炎夏でサングラス特需発生、好業績続出「アイウェア関連」に熱視線 <株探トップ特集>

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コラム

―安くて品質の良い「日本眼鏡」は海外でも人気、高齢化進展で老眼鏡市場も堅調―

 電車やバスといった公共交通機関でサングラスの着用の動きが広がっている。既に地上を走る多くの電車やバスで着用が始まっているほか、東京地下鉄 <9023> [東証P]も7月14日、地上区間において着用を希望する駅係員及び運転士に対して保護メガネ(偏光サングラス)の導入を15日から開始すると発表した。目から紫外線を浴びることは、熱中症などの健康被害につながる恐れがあるともいわれ、欧米に比べて着用率が低いとされる日本でも着用を進める機運が徐々に高まりつつある。

 サングラスに限らず、日本のアイウェア( 眼鏡、 コンタクトレンズなど)は新型コロナウイルスの感染拡大収束以降、活発さを取り戻しつつある。また、安くて品質の良い日本のアイウェアは海外でも人気が高く、中長期的な需要増加が見込まれている。

●アイウェア市場は5000億円超規模に回復

 アイウェア専門店「Zoff」を展開するインターメスティック <262A> [東証P]によると、眼鏡や眼鏡関連商品、サングラス、コンタクトレンズ関連、その他商品を含む国内アイウェア市場は、新型コロナウイルスの影響などで2020年に一度縮小したものの、足もとでは5000億円を超える市場規模に回復しているという。

 低価格商品の普及により、眼鏡の複数保有が一般的となってきたことに加えて、21年以降はアウトドアなどコロナ禍で関心が高まった分野に向けた新商品が相次いで投入され好調だったことや、サングラスの需要増加などが市場拡大に貢献したとみられている。高齢化社会の進展に伴い、老眼鏡市場も堅調に推移している。

 更に単価の上昇も市場の拡大に寄与している。原材料価格の上昇や物流費の高騰などはあるものの、価格転嫁が進んでいることや、各企業のプロモーションの効果もあって偏光レンズや調光レンズといった高機能レンズの需要が伸びているようだ。

●「鯖江ブランド」は生産拡大に舵取り

 また、市場拡大の要因として見逃せないのが、福井県鯖江市を製造拠点とする「鯖江ブランド」の認知度の上昇だ。福井県は眼鏡フレームの出荷額で国内全体の9割以上を占める眼鏡の一大産地であり、市場動向にも敏感とされる。

 その福井県で眼鏡枠や眼鏡を製造・出荷している企業を対象に北陸財務局福井財務事務所が行った調査によると、24年度の生産見込みを23年度実績と比較して「増加」と答えた企業は全体の53.7%で、25年度では58.5%に及ぶ。増加要因として「国内・海外需要の増加」や「メイドインジャパンの価値向上」と回答した企業が多い。また、海外ではファッションアイテムや紫外線対策としてサングラスが必需品であることから、受注が年々増加傾向にあるとの回答もあり、市場環境の良好さがうかがえる内容となっている。

●第3四半期76%営業増益だったJINSHD

 こうした状況を受けて、アイウェア関連企業のなかには好決算を発表する企業も多い。

 その代表的な例がジンズホールディングス <3046> [東証P]だ。同社が7月11日に発表した25年8月期第3四半期累計連結決算は、売上高698億1500万円(前年同期比18.0%増)、営業利益88億9200万円(同75.7%増)となった。継続的な販促キャンペーン活動を行うことで、レンズ・フレームともに高単価商品が好調に推移。国内アイウェア事業で既存店売上高が5月まで28カ月連続で前年実績を上回ったことが牽引した。通期でも売上高925億3200万円(前期比11.5%増)、営業利益108億500万円(同37.9%増)を見込む。

 アイウェア専門店は、高度な技術や知識・経験を持ったスタッフが在籍していることから、他の商品と比較しても商品提案力などの面で専門店に優位性がある。これがJINSHDの高単価商品好調の要因の一つとされるが、同様のことは他の専門店にもいえることから、注目が必要だろう。

●好業績期待のアイウェア専門店に注目

 インターメスが展開する「Zoff」では、サングラスの展開に力を入れている。昨年7月にはサングラス専門店を東京・銀座にオープン。また、ラインアップも拡充している。こうした取り組みも奏功し、7月4日に発表した6月度の国内月次売上速報では、既存店売上高は前年同月比2.1%増となった。各種コラボレーション商品やプロモーション、UV関連商品などが堅調な売り上げを継続したことで、30カ月連続で前年実績を上回った。同社では25年12月期の既存店売上高の前提を前期比5.8%増としているが、6月までの累計では6.4%増と想定をやや上回って推移している。

 Japan Eyewear Holdings <5889> [東証S]は、鯖江を拠点とする眼鏡のハイブランドとして知られる「金子眼鏡」と「999.9(フォーナインズ)」の2つのブランドを展開しており、近年では海外進出に注力する。6月に発表した26年1月期第1四半期連結決算は、営業利益13億700万円(前年同期比9.4%増)で、特に「金子眼鏡」のインバウンド向けを含む店舗販売が堅調だった。同社は、30年1月期に営業利益100億円を目標としているが、出店計画50店舗以上のうち数十店舗を中国をはじめとするアジアへ出店する。また、目標数値にはM&Aなどによるインオーガニック成長(既存の経営資源によらない非連続的な成長)は含んでいないことから、更なる上乗せも期待されている。

 パリミキホールディングス <7455> [東証S]は、25年3月期を最終年度とした前中期経営計画で目指した赤字体質からの脱却と安定的な利益体質への転換を達成。28年3月期を最終年度とする新たな中計では、ブランド力の強化や顧客基盤の拡大、DXによるCX(顧客体験価値)の向上などにより営業利益22億2300万円を目指している。26年3月期は連結営業利益15億4800万円(前期比11.9%増)を予想。収益性の高いビジネスモデルへの転換を図るため、差別化された顧客体験の提供を通じて競争優位性を高めるとしている。

 愛眼 <9854> [東証S]は眼鏡小売事業を中核として眼鏡卸売事業などを展開。25年3月期まで5期連続で営業赤字となっていたが、26年3月期は連結営業利益2億2200万円(前期1億2800万円の赤字)と黒字転換を見込む。小売店舗で品ぞろえの充実を図るほか、DX推進によりオペレーションの効率性を高め、顧客との接点を増やす取り組みなどを進める方針。また、引き続き不採算店舗の閉店にも取り組み、6期ぶりの営業損益黒字転換を狙う。

 一方、コンタクトレンズ関連企業にも好業績企業が目立つ。

 シンシア <7782> [東証S]が5月に発表した25年12月期第1四半期連結決算は、営業利益が1億5300万円(前年同期比2.2倍)と大幅増益で着地。利益率の高い自社ブランドレンズの売り上げが伸びたことが牽引した。今期は、為替の影響や成長投資などで大幅減益見通しだったが、第1四半期の好調や今年3月にフリュー <6238> [東証P]からカラーコンタクトレンズ事業を譲受したことなどを反映させ、営業利益予想を2億6800万円から3億4200万円(前期比29.3%減)に上方修正している。

 同社以外にも第2四半期以降の国内価格改定効果や「1DAY」シリーズの供給量増加により、26年3月期に連結営業利益102億円(前期比1.5%増)を見込むメニコン <7780> [東証P]や、価格改定効果に加えて、「1dayPureシリーズ」を中心として、乱視用や遠近両用コンタクトレンズなどのスペシャリティレンズの拡販に注力することで26年3月期に連結営業利益20億円(同28.0%増)を見込むシード <7743> [東証P]の業績動向にも注目したい。

 このほか、世界的眼鏡レンズメーカーであるフランスのエシロール・インターナショナル社との合弁会社で眼鏡レンズを手掛けるニコン <7731> [東証P]や、半導体事業と並び眼鏡レンズを事業の二本柱とし、コンタクトレンズ専門店「アイシティ」の運営も手掛けるHOYA <7741> [東証P]も関連銘柄として要マークだ。

株探ニュース

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