トヨタ国内新工場で見直し余地、設備投資関連の「勝ち組」銘柄に照準 <株探トップ特集>
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―4~6月期法人企業統計で製造業は大幅増、国は「大胆な投資促進税制」で成長促進へ― トランプ米政権による相互関税の発動を背景に外需系の景気敏感株は総じて出遅れ感を強めている。そんななか、トヨタ自動車 <7203> [東証P]が国内での新工場の建設計画を発表。製造業を中心に老朽化した国内生産拠点を刷新し、競争力の維持・強化を目指す企業の動きが顕在化しつつある。業績が堅調な 設備投資関連の「勝ち組」銘柄には見直し余地が大きい状況と言えるだろう。 ●信越化・フジクラも新工場投資 8月7日、トヨタは愛知県豊田市に車両工場を新設するための土地の取得を決定したと発表した。新工場の稼働は2030年代初頭を目指し、生産車両については今後検討するとしている。トヨタによる国内での新たな車両工場の建設は、11年1月に生産を開始したセントラル自動車(現トヨタ自動車東日本)の宮城工場(現宮城大衡工場)以来。国内生産の300万台体制の維持とともに、先端技術を活用した次世代型の自動車工場の立ち上げに向けて、今後準備を進めていく方針だ。 トヨタ以外にも半導体ウエハー世界首位の信越化学工業 <4063> [東証P]が昨年4月、群馬県伊勢崎市に露光材料の新工場を建設すると公表。第1期として830億円を投じて26年までに完成させる計画となっている。積水化学工業 <4204> [東証P]は大阪府内でのペロブスカイト型太陽電池の生産ラインの新設に向けた設備投資に踏み切るほか、フジクラ <5803> [東証P]は450億円を投じて千葉県内に光ファイバーの新工場を建設し、29年度に稼働させる方針だ。国内では競争力の高い製品の増産体制の構築とともに、最新の設備の投入により生産効率を飛躍的に高めようとするための投資活動も活発に行われている。 国も企業の設備投資意欲を後押しする姿勢を鮮明にしている。経済産業省が8月29日に公表した26年度予算の概算要求は一般会計・特別会計の合計が25年度の当初予算比で19%増の2兆444億円となった。GXやDX、量子・宇宙関連など「高付加価値な成長投資の促進」に関連する事業の予算要求額を増やしたほか、「AI・半導体分野での量産投資や研究開発支援等の重点的投資支援」など一部重点項目については、金額を示さない「事項要求」とした。更に経産省は「大胆な」投資促進税制の創設を税制改正要望に加えている。 ●FA・工作機械や機械商社に注目 マクロ面に目を向けると、財務省が9月1日に発表した25年4~6月期の法人企業統計によると、金融・保険業を除いたベースで国内企業の設備投資は前年同期比7.6%増と2四半期連続でプラス。伸び率は1~3月期の6.4%増から拡大し、製造業では16.4%増と大幅な増加となった。先進国では日本とともに米国も堅調な伸びをみせており、米4~6月期の国内総生産(GDP)改定値で、設備投資は前期比5.7%増となっている。 そもそも日本の場合は人手不足に端を発したIT関連投資が設備投資全体を押し上げる構図にあるとされている。更に、半導体や造船など「経済安全保障」に関わる部分では、サプライチェーンの強靱化の観点で日米ともに生産拠点の新設や能力の拡大に向けた設備投資が持続的に行われる見通しだ。日本が生産設備の老朽化という問題を抱えていることも踏まえると「トランプ関税により7~9月期の国内景気が落ち込むことになったとしても、設備投資が腰折れするシナリオは現時点では見込みにくい」(外資系運用会社エコノミスト)との声もある。 設備投資関連株といえば、キーエンス <6861> [東証P]やファナック <6954> [東証P]、オムロン <6645> [東証P]など、FA(ファクトリーオートメーション)分野の大手が候補に挙がる。DMG森精機 <6141> [東証P]やオークマ <6103> [東証P]など工作機械メーカーや、機械商社も業績見合いで選択肢に加わることとなるだろう。これらの観点から、穴株妙味を感じさせる銘柄をいくつかピックアップしていく。 ●設備投資拡大で穴株妙味の6銘柄 ◎THK <6481> [東証P] 工作機械や 半導体製造装置などに向けた直動案内部品「LMガイド」で世界首位。変革に向かう日本企業の筆頭格でもあり、輸送用機器関連で海外拠点の一部閉鎖・集約など収益改善策を断行する。ROE(自己資本利益率)を早期に10%超(24年12月期は2.8%)に高める目標を掲げる。FAソリューション事業の成長にも注力しており、25年12月期の最終利益は前期比7割増を計画。株価は8月に年初来高値4360円を形成後、足もと4000円どころまで下押ししたが、配当利回りは6%を超える高水準となっている。 ◎進和 <7607> [東証P] 生産設備の商社機能とメーカー機能の両面を併せ持ち、トヨタのグループ企業など自動車向けを主力とする。クルマの電動化をはじめ、スマートファクトリーに関する領域でプレゼンスを発揮。自律走行搬送ロボットを活用した構内物流自動化システムの受注は完成車メーカー向け以外にも成長が見込まれている。25年8月期第3四半期累計(24年9月~25年5月)の決算はトップラインと各利益が2ケタの伸びで、経常利益の通期計画に対する進捗率は約94%。25日移動平均線を下回る足もとの株価水準は値頃感がある。 ◎椿本興業 <8052> [東証P] 機械商社でコンベヤチェーンや変減速機など動力伝達部品や設備装置などを手掛ける。来年に創業110周年を迎え、無借金経営で財務は強固。26年3月期は前期に続き過去最高益を更新する計画だ。受注状況は好調で、受注残高も高水準。全体相場が急落した4月安値からほぼ一本調子で上昇して上場来高値圏に浮上し、3000円台乗せが視界に入っている。短期的な過熱感が強まってはいるものの、信用倍率は0.3倍台と売り長の状態にある。 ◎ユアサ商事 <8074> [東証P] 機械・工具を取り扱う商社で、来年に創業360周年を迎える老舗企業。インドなど南アジア地域での需要の取り込みを図るほか、モノづくり領域では航空・防衛や半導体製造関連など新市場への拡販も狙う。26年3月期の最終利益予想は前期比17%増で2期ぶりの最高益更新を計画。異物の混入や欠陥を即座に検出するAI外観検査装置の更なる拡販にも期待が膨らむ。株価は24年5月高値から今年4月安値の下落幅に対する半値戻しを達成しており、全値戻しに向かうか注目される。 ◎杉本商事 <9932> [東証P] 測定・計測機器に強みを持つ機械工具商社。26年3月期第1四半期(4~6月)は一部で設備投資の遅延・停滞の動きがあって、減益での着地を余儀なくされたものの、株価の下押しは一時的なものにとどまっている。4月に企業のDX支援を手掛けるINDUSTRIAL-X(東京都港区)への出資を発表。DX関連のコンサルティングサービスの収益貢献が期待されるほか、同時に発表した総数250万株(自己株式を除く発行済み株式総数の13.1%)を上限とする自社株取得枠のうち、7月末までの累計取得株式数は94万3000株とあって、未消化分による需給引き締め効果も意識され、75日移動平均線近辺で底入れ後の再度の新値追いを期待したい。 ◎岡本工作機械製作所 <6125> [東証S] 研削盤とともに半導体製造装置としてポリッシャーやグラインダーなどを製品群に持つ。24年6月に三井物産 <8031> [東証P]から約98億円の出資を受け、海外展開を加速。国内企業の買収なども相次いで実行した。業績は下期偏重型。26年3月期はトップライン、各利益ともに2ケタ増を計画する。製造業の国内回帰の方向性にある米国では競合メーカーが少なく、日米両国で堅調な引き合いが続くと見込めそうだ。200日移動平均線は右肩上がりとなっている。 株探ニュース