再び人気爆発の気配、「データセンター送配電関連」変身前夜の8銘柄 <株探トップ特集>
投稿:
―爆騰エヌビディアのGPUガブ飲み、電力需要膨大化で輩出される新たな出世株とは― 週末11日の東京株式市場は日経平均株価が小幅続落し、4万円大台を指呼の間に捉えながらあと一歩が届かず、改めて上値の重さが意識される状況となった。しかし、主力株に強弱観が対立し高安まちまちとなるなかも、中小型株の物色意欲は旺盛でプライム市場では全体の7割強の銘柄が上昇している。テーマ買いの動きは活発であり、全体指数に惑わされない“強い株”への個人投資家のニーズが如実に反映されている。そうしたなか、ここ人気テーマとして再び注目度が急上昇しているのが「データセンター関連」である。 生成AIの社会実装が進むなか、そのクラウドサービスの発信源となるデータセンター周辺株に投資マネーが食指を動かしているが、とりわけデータセンター向けで需要が沸騰する電力インフラに携わる銘柄群にマーケットの関心が高まっている。 ●エヌビディア時価総額4兆ドルの衝撃 米エヌビディアが上場来高値を更新するとともに、世界で初めて時価総額が4兆ドルを超えたことは世界でも大きな話題となった。爆発的な速度で我々の日常と同期が進む生成AIの存在は、半導体産業の業界地図を大きく変えることになったが、そのなか、あっという間に業界の頂点へと駆け上がったのがエヌビディアであった。元来ゲーム用途で使われていた同社製の画像処理半導体(GPU)がその特性からAI用半導体として想定を超える爆需を捉え、業績と株価を様変わりさせた。同じ時間軸で半導体セクターも勝ち組と負け組に色分けされることになったが、勝ち組企業の周辺は幅広く潤うことになり、それは半導体産業に限ったことではなかった。「エヌビディア・エフェクト」はデータセンターという範疇で幅広い企業群に新たな収益機会を提供している。 生成AI市場の急拡大を背景にAIサーバーの増設が必要となり、それを設置するデータセンターの建設ラッシュが世界的に続いている。クラウド経由で生成AIサービスを提供する際には以前とは比べ物にならない計算量が必要となる。そのためAIサーバーにはデータの並列処理で優位性があるGPUのコア(演算機構)が大量に搭載されることになり、これに伴いデータセンター1棟当たりの消費電力も膨大化している。電力を供給する側にとってはビジネスチャンスには違いないが、何よりもその需要が規格外で供給が追い付かないという現実に遭遇する可能性が高くなった。近い将来は生成AIの社会実装が一段と進むことで、この高水準の電力を安定的に確保していくことが大きな課題となっている。 ●AIデータセンターが“電力爆需”を生む 国際エネルギー機関(IEA)の予測では、2025年から27年までの世界の電力需要は3年間で1時間当たり3500テラワットの追加発電能力が必要になると試算されている。日本は現在、世界第5位の電力消費国となっているが、その日本の「年間消費量の3.5倍」という莫大な水準である。新興国におけるエアコン普及や欧州の電気自動車(EV)の販売増加などが一般的に考えられる背景だが、実はこれと並んで生成AIサービスの拡大に伴うデータセンターの増設及びAI関連施設で使われる電力需要が大きなウエートを占めている。また、もう少し長い目で見て23年から35年にかけての電力需要については年率平均3%ペースで増加していくとの試算だが、ここでの需要を先導するのはAIデータセンターにほかならず、データセンターの電力消費量は30年時点で現在との比較で2倍以上に増えると予測されている。 日本の場合、今年2月中旬に第7次エネルギー基本計画が閣議決定され、経済産業省から開示された。日本の電力需要は40年度に1時間当たり9000億~1兆1000億キロワットに拡大すると予想されており、これは22年度実績の9000億キロワットから上限が2000億キロワット引き上げられた形となっている。その際、再生可能エネルギーと原子力の比重を高めることで省エネ及び非化石エネルギーへの転換を図っていく方針にある。ここで送配電インフラの拡充が必須となる。広大な土地を持つ北海道など、地方に偏在する再生エネを大消費地に送電するために連系線を含む送電網全体の増強が不可避となるが、これには金額ベースで6兆~7兆円の投資が必要と試算されている。 ●データセンター周辺で人気株輩出が相次ぐ 株式市場では、既に旗艦テーマとして不動のポジションを確立させた生成AIやAI用半導体の延長線上にあるデータセンター関連株に、再びスポットライトが当たっている。その皮切りとなったのが、東京電力ホールディングス <9501> [東証P]で、同社は今月1日に「27年度にもデータセンター事業に本格参入する」と報じられ、株価を急動意させた。またデータセクション <3905> [東証G]の輝き方も半端ではなかった。週末11日こそストップ安で利食われたものの、それまで5日連続のストップ高という離れ業を演じ、マーケットの視線を釘付けにした。データセクは前週末4日の午後に、大阪府内にアジア最大級の最先端のAIスーパークラスター、いわゆるAIの集積地を新たに構築し、大企業向けにハイスペックな計算サービスを提供することを発表、これが材料視され投資資金が集中した。また、今週10日にはこの大阪府内のAIスーパークラスター構築に際しAIデータセンターサービスに関する大口契約の受注を発表し、人気に拍車をかける格好となった。 個別企業のデータセンターに絡む新たな材料が相次ぐなか、今後も同関連銘柄への熱視線は注がれ続けるだろう。そして否が応でもクローズアップされてくるのが、データセンター増設に付随する 電力と送電設備、そして 設備工事にかかわるビジネス領域であることは論をまたない。今回のトップ特集では、データセンター特需で脚光を浴びる送配電関連分野において、収益チャンスを捉える可能性が高まっている有望株を8銘柄厳選した。 ●送配電インフラ関連分野で急浮上する8銘柄 ◎アドソル日進 <3837> [東証P] アドソル日進は独立系システム開発の老舗で社会インフラ分野に強く、とりわけ電力・エネルギー関連で高実績を誇る。企業のデジタライゼーションの動きが加速するなか、同社が手掛けるDX支援案件も好調で収益押し上げに寄与している。4月下旬には、今後の受託増加が予想される電力向けシステム開発の生産体制拡充を目指し、九州電力 <9508> [東証P]のグループ企業と同社を含む協力会社8社がパートナーシップを締結したことを発表している。業績は好調を極めており、26年3月期は11%営業増益と2ケタ成長の見通しで4期連続の増益が見込まれている。株価は4月初旬を境に一貫した下値切り上げ波動を形成中、伸び切った感触は全くない。増配や自社株買いなど株主還元にも積極的で中期で要注目。 ◎SWCC <5805> [東証P] SWCCは中堅電線メーカーだが、電力インフラ関連で高実績を有しており、データセンターによる電力需要増大に対応した案件獲得で優位性を発揮する。戦略商品である環境配慮型の高電圧電力ケーブル用コネクター「SICONEX」は電力ケーブル同士の接続や、変電所内にある電力機器との接続などに欠かせない部品で、東電系企業向けをはじめ多数の納入実績があり、拡販も進んでいる。25年3月期の営業利益は前の期比63%増と利益成長を加速させたが、26年3月期も前期比17%増の245億円を計画するなど2ケタ成長で大幅な過去最高更新が続く見通し。7月3日に昨年12月高値まであと10円に迫る8510円をつけた後は調整しているが、仕切り直して早晩新値圏をまい進しそうだ。 ◎ETSグループ <253A> [東証S] ETS・Gは電気設備や送電線工事、建物管理事業などを手掛けており、電気工事は基礎工事から鉄塔建設、架線構築までワンストップで対応できるのが強み。足もとデータセンター関連の案件が好調に推移しており、業績拡大期待が強い。25年9月期はトップラインが3割以上の伸びで100億円台乗せを見込む一方、設備工事の採算低下で営業減益を予想しているが、26年9月期はデータセンター案件の寄与で利益面も成長路線に回帰しそうだ。株価は急騰習性があり、直近では7月2日にマドを開けて一時90円高と値を飛ばす場面があった。その後はもみ合っているが、信用買い残も少なく過熱感の乏しさから再動意の可能性が高い。実質青空圏への突入から中勢4ケタ大台での活躍を目指す展開も。 ◎東京エネシス <1945> [東証P] 東京エネシスは火力や原子力を主体とする発電所の建設工事及び保守を手掛け、バイオマスなどの再生可能エネルギー発電所でも実績が高い。データセンターなど情報通信の変電設備の引き合いも旺盛で高水準の需要を捉えている。同社の場合は東電関連の受注が主軸を占めていることから、データセンター案件でも今後中期的にビジネスチャンスが膨らむことになる。26年3月期は業績回復色が鮮明で営業利益段階で前期比46%増の39億円とV字回復を果たす見込みだ。PBRが0.6倍台で配当利回りが4%を超えていることから株高修正への期待も大きい。1300円台半ばから後半でのもみ合いを経て、上放れの機が近そうだ。昨年4月の戻り高値1493円を払拭すれば実質青空圏に突入する。 ◎ジーエス・ユアサ コーポレーション <6674> [東証P] GSユアサは蓄電池メーカー大手で、車載用鉛蓄電池や産業用電池電源などで世界的に高い商品競争力を誇る。また、リチウムイオン電池にも傾注している。データセンター向けではバックアップ用途の非常用電源設備向けなどで需要の獲得が進む。トップライン、利益ともに過去最高更新基調を続けており、営業利益段階で20%増益を達成した25年3月期に続き、26年3月期も同利益は前期比2%増の510億円とピーク利益更新が継続する見通しにある。PER8倍前後、PBR0.7倍台と生粋のバリュー株に位置付けられ、株主還元姿勢の高さも評価される。6月27日に年初来高値2761円をつけた後は一服しているが、2600~2700円のもみ合いは強気に対処して報われそうだ。 ◎住友電設 <1949> [東証P] 関西を地盤とする住友電工系の設備工事会社で、電力・空調・プラント関連工事などを主力に手掛ける。豊富な受注残を武器に25年3月期は売上高10%増収、43%営業増益といずれもピーク更新を果たし、26年3月期営業利益は強含み横ばい圏を予想するがデータセンター関連の大口案件などの寄与で上振れる可能性がある。28年度を最終年度とする新中期計画では売上高2700億円(前期実績2036億3900万円)、経常利益230億円(同189億1400万円)を掲げている。株主還元に積極的な姿勢を示していることも大きな特長で、今期で15期連続の増配となる見通し。株価は6000円台半ばで煮詰まりつつあり、早晩ここを上放れ未踏の7000円台に歩を進める展開が期待できる。 ◎正興電機製作所 <6653> [東証P] 正興電は電力向け受変電設備などの製造販売を主力展開するほか、上下水道設備向け受変電設備にも展開している。IoT技術を駆使したソリューションを強みに制御・情報システムなどで実力をいかんなく発揮している。電力会社では九州電力 <9508> [東証P]、大手重電では日立製作所 <6501> [東証P]を主要納入先に安定した収益基盤を有する。そのなか、最近では建設ラッシュとなっているデータセンターの受配電システム案件獲得に積極的に取り組む。業績は高成長トレンドに磨きがかかっており、25年12月期営業利益は前期比29%増の26億円と大幅ピーク利益更新が続く見通しだが、これでも保守的で一段の増額修正の可能性が高い。株価は年初来高値圏を走るが、中長期視野で2000円台活躍が視野に入る。 ◎大崎電気工業 <6644> [東証P] 大崎電は電力量計の国内トップメーカーで、同社の主力製品であるスマートメーターはデジタルで自動計測したデータをそのまま電力会社に送信する通信機能や、遠隔開閉機能も有しており、東電系企業をはじめ電力業界向けで需要を囲い込んでいる。また、海外大手メーカーを傘下に収め国外での展開にも磨きをかけており、売上高全体の4割強は海外で占める。近年は配電盤のデータセンター向け需要が増勢顕著となっており、今後もにらんで受注活動に力を入れている。26年3月期営業利益は前期比2%増の58億円を予想するがやや保守的。更に27年3月期は次世代スマートメーターの本格寄与で利益成長が急加速する公算大。1000円近辺は来期の業績変化期待を考慮すれば依然買い場といえる。 株探ニュース