注・生産・販売数量は堅調だ。今後の進捗状況によっては上方修正の可能性もありそうだ。中期経営計画では3年後の売上高2兆円以上、営業利益率18%以上との成長目標を掲げ、中期的にDOE(株主資本配当率)について5%を目安に引き上げる方針。成長市場のトップ企業として、グロース株としての評価が再確認されると期待できる。

●ロームと京セラのPBRは上昇するか

 半導体関連にもかかわらずバリュー株の範疇に入るのが、ローム <6963> [東証P]である。抵抗器を発祥に、半導体素子やLSI(大規模集積回路)へと事業展開し、近年はSiC(炭化ケイ素)パワー半導体に注力している。SiCの特性として、高耐圧・低損失による電力効率向上があり、高耐熱性とも相まって電気自動車(EV)モーター制御システムやパワーコンディショナーなどでの需要拡大が見込まれている。25年3月期は12年ぶりの営業赤字に転落。事業再構築や投資計画見直しを進めることとなったものの、足もとでは最悪期を脱して過剰在庫は解消しつつあり、第1四半期(4~6月)は営業黒字を確保した。先行投資的な設備増強も一巡し、デンソー <6902> [東証P]や独インフィニオンとの協業・提携など自前主義からの脱却もあり、今後は収益性回復・向上が見込まれる。第2四半期決算発表に合わせて、新しい中期経営計画も発表予定で、詳細な成長戦略が明らかになれば、PBR1倍台の定着が視野に入るだろう。

 京セラ <6971> [東証P]は、ファインセラミックスから電子部品に展開。創業者・稲盛和夫氏が提唱した「アメーバ経営」によって事業領域を大きく広げてきた。資産・収益の規模は拡大したものの利益面では停滞が続き、PBRは恒常的に1倍割れの状態。こうしたなかで資本コストや株価を意識した経営の要請や機関投資家からの圧力によって、政策保有株式の縮減に乗り出したことはポジティブだ。加えて、不採算事業の売却・撤退と同時に、得意分野に経営資源を集中、事業ポートフォリオ再編を進めることで、ROE(自己資本利益率)7%以上を目指している。株式売却益を原資にした自己株取得は一定の株価下支え要因となるだろう。事業面・財務面での改革の成果が目に見える形となれば、評価引き上げの可能性が高まっていく。

●京都FGの保有株式評価益は9000億円超

 注目すべきは製造業にとどまらない。京都フィナンシャルグループ <5844> [東証P]は地方銀行上位の京都銀行を中核とする金融持ち株会社だ。京都府内が主力ながら、周辺府県や名古屋、東京にも拠点を置いている。他の地方銀行と同様、金利上昇は貸出金利息の増加となって利益拡大に貢献するのだが、過去の地元企業への出資によって大きな株式評価益を抱えているのもポイントだ。25年3月期末の銀行単体の保有株式における評価益は9237億円。ちなみに、同社の株式時価総額は9000億円強である。

 京都FGの有価証券報告書に記載されている特定投資株式から抜き出すと、任天堂など上記4銘柄以外に、ニデック <6594> [東証P]、オムロン <6645> [東証P]、SCREENホールディングス <7735> [東証P]、島津製作所 <7701> [東証P]、ワコールホールディングス <3591> [東証P]、日本新薬 <4516> [東証P]、堀場製作所 <6856> [東証P]、宝ホールディングス <2531> [東証P]、ニチコン <6996> [東証P]、ジーエス・ユアサ コーポレーション <6674> [東証P]などがあり、さながら京都銘柄ポートフォリオの様相を呈している。

●中小型セクターの有望株もマーク

 これら主要企業以外にもキラリと光る企業が存在する。日東精工 <5957> [東証P]は、工業用ファスナー(ねじ)の大手で、ねじ締め機などの産業機械、検査・計測装置などの制御機器にも事業展開している。主力のファスナーでは、用途に応じた特殊品に特化し、異種金属接合など多様な素材・機能に対応している。足もとでは、雑貨に含まれるゲーム機向けが急拡大し、「隠れた任天堂関連株」の面も。販売拠点はアジアから北米、欧州に広がっており、製造拠点は国内が主力ながらアジアに加え、M&Aによってインドにも進出した。ニッチな製品ではあるが、販売数量増加と単価引き上げの動きは継続しており、着実に売上高・利益成長が続く見通し。PBR、PER、配当利回りなどの株価指標からみて割安感がある。

 不二電機工業 <6654> [東証S]は、電力・交通などの社会インフラ向けを中心とした電気制御機器メーカー。顧客企業の設備投資動向によって波はあるものの、更新需要に加えて省力化やデジタル化のニーズを取り込んでおり、業績は安定的に推移している。最近の実績を見ると、売上高営業利益率は7~10%台と相対的に高いものの、ROEは2~3%にとどまる。理由は明快で、自己資本比率が90%を超えているためだ。過剰資本を抱えているという見方もでき、株主還元余力は大きい。26年1月期は減収減益の見通しだが、電力会社や鉄道会社の設備投資が端境期であることが主因。電力では送電・変電設備への投資拡大、鉄道ではワンマン化対応など省人化設備投資が見込まれ、中期的な見通しは悪くない。PBRは0.5倍台と低く、株主優待によるクッション効果(下値リスクの軽減効果)も期待できる。将来的に財務・資本政策が変更されれば、株価の居所が大きく変わるに違いない。

 このほか、エスケーエレクトロニクス <6677> [東証S]は、スクリンとともに、明治元年創業の印刷会社、写真化学(京都市中京区)を源流に持つ企業だ。直近ではスマートフォン向け有機ELパネル用フォトマスクの需要が堅調で、25年9月期の営業利益は3割増を計画。PBRは1倍を下回る一方、配当利回りは4.7%近辺に上る。TOWA <6315> [東証P]は半導体後工程向けの樹脂封止装置で高いシェアを誇るグローバルニッチトップ企業。AI半導体やHBM(広帯域メモリー)関連の需要が事業の追い風となっている。第一工業製薬 <4461> [東証P]は生成AIの普及で拡大が期待されるハイエンドサーバー向けに光硬化樹脂材料を展開。今期は最高益を計画する。

株探ニュース

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