下水道関連株に風雲急の気配、国策・急騰相場で「当確ランプ8銘柄」 <株探トップ特集>
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―膨大なメンテナンス市場、大規模な道路陥没事故を受け国土強靱化の一丁目一番地に― 週末25日の東京株式市場は日経平均株価が370円安の4万1456円と3日ぶりに反落した。前日までの直近2営業日で2000円以上も水準を切り上げ一時4万2000円台を回復、TOPIXの方は前日に日経平均に先立って史上最高値を更新しており、まさに飛ぶ鳥を落とす勢いに見えた。トランプ米政権との関税交渉で、相互関税・自動車関税いずれも15%で急転直下の合意に至ったことが株価の押し上げ要因となったわけだが、その見返りとして自動車やコメの市場解放、米国への巨額投資といった代価を払わされる格好となっており、手放しで喜べる話でもない。この日はそうした事情が改めて意識されたのか、思惑先行で急ピッチの上昇をみせた反動が顕在化、ポジション調整の売りが優勢となった。 ただし、日経平均の上げ足がいったん止まったとしても、マーケットに降り注いだ潤沢な資金がそうたやすく枯れることはない。主力株の底上げが一巡した後は、物色の矛先を変え、国策などを背景としたテーマ買いの動きが再び活発化する公算が大きい。既に“高市銘柄”として宇宙関連やサイバーセキュリティー関連に投資マネーが流れ込むなど、その片鱗が垣間見えるが、ここから注目したいのは、政策的に優先順位が高い国土強靱化のテーマで、とりわけ緊急課題となっている 下水道インフラ整備で活躍が期待される銘柄群である。 ●大規模な道路陥没事故が強烈なインパクトに 国土強靱化という国策テーマのもとで老朽化した下水道の更新工事の必要性は以前から叫ばれていた。しかし、これが待ったなしの状況にあることを世に知らしめたのが、今年1月28日に埼玉県八潮市の県道交差点で起こった大規模な道路陥没事故である。テレビなどでも再三報道され国民全般に大きな衝撃を与えた。 この事故は老朽化した下水道管が破損したことが原因とされており、この道路陥没事故によって人命が奪われたほか、およそ2週間にわたって実に120万人に下水道利用の自粛が求められるなど、周辺住民の生活にも広範な影響が出た。水道インフラの早急な点検や補修など「予防保全」の動きが、国家プロジェクトレベルで急浮上したことはいうまでもなく、株式市場でも関連銘柄が一斉に動意づく背景となった。 ●喫緊の課題として急浮上、酷暑も危機意識煽る その後も水道管老朽化を巡るトラブル、具体的には道路から間欠泉のように水が噴き上げるような事例が全国で相次いでいる。6月下旬には鎌倉市で水道管の主管と支管をつなぐ継ぎ手が外れ道路が広い範囲で冠水したほか、市内の約1万戸が断水する事態となった。 また7月5日には大阪市東淀川区の交差点で、地中の工業用水道管が破損して水が漏れたことが原因となり道路一帯が冠水する事故が発生、株式市場でも関連銘柄の株価が刺激され軒並み動意した経緯がある。これらの事故の延長線には八潮市のような道路の崩落という最悪のシナリオが横たわっているだけに、喫緊の課題としてマーケットが認知するのは当然である。そして、更にもう一つ季節的な要因も危機感を煽っているという指摘がある。 地球温暖化の影響によるものかどうか、今夏は日本でも各地で異常ともいえる気温の上昇が目立っている。市場関係者によると、「気温の急上昇に伴い老朽化した水道管が膨張して破裂を助長するというケースが今後増える可能性があり、今の酷暑が“二重写し”効果となって下水道インフラ問題が意識されやすくなっている」(中堅証券ストラテジスト)という。8月から9月にかけても、異常な暑さが続く可能性は高く“膨張破裂”のリスクが増幅されることも念頭に置く必要がある。そして当然ながら、これは毎夏リフレインされる。 ●日本列島の地下を走る38兆円の巨大市場 日本列島に縦横無尽に張り巡らされた下水道は全国で全長およそ50万キロメートルに及ぶ。耐用年数は諸々の条件によって変わるが平均で50年ほどといわれている。そして、現状でこの50年を超過した下水道管は全体の約7%を占めているもようだ。単純計算で約3万5000キロメートルがその対象だ。もちろん、これから年を追うごとに使用期間が50年を超えてくる下水道管は漸次増加することも考慮しておかなければならない。 これらを中心に「予防保全」を含めた下水道インフラ再構築が早急に求められることは必須であり、政府は今から5年後の2030年度までに5000キロメートルの更新工事を全国で完了させる方向で国策を発動させていく構えにある。下水道のメンテナンス市場は巨額に及ぶことが必至で、国土交通省試算では下水道管の維持管理・更新費用は19年度から30年間というタームで総計38兆円規模に達するという。 ●動意株相次ぎ、再び繚乱の気配に 株式市場では、年初の八潮市の陥没事故を境に下水道関連株へ投資資金が断続的に流入しているが、足もとでその流れが再び強まり始めた。例えば ドローンを活用した点検・物流サービスなどを手掛けるブルーイノベーション <5597> [東証G]は、直近は奈良市の公共下水道の改築工事で、ドローンを使って点検調査を行ったことを発表し物色人気に拍車がかかった。同社株は25日に一時21%高の2285円と急騰を演じたが、直近3営業日合計では35%という目を見張る上昇率をみせている。 ブルーイノベ以外でも、この日は下水道関連銘柄に動意が相次いだ。地質調査大手の川崎地質 <4673> [東証S]が大きく買われたほか、上下水道のコンサルティングを手掛けるNJS <2325> [東証P]、マンホールで実績の高いベルテクスコーポレーション <5290> [東証S]、上下水処理設備など水環境事業を主力とする月島ホールディングス <6332> [東証P]、下水道工事などを主力とする建設会社の大盛工業 <1844> [東証S]、コンクリート二次製品で官公庁に強いヤマックス <5285> [東証S]などが頑強な値動きを示した。こうしたテーマ買いの動きはこれから佳境を迎える可能性が高い。今回のトップ特集では、今後中期的に上値が期待できる下水道関連株をテクニカルやファンダメンタルズから鋭意分析し、有望8銘柄を厳選エントリーした。 ●ここから要注目の下水道関連8銘柄はこれだ ◎日水コン <261A> [東証S] 日水コンは昨年10月に東証スタンダード市場に新規上場したニューフェース企業だが、上下水道を中心とした建設コンサルティングを展開し、官公庁案件で存在感を示している。河川や砂防分野でも強みを持っているほか、業界トップクラスの上下水道コンサルでは国土強靱化の国策を追い風に調査・計画・設計などで需要獲得が進む。24年12月期の営業17%増益に続き、25年12月期も同利益は前期比6%増の23億円とピーク利益更新が続く見通しだ。7月中旬以降に株価は調整局面に移行したが、足もとの踊り場は買いの好機。早晩、上場後の高値更新から3000円台での活躍がイメージされる。 ◎土木管理総合試験所 <6171> [東証S] 土木管理は建設会社や官公庁からの要請で土木建設工事に必要な土質や地質の調査・分析などを行っている。調査に関しては、地質だけでなく非破壊調査や環境調査などを一括で手掛ける試験総合サービスのほか、地盤補強サービスやソフト開発販売なども展開している。下水道インフラ分野で同社の技術に対する引き合いは旺盛で、会社側でも国策の追い風に乗り同分野での受注獲得に傾注していく構えだ。業績は24年12月期の営業23%増益に続き、25年12月期も前期比18%増の6億8400万円と2ケタ成長が続く見通し。2月の急騰後も波状的な買いが観測され、早晩500円台も視野。 ◎イトーヨーギョー <5287> [東証S] イトヨーギョはコンクリート二次製品の製造・販売を行うが、マンホールやライン導水ブロックで高い商品競争力を有している。豪雨対策製品への引き合いが旺盛で、好業績に反映させており、25年3月期は営業利益段階で前の期比86%増益を達成、26年3月期も2ケタ成長が視野に入っている。そのなかPER10倍近辺、PBR0.6倍前後と指標面で極めて割安な水準に放置されている。株価面では小型で急騰習性があり、今年2月中旬を境に商いを伴い投資資金の継続的な買いを呼び込み、7月に入ってから物色人気を再燃させた。今月中旬の戻り高値クリアから、2月につけた年初来高値857円奪回は時間の問題か。 ◎日本ヒューム <5262> [東証P] 日ヒュムはヒューム管の最大手メーカーで、下水道用ヒューム管の市場シェアは約20%に達している。このほかコンクリートパイルなどコンクリート二次製品全般で高実績を誇っている。下水道分野では新しいコンクリート技術「e―CON」が、セメントを一切使用しないプレキャスト製品用コンクリートとして高評価を得ている。業績もトップラインの伸びが続くなか、営業利益は25年3月期の46%増益に続き、26年3月期も前期比9%増の22億円と13期ぶりにピーク利益を更新する見通し。株価は7月11日につけた上場来高値2561円を通過点に、最高値圏への突入が見込まれる。 ◎栗本鐵工所 <5602> [東証P] 栗本鉄は鋳鉄管大手で、上下水道管向けダクタイル鉄管などで安定した収益を上げている。また、燃料電池分野に注力するほか、ナノテク関連技術でも先駆的存在で同業他社と一線を画す存在となっている。26年3月期は営業減益見通しながら、最終利益は有価証券売却などが寄与して小幅ながら増益を確保し、過去最高を更新する見通しだ。営業利益も27年3月期は再び増益転換する見込みにある。株主還元姿勢の高さにも定評があり、高配当利回りが魅力的な一方、PERやPBRでみても割高感には乏しい。直近、7月7日の年初来高値7080円奪回を果たし、実質的な青空圏で強調展開が続きそうだ。 ◎荏原実業 <6328> [東証P] 荏原実業は上下水処理施設向けで優位性を持つ研究開発型のファブレス型の装置メーカーで、環境関連事業の育成に傾注している。荏原 <6361> [東証P]との資本関係はないものの、機器材料などの仕入れ先として取引関係がある。上下水道に関しては豊富な受注残を武器に着実な増収増益路線をたどっている。公共分野では水インフラ設備の更新需要を捉えるほか、都市部の豪雨災害に備えた防災案件などを背景に、25年12月期は売上高が前期比7%増の400億円、営業利益は同6%増の45億円を見込んでいる。株価は25日移動平均線を足場に上放れ3月下旬以来の4000円台回復をにらむ。 ◎水道機工 <6403> [東証S] 水道機は上下水道向け水処理機器の製造販売を手掛け、東レ <3402> [東証P]が同社の過半の株式を保有する親会社。ビジネス面でも水処理分野で東レと協業することで展開力に磨きをかけている。官公庁関連案件が売り上げの9割を占め、水インフラ分野の施設老朽化に伴う更新需要が国策として今後中期的に収益に乗ってくる。25年3月期に売上高が過去最高を記録し、営業利益も3.3倍増益と急回復。続く26年3月期も売上高は前期比16%増で初の300億円台乗せを見込み、営業利益も同8%増の16億円予想と27年前に記録したピーク利益に肉薄する。株価は動兆著しく、2000円台後半を目指す展開に。 ◎前澤化成工業 <7925> [東証P] 前沢化成は上下水道機材の製造のほか水処理システムなども展開している。管工機材が売り上げの9割を占めており、下水道分野では継手や塩ビ製フリーインバートマスなどで受注獲得が進んでいる。27年3月期を最終年度とした中期3カ年計画では売上高260億円(前期実績は241億6600万円)、営業利益は25億円(同21億6400万円)を計画。株主への配当政策に前向きで、今期は年70円を計画し配当利回りは3.8%前後と高い。一方、PBRは0.6倍台と低く、株主資本の厚さを考慮すれば今後も還元強化の動きが期待できる。ここ上値指向を強めており、約19年ぶりの2000円台乗せが有望。 株探ニュース