【杉村富生の短期相場観測】 ─総裁選は株高とのジンクスだが……
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「総裁選は株高とのジンクスだが……」 ●小泉氏は減税・財政出動に否定的! 相場解析においてはごく目先の短期的な視点、および将来の長期的な視点を分けて考える必要がある。よく自動車の運転では「緩急をつけよ」と教えられる。流れに合わせて、徐行すべき局面は徹底してスピードを落とすのだ。ダラダラと走るのはいけない。株式投資も同じだろう。攻めるときは攻めまくる。守る局面は慎重な姿勢に徹する。 改めて述べるまでもないことだ。現状はどうか。10月4日の自民党総裁選に向け「利食いを優先し、現金比率を高めておきたいと思う」、筆者はそう主張している。買い場は必ず訪れる。新総裁は小泉進次郎農林水産相、高市早苗前経済安全保障相の“2強”の争い(総裁選には5人が立候補)と伝えられている。マスコミは「小泉氏優勢」という。もちろん、「総裁選は株高」の経験則(ジンクス)は承知している。 小泉氏の政策、発言は「日米関係を重視する」と語る半面、「中国・北朝鮮との対話を行う」としている。石破、岸田路線の継承だろう。財政出動には「歯止めが必要」との立場だ。原発については「選択肢を閉じない」としているものの、積極推進ではない。かつて、父の小泉純一郎元首相は「原発ゼロ」を唱えていた。 ただ、小泉進次郎氏は積極財政論者の高市氏、茂木敏充前幹事長の両候補と違って、首相に就任した場合、長期金利の上昇は抑えられるだろう。ちなみに、昨年秋以降の長期金利(10年物国債利回り)の上昇をタームプレミアム(上乗せ金利)とリスクニュートラルレート(将来の短期金利の期待値)に分解すると、タームプレミアムの上昇が寄与したことが分かる。 いわゆる、財政リスクの反映である。衆院選、都議会選、参院選での敗北を背景に、「与党は野党の主張する減税・財政出動を受け入れざるを得ない」との見方が強まったのだ。しかし、新総裁次第によってはこのマーケットの期待が裏切られる可能性がある。海外投資家は「日本が変わる」とみていた。その変節がどう影響するか。 ●高市候補の政策は株式市場好み! なお、高市候補の主張は宇宙・サイバー、自律型AI(人工知能)兵器など新たな戦争形態に対応する、次世代革新炉(核融合炉)の開発・建設に取り組む、先端技術を開花させるための戦略的財政出動を行う、など明確だ。株式市場の受けは良い。とはいえ、長老4人組(麻生、菅、岸田、石破の各氏)が小泉支持にシフトしており、厳しい選挙戦を余儀なくされるだろう。 ちなみに、昨年秋の総裁選では小泉関連銘柄として労働市場改革のリクルートホールディングス <6098> [東証P]、リスキリングのインソース <6200> [東証P]、ライドシェアのディー・エヌ・エー <2432> [東証P]、地元の横須賀に店舗を構えるさいか屋 <8254> [東証S]などが買われた。今回、労働市場改革はトーンを落としている。 高市関連銘柄では 核融合炉の東洋炭素 <5310> [東証P]、助川電気工業 <7711> [東証S]、量子コンピューターのフィックスターズ <3687> [東証P]、富士通 <6702> [東証P]、宇宙開発のQPS研究所 <5595> [東証G]などが人気を集めた。さらに、サイバーセキュリティ、防衛、再生エネルギーなどもチェックしておく必要があろう。 ただし、総裁選の結果が出るのはまだ先(2週間後)だ。この局面での「決め打ち」はリスクが大きすぎる。候補者には林芳正官房長官、小林鷹之元経済安全保障相もいる。だからこそ、この局面は慎重に、かつ小玉(最低売買単位)での小すくい戦術が有効、と訴えている。無理は禁物だ。「相場は明日もある」と言うじゃないか。 ここは引き続いて、値動き抜群の富士急行 <9010> [東証P]、思惑妙味のnms ホールディングス <2162> [東証S]、SMN <6185> [東証S]、PER(株価収益率)5.8倍、PBR(株価純資産倍率)0.53倍の明海グループ <9115> [東証S]、ペロブスカイト太陽電池の製造装置を手掛けるエヌ・ピー・シー <6255> [東証G]などに注目できる。 オーソドックスな押し目狙いの銘柄ではテーマ性を有する三井E&S <7003> [東証P]、イトーヨーギョー <5287> [東証S]、NJS <2325> [東証P]、さくらインターネット <3778> [東証P]、ジャパンエンジンコーポレーション <6016> [東証S]、JX金属 <5016> [東証P]、住友金属鉱山 <5713> [東証P]などになろう。 2025年9月18日 記 株探ニュース