【杉村富生の短期相場観測】 ─株価には"悪材料"を乗り越える力がある!

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コラム

「株価には“悪材料”を乗り越える力がある!」

●企業改革は着実に進展、株主還元姿勢を強化!

 外部環境(トランプ関税、政治の迷走など)は相変わらず不透明である。上場企業の2026年3月期は6年ぶりの減益が避けられない。しかし、株価は抜群に強い。8月19日には日経平均株価が4万3876円の瞬間高値を示現している。実に、4月7日のザラバ安値(3万0792円)比42.5%高だ。なぜッ? この答えこそが、今後の株式市場の動向を占うカギになろう。

 まず、今回の急騰劇の背景には「失われた30年」の間に、スケール(時価総額)的にすっかり出遅れてしまった日本企業に修正の動きが起こったこと。マグニフィセント・セブン&7人のサムライが好例だ。アメリカ市場の時価総額上位7社と日本市場のそれを比較すると、実に18分の1にすぎない。悲しすぎる。

 さらに、国民も貧乏になった。与党(自民党、公明党)の衆院選、都議会選、参院選の3連敗、立憲民主党の伸び悩みは、生活が苦しい国民の叫びを反映したもの。日本のパート・アルバイトの最低賃金は1000円ちょっとだが、アメリカでは30ドル(約4700円)を超えようとしている。高齢者にとって、頼みの公的年金は雲行きが怪しくなっている。

 まあ、余計なことだが、マサチューセッツ工科大学(MIT)の授業料(年間900万円)、全英女子オープンの優勝賞金(2億1500万円)などの話を聞くと、日本との格差に愕然とする。MITは25年秋から年収20万ドル(約3100万円)以下の世帯出身の学生は授業料を免除するという。日本人の学生はほとんどが該当するのではないか。

 もっとも、MITは入学することが難しい。世帯年収10万ドル(1500万円)以下の場合、授業料免除に加え、4年間の住居費、食費、書籍代、ときには小遣い程度の給付金が支給されるというが、学力が問題だ。

 いずれにせよ、政治に関しては政府の責務(国民の生命、財産、生活を守る)を忠実に実行してもらいたい、と思う。

●国民の叫びが政治を動かし、株高に!

 すなわち、衆参両院ともに、与党は過半数を割り込んでいるだけに野党が唱える減税、財政出動策を取り入れざるを得ない。もちろん、企業改革の推進(持ち合い解消、親子上場の是正、M&Aの激増)、株主還元姿勢の強化(増配が相次ぎ、自社株買いの急増)、トランプ関税に伴う世界経済の分断(国際マネーが多極分散にシフト)などがある。

 外国人の大幅買い越しはこうした流れを受けたもの、との見方ができる。この潮流の変化を見落としてはいけない。日本の自社株買いは今年度20兆~25兆円と増える。だが、エヌビディアの600億ドル(約8.8兆円)規模、アメリカ市場全体の年間1.1兆ドル(約170兆円強)と比べると、まだまだ見劣りがする。

 しかし、不安はない。企業改革は始まったばかりだ。SOMPOホールディングス <8630> [東証P]はアメリカの損害保険会社、アスペン・インシュアランス・ホールディングスを約5195億円で買収するが、会社側は「持ち合い解消によって、資金に余裕ができた」と説明している。この種の案件は今後、もっと増加するだろう。

 一方、この局面での物色傾向はどうか。引き続いて、第4次産業革命、国土強靱化、地方(農業再生)支援などがメインテーマとなろう。東京電力ホールディングス <9501> [東証P]、ローム <6963> [東証P]、JX金属 <5016> [東証P]、井関農機 <6310> [東証P]、日水コン <261A> [東証S] は狙える。

 このほか、業容一変の夢が膨らむコンヴァノ <6574> [東証G]、AIストーム <3719> [東証S]にはきな臭さが漂う。リスクをいとわぬ投資家には面白い銘柄だ。思惑妙味ではSMN <6185> [東証S]、アニコム ホールディングス <8715> [東証P]、ZETA <6031> [東証G]などに妙味があろう。

2025年8月29日 記

株探ニュース

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