食卓から消えるリスク、注目必至の「ウナギ関連」有望株・特選リスト <株探トップ特集>
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―今秋に取引規制巡る国際会議、ニッスイと人工稚魚の大量生産に取り組む企業など要マーク― 夏の風物詩の一つ、土用の丑の日に食べるウナギのかば焼き。このウナギの調達が困難になる事態が訪れるかもしれない。先月下旬、EU(欧州連合)が動植物の国際取引を規制する「ワシントン条約」の対象に全種類のウナギを含めるよう提案した、との驚きのニュースが飛び込んできた。11月に開かれる同条約の締約国会議で議論される見通しで、仮に採択された場合、国内消費量の多くを輸入に頼る日本にとってその影響は避けられない。今後社会的に関心が高まり、株式市場で関連銘柄を探す動きが活発化する可能性がありそうだ。 ●日本は完全養殖で先駆 今回のEUの提案はニホンウナギなどすべての種類のウナギに対し、ワシントン条約で定める複数の規制のうち、輸出国に許可書の発行を義務付ける規制を適用しようというもの。国際取引を禁止するものではないが、それでも輸出入の手続きが煩雑化することによる影響は一定程度出てくるだろう。このEUの提案に関し、小泉進次郎農林水産相は6月27日の記者会見で、ニホンウナギは日中韓と台湾で「保存管理を徹底」していると説明。「国際取引による絶滅の恐れはない」とし、締約国会議での採択回避に向けて対応していく考えを示した。 世界有数の海洋国家である日本は水産資源の持続的な利用に向けて着実に取り組みを進めている点は押さえておきたい。ウナギの持続的な利用においては天然の稚魚を捕獲して生け簀で育てる従来の 養殖ではなく、人工的に卵からふ化させ、その稚魚を育てて更に次の世代を生み出す「完全養殖」の実現がカギとなる。農林水産省は人工種苗(人工ふ化させた稚魚)の生産技術の開発を進めており、2050年までにニホンウナギの人工種苗比率を100%とする目標を掲げている。 農水省の外局の水産庁が所管する水産研究・教育機構は7月8日、農機大手ヤンマーホールディングス(大阪市北区)などと共同でニホンウナギの種苗生産用の新しい量産水槽を開発したと発表した。1水槽当たり約1000尾の稚魚を生産することに成功し、過去に開発した大型水槽と比較して1尾にかかる飼育コストを約20分の1(1800円程度)に削減したという。この成果について特許を取得しており今後の展開が期待される。同機構は10年にニホンウナギの完全養殖に世界で初めて成功した実績を持つ。 ●創薬支援企業がウナギ研究にまい進 まずは養殖に絡む銘柄をみていこう。要注目なのが新日本科学 <2395> [東証P]だ。創薬支援を手掛け、前臨床試験受託で国内首位を誇る企業だが、環境への取り組みの一つとしてニホンウナギの完全養殖を目指し事業化にまい進している。同社は14年から取り組みに着手し、17年に人工稚魚の生産に成功。19年に鹿児島県の沖永良部島に拠点を設け、研究開発を行っている。 こうした実績を強みに、昨年10月から水産大手ニッスイ <1332> [東証P]とニホンウナギの人工種苗の大量生産技術に関する共同研究をスタート。ニッスイはブリの種苗の大量生産技術を有しており、これを生かして現状の生産性を高め技術の確立を目指す。両社は27年度をメドに事業提携の可能性を追求していく。 ●かば焼き風商品・飼料など関連銘柄さまざま ヨンキュウ <9955> [東証S]は愛媛を地盤とする水産商社。鮮魚流通をはじめ稚魚・飼料の販売、マグロ養殖、人工ふ化事業と展開し、ウナギ養殖も手掛けている。先進的な閉鎖循環式のタンクを取り入れ、水の管理を徹底するなど良質な育成環境を整えている。このウナギを使った商品は同社の株主優待としても提供している。 林兼産業 <2286> [東証S]は食肉加工中堅。子会社に養鰻(ようまん)事業を手掛ける「桜林養鰻」を有する。林兼グループが持つ配合飼料や養殖生産管理の技術力を生かし、安定的な生産を実現している。昨年11月、原田養鰻場(宮崎市)の事業を譲受したと発表。生産量の拡大や生産性改善などシナジー創出を図る構えだ。 養殖に絡む企業も含め、ウナギ関連に位置づけられる銘柄群全般にも目を配っておきたい。急騰習性があるG-FACTORY <3474> [東証G]に注目。同社はウナギ店「名代宇奈とと」を都市部中心に多数運営する。昨年7月、水産庁がニホンウナギの完全養殖技術の研究成果に関する報告会を行ったとの報道を受け、思惑物色のターゲットになりストップ高まで上昇。18年以来の高値圏に浮上する場面があった。同じ飲食店では、主力のフグ料理専門店でウナギ料理の提供に力を入れる関門海 <3372> [東証S]が見逃せない。 このほか関連銘柄として、水研機構などと共同で乾燥粉末のウナギ仔魚(しぎょ)用飼料を開発した実績がある不二製油 <2607> [東証P]、ウナギ用の飼料を手掛けるフィード・ワン <2060> [東証P]などがある。魚のすり身を使用したウナギのかば焼き風商品「うな次郎」を販売する一正蒲鉾 <2904> [東証S]もマークしたい。 株探ニュース