【北浜流一郎のズバリ株先見!】 ─ 楽観・悲観に偏らず、出遅れ銘柄を仕込む!
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「楽観・悲観に偏らず、出遅れ銘柄を仕込む!」 ●日銀ETFショックは一過性か 「保有するETFを売却する」--19日の金融政策決定会合が終わった後に明らかになった日銀のこの方針に、驚かれた人も多かったのではないだろうか。もちろん、私もその一人だ。今回、利上げはない。こう見ていたので、金融政策決定会合についてはほとんど関心を失っていたというのが正直なところだ。 ところが……なんと保有するETF(上場投資信託)とREIT(不動産投資信託)を市場で売却するという。まずは売却規模が気になったので急ぎ調べてみると、ETFは簿価ベースで年間3300億円程度、これは時価ベースでは倍近い6200億円程度とのこと。それを知って「この程度なら市場への影響は限定的。さほど影響ないな」と判断したのだが、市場は異なる反応を示した。19日の日経平均株価は最高値を更新するなど堅調だったのだが、ETF売却の発表が伝わると急落してしまった。ただ、引けにかけて戻し、前日比265円安で済んだのはやや安堵できる動きであり、週明けも大きな売り材料になったりはしないだろう。 しかし、こんなことがあると、日経平均株価の水準が高いことは確かなので、暴落懸念が一気に噴出してしまうこともあり得る。実際、「現在の株高はバブルではないか……」と高値を懸念するご相談を受けることもある。株価が連日高値を更新すると、評価益に思わず頬が緩む一方で、「崩壊」の不安が頭をよぎることも十分理解できる。 では、現在の日本株の上昇は、過去のバブルと同質のものなのか、それとも異質なのか。まず、1980年代末から90年代初頭にかけてのバブル期との比較が参考になる。当時は不動産価格と株価が互いに引き上げ合い、実体経済の成長を超えて投機資金が市場に流入した。PER(株価収益率)は80倍近くに達する銘柄もあり、企業収益との乖離は極端だった。それに対し、現在の日本株は確かに高値圏ではあるものの、企業業績の裏付けが伴っている。ROE(自己資本利益利率)や営業利益率は改善基調にあり、世界的な半導体需要やインフラ投資、円安による利益拡大が株価を支えている。PERも東証プライム全体で見ると17倍前後にとどまり、過去のバブル時とは質的に異なる状況だ。 さらに、現在はバブル期に比べて海外投資家の存在感が大きく、資金の流入はグローバルマネーの配分の一環と見てよい。日本株の割安感に加えて、企業改革の進展、配当や自社株買いなどの株主還元強化も背景にある。しかも、これらは持続性を持つ要因であり、一過性のマネーゲームとは異なる。 とはいえ、もちろん過度な楽観は禁物で、株価が急ピッチで上がる局面では一時的な過熱も生じやすく、指数が短期で10%以上動くと調整が入ることも市場の常と心得ておきたい。そのため「今はバブルか否か」を決めることよりも、「実体経済と業績に裏付けられているのか」、「バリュエーションは合理的か」をチェックし続けることが重要となる。 ●中長期の視点で注目されるソニーG 結論として現在の相場は、過去のバブル崩壊の直前とは異なる健全性を備えているが、われわれ個人投資家としては、冷静に利益確定のタイミングを探りつつ、調整局面を利用する姿勢が望ましいので、今回は出遅れ気味の銘柄に注目したい。 そこで、まずは傘下にあるソニーフィナンシャルグループ <8729> [東証P]のスピンオフを発表したソニーグループ <6758> [東証P]になる。スピンオフは一部の事業部門や技術を切り離し、新たな会社として独立させる分離策。スピンアウトと違い、資本関係はキープされる仕組みになっているため、実質的には完全独立とはならないが、その方が双方とも経営はしやすいとされている。スピンオフに際し、ソニーGは権利付最終日の9月26日(金)時点でソニーG株式を保有している株主に対して、ソニーフィナンシャルの株をソニーG 株と同数付与するとしている。ソニーフィナンシャルは9月29日に東証プライム市場に新規上場する。そこからどんな値動きになるかだが、下げよりは上昇する可能性が高いと見る。 ただ、ソニーG株の方は、ソニーフィナンシャル株を付与することで、企業価値が理論上は下がることになる。しかし、現在ソニーGの業績は好調であり、下げた分は次第に取り戻していく可能性が高いと見てよい。ソニーGの株価はやや不安定な上昇ぶりで投資家の迷いが現れた格好ではあるが、中長期投資の観点からは両社株を保有することで投資して良かったとなろう。 次に、マニー <7730> [東証P]を。私はこの銘柄が大好きなのだが(かかりつけの 歯科医院が同社の機器を使っているためという単純な理由で)、株価は24年1月に2410円の高値をつけたあと下降に転じ、今年の4月下旬まで下げ続けてしまった。しかし、株価は1044.5円で底を打ち、回復に転じている。背景には、主力製品の手術用縫合針や眼科用ナイフ、歯科治療器などの需要が上向いていることがある。株価はスローペースながら続伸する確率は高い。 生産設備エンジニアリングの中堅、平田機工 <6258> [東証P]も、評価不足銘柄の一つだ。半導体用ウエハの搬送装置をはじめ、自動車製造向けには内燃機関、EV(電気自動車)バッテリーなど、各種の高精密機器の製造設備が絶好調で繁忙状態になっている。収益は堅調な拡大が見込めるものの、株価は8月に入ると下げ続け、9月になってようやく浮上を開始したところ。本格的な浮上はこれからと見てよく、ここでの投資はまだ安全域だ。 神戸物産 <3038> [東証P]も、私から見ると評価不足になる。「業務スーパー」を主体に食品の低価格販売に強く、業者だけでなく一般消費者も多数来店し、収益を伸ばしている。特にいまは、インフレ基調にある。なるべく安く食品や日用品を購入したいとのニーズは強く、これから年末にかけて多くの消費者が押しかける。こう見てよいため、株も期待が持てる。 最後にヤマシンフィルタ <6240> [東証P]を。 建設機械の油圧回路に使われているフィルターに強い企業。それも世界首位だ。当然、建設機械の需要が落ちればこの会社の収益は低下し、株価も下げてしまう。しかし、幸いにもいまは建設機械の需要は順調増であり、フィルター需要も上向きつつある。株価は高値をつけたばかりながら、目先は売りに押されているので、ここで投資しておくのがよい。 2025年9月19日 記 株探ニュース