生活防衛に大貢献、市場規模11兆円超の「惣菜関連株」は妙味抜群 <株探トップ特集>

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コラム

―タイパ重視で「食の簡便性」に関心高まる、超高齢化社会到来も追い風―

 値上げラッシュが相次いでいる。帝国データバンク(東京都港区)が9月30日に発表した食品主要195社を対象とした価格改定動向調査によると、10月の飲食料品の値上げは3024品目に達し、前年同月の2924品目を上回り、10カ月連続で前年を上回るとした。2025年通年では、12月までの公表分で累計2万381品目となり、2年ぶりに2万品目を突破することになる。

 長引く物価高に家計が苦しめられるなか、生活防衛の一環として「惣菜」の人気が高まっている。惣菜も価格は上昇しているものの、比較的抑えられていることに加えて、自宅で調理する際の光熱費の節約につながることも人気の要因のようだ。販売する食品スーパーマーケットなども旺盛な需要を取り込もうと力を入れており、惣菜ビジネスは熱気を帯びている。

●好調続くスーパーの惣菜部門

 スーパーの惣菜販売が好調だ。全国スーパーマーケット協会の「スーパーマーケット白書」によると、新型コロナウイルスが猛威を振るった20年は、外出制限もあって自宅調理が増えた影響から、惣菜部門(全店)の対前年比は1.2%増(総売上高6.3%増)にとどまったが、21年は5.3%増(同0.4%減)、22年は4.4%増(同0.8%増)、23年は5.8%増(同3.7%増)、24年は4.7%増(同3.9%増)と各年とも総売上高を上回る伸び率となった。

 以前は、惣菜といえば女性の社会進出や単身・共働き世帯の増加などを背景に需要を伸ばしていたが、19年10月に消費税率が10%に引き上げられた際、軽減税率の対象となったことで更に利用が広がった。また、コロナ禍を経て、タイパ(タイムパフォーマンス)重視の生活様式の変化なども加わり、これに拍車をかけている。

 近年ではまた、「調理定年」(手作りを控えること)などの言葉にみられるように、自炊の代わりに弁当や惣菜を利用する「食の簡便性」を積極的に取り入れる動きも増えている。超高齢化社会を迎え、惣菜はその重要性を増しそうだ。

●惣菜市場規模は11兆円を突破

 こうした動きを受けて、足もとで惣菜市場は拡大している。

 日本惣菜協会がまとめた「2025年版惣菜白書」によると、24年の国内の惣菜市場規模は、対前年比2.8%増の11兆2882億円となり、初めて11兆円を上回り過去最高を更新した。同協会では、この要因として、実質的な販売数量の伸びというよりも、価格上昇・消費者物価指数の上昇に伴う「名目拡大」であるという見方もあるとしつつも、コロナ禍からの本格回復や社会構造の変化による惣菜・中食ニーズの高まりを反映したとみている。

 業態別では、惣菜専門店の伸びが最も大きく、食料品スーパー、 コンビニエンスストアと続いた。惣菜専門店の伸びが高いことは、生活防衛の意識が高いなかにあっても、品質や味に対するこだわりが感じられ、消費者の志向が見て取れる。企業もこうした消費者ニーズへの対応が迫られている。

●惣菜強化を進めるイオン

 これを受けて、総合スーパー最大手のイオン <8267> [東証P]グループは24年6月、新コンセプトの惣菜プロセスセンター(PC)「Craft Delica Funabashi(クラフトデリカ船橋)」を稼働させた。シェフ・クオリティーの惣菜を、商品の開発から販売までを一気通貫でデザインするSPA(製造小売)形式で開発・製造する。

 同PCでは温惣菜、寿司、チルド惣菜、弁当の半加工品や完成品、ソース、原料加工などをイオンリテールをはじめ、「まいばすけっと」など関東エリアにある合計約1500店舗に商品を供給する。同社グループでは28年までに中部、関西など3大都市圏にも同様のPCを新設する計画で、惣菜レベルの向上を目指している。

 イオンのように惣菜に力を入れるスーパーは多い。一度に大量に作る惣菜は他の商品部門に比べて利益率も高く、企業にとってもメリットは大きい。

●惣菜製造企業などに注目

 熱気を帯びる惣菜業界だが、関連銘柄は前出のイオンをはじめとする総合スーパーや、ユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス <3222> [東証S]、ライフコーポレーション <8194> [東証P]などの食品スーパー、セブン&アイ・ホールディングス <3382> [東証P]などのコンビニエンスストアが挙げられる。このほか、惣菜の製造・販売を専門に手掛ける企業にも注目したい。

 わらべや日洋ホールディングス <2918> [東証P]は、主にコンビニエンスストア向けに、弁当や惣菜、調理麺などを製造しており、25年2月期におけるセブン-イレブン・ジャパンへの売上高は全体の75%を占めている。26年2月期第1四半期連結決算は、営業利益22億4700万円(前年同期比1.3%増)となり、上期計画に対する進捗率が59%に及んだ。伊勢崎工場稼働に伴う初期コストの発生や製造コストの増加はあったものの、商品規格の見直し効果が上回った。通期では営業利益60億円(前期比32.9%増)を見込む。また、28年2月期に営業利益100億円を目指す中期経営計画を掲げている。

 シノブフーズ <2903> [東証S]は、コンビニエンスストア向けを中心におにぎりや弁当、サンドイッチ、惣菜などを製造しており、ファミリーマート向けが売上高全体の半分以上を占めている。26年3月期第1四半期連結決算は、経常利益6億9800万円(前年同期比7.6%増)で着地。3温度帯の製品ラインアップを幅広く提案する取り組みが奏功したほか、商品規格の見直しなどに継続して取り組んだことも寄与した。通期は経常利益23億8000万円(前期比0.5%増)を予想。また、30年3月期に経常利益35億円を目指している。

 ロック・フィールド <2910> [東証P]は、百貨店やショッピングセンター、駅ビルなどを中心に、「RF1」などのブランドで惣菜の製造・販売を行っている。26年4月期第1四半期連結決算は、全ブランドでの「ロック・フィールド感謝祭」の実施や、価格帯の幅を広げた商品展開により、前期第4四半期に落ち込んだ来店客数が徐々に回復。退店・休業した店舗の影響や減価償却費の増加、店舗人件費の上昇などで営業利益は1000万円(前年同期比96.8%減)と低調だったが、第2四半期以降の業績回復を見込む。

 柿安本店 <2294> [東証P]は、精肉事業が主力だが、百貨店やショッピングセンターに「KAKIYASU DINING」「Shang-hai DELI」などのブランドで惣菜事業も展開している。26年4月期第1四半期連結決算は、営業利益2億3900万円(前年同期比4.9%減)と減益だったが、通期では同15億円(前期比横ばい)を見込む。

 ケンコーマヨネーズ <2915> [東証P]は、マヨネーズ・ドレッシングや長期保存できるサラダ、卵加工品などのほか、百貨店を中心に「サラダカフェ」のブランドでサラダ専門店を展開。また、子会社がスーパーや量販店向けのフレッシュ惣菜の製造・販売を手掛けている。26年3月期第1四半期連結決算は、営業利益7億6200万円(前年同期比56.1%減)と大幅減益で着地。期間限定メニューの採用の減少や鶏卵相場や野菜価格の上昇が利益を圧迫した。通期は価格改定の進捗などで同48億円(前期比0.9%減)と微減益の見通しだ。

 また、惣菜そのものを製造している企業ではないが、業務用厨房機器の中西製作所 <5941> [東証S]にも注目したい。現在、群馬工場の増築と東日本物流倉庫(いずれも群馬県伊勢崎市)の新設に取り組んでおり、奈良工場(奈良県大和郡山市)の炊飯ライン生産を移管するほか、新規設備も導入。物流倉庫は三重物流センター(三重県伊賀市)の物流機能を統合する。中食や惣菜の需要が増加していることに対応し、大型炊飯ラインの生産能力増強を図っている。

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