【杉村富生の短期相場観測】 ─日経平均株価10万円の理論的根拠?

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市況

「日経平均株価10万円の理論的根拠?」

●日本の株高を支える5つのポイント

 株式市場は想定通りの高値保ち合い商状に陥っている。これはアメリカ市場も同様だ。なにしろ、日経平均株価は4月7日の3万0792円を安値に、8月19日には4万3876円の高値(ともにザラバベース)まで急騰した。わずか4カ月半の間に、上昇幅は1万3084円、上昇率は42.5%に達する。

 高値時点のPER(株価収益率)は17.9倍だ。上昇ピッチが速すぎるし、テクニカル指標には過熱感がみられる。なお、日経平均株価の予想1株利益は2433円(実績ベースは2595円)、6.2%の減益である。大手証券によると4-6月期(全産業)の経常利益は前年同期比11.5%減(製造業は21.3%減、非製造業は2.9%増)だった、という。

 製造業はトランプ関税(日経平均株価が4万2426円の高値をつけた昨年7月11日比15%のコストアップ要因)に加え、円高(約13~14円)の影響がある。ほとんど(7~8割)の企業が今年度の通期予想を据え置いている。今後、増額修正を行うか、減額修正に進むかによって、1株利益の水準が変わる。このチェックは不可欠である。

 ただ、再三指摘しているように、株価はファンダメンタルズ(価値)だけで決まるわけではない。需給と人気が重要な要素になる。特に、4~8月の急騰劇はトランプ関税、政治の迷走、企業業績の下ブレ、地政学上のリスクなど外部環境の不透明感を乗り越えてきた。やはり、この局面では異常な強さの背景について、論点整理をしておく必要があろう。

 すなわち、今回の急騰劇の要因としては以下の5点をピックアップできる。このトレンドは中・長期的に継続する。したがって、目先は調整(値固め)必至の状況だが、不安はまったくない、ということ。ちなみに、その5点とは(1)経営改革、(2)株主還元姿勢の強化、(3)需給の改善、(4)与党の政策転換を先取り、(5)欧米の利下げ……になる。

●逆行高の銘柄を攻めるのがセオリー!

 簡単に説明すると、親子上場の是正、持ち合い解消売り、増配・自社株買いの急増、活発なM&A、MBO(マネジメント・バイ・アウト)、外国人買い、減税・財政出動路線、ECB(欧州中央銀行)に続きFRB(米連邦準備制度理事会)が9月に利下げ開始の見込み、などである。上場企業数は減少(昨年の上場廃止は94社)の時代を迎えている。

 繰り返し(再三再四、指摘)になるが、日本株はスケール(時価総額)的に出遅れが著しい。マグニフィセント・セブン(アメリカ市場の時価総額上位7社)と7人のサムライ(東京市場の同上位7社)の時価総額を比較すると、悲しくなる。実に、18分の1にすぎない。これこそが「失われた30年」のツケだろう。

 その修正が始まっている。それに、PBR(株価純資産倍率)ではS&P500指数が5.48倍、世界平均が3.5倍なのに対し、日経平均株価は1.59倍にすぎない。この背景にはROE(自己資本利益率)の低さがある。日本企業は内部留保をタメ込みすぎている。しかし、ようやくその“放出”が開始された。つれて、PBRが上昇する。

 “放出”とは増配に加え、自社株買い(年間25兆円ペース)、M&A(今年1~6月に31兆円)、設備投資(今年は34兆円)の激増である。仮にPBRがS&P500指数並みになると、日経平均株価は15万円(日経平均株価の1株純資産2万7387円[8月19日]×5.48)、世界平均だと、9万6000円(2万7387円×3.5倍)になる。

 まあ、「話半分」「話3分の1」としても日経平均株価の上値のメドは5万円(最低目標)だ。目先の株価のもたつきを恐れることはない。実際、株価は抜群に強いじゃないか。

 この局面においては逆行高の銘柄を攻めるのがセオリーだ。具体的には地銀の“雄”コンコルディア・フィナンシャルグループ <7186> [東証P]、農業再生の本命的な存在の井関農機 <6310> [東証P]、半導体関連の切り口を有するJX金属 <5016> [東証P]などに妙味があろう。

 さらに、第4次産業革命の核“素材”は電力といわれる状況下、存在感が高まる東京電力ホールディングス <9501> [東証P]、好業績に加え、新薬開発が進む住友ファーマ <4506> [東証P]、好業績のLAホールディングス <2986> [東証G]、思惑妙味のAIストーム <3719> [東証S]などに注目できる。

2025年8月22日 記

株探ニュース

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