テレビCMの救世主、市場拡大が急加速する「運用型テレビ広告」 <株探トップ特集>
投稿:
―NTTドコモによるカルタHD買収で新たなステージ入りの可能性、日テレの運用開始も追い風― ここ数年、急速に広がりを見せる運用型テレビ広告が新たな段階へと向かいそうだ。日本電信電話 <9432> [東証P]子会社のNTTドコモが6月16日の取引終了後、CARTA HOLDINGS <3688> [東証P]の非公開化を目指してTOBを実施すると発表した。カルタHDは子会社に運用型テレビCMプラットフォーム「テレシー」を運営するテレシーを有しており、非通信事業の強化を図るドコモの下、運用型テレビ広告事業についても拡大が期待されている。市場も更なる活性化が予想されるだけに、関連銘柄には注目しておきたい。 ●ネット広告に押されるマスコミ4媒体 電通グループ <4324> [東証P]傘下の電通が今年2月に発表した2024年の日本の総広告費は7兆6730億円で前年比4.9%増となり、3年連続で過去最高を更新した。インターネット広告費が同9.6%増の3兆6517億円と大きく伸長したのに対し新聞、雑誌、ラジオ、テレビメディアのマスコミ4媒体は2兆3363億円と同0.9%増にとどまった。24年は前年比1.5%増の1兆7605億円となったテレビメディア広告費だが、22年、23年と前年割れが続いていた。 ネット広告の規模が初めてマスコミ4媒体を上回ったのは21年のことだが、それ以降その差は開く一方だ。テレビCMは効果が見えにくいというデメリットがあり、効果が見えるネット広告へと宣伝予算を多く割くのは自然な流れといえよう。 ただ、テレビCMが魅力のない広告と判断するのは時期尚早で、消費者の間でブランド認知率を一気に押し上げる効果はまだテレビに分があるとの見方が強い。加えて、近年急速に普及し始めた運用型テレビ広告の登場もこの評価に一役買っているようだ。 ●運用型テレビ広告市場は10倍以上へ 運用型テレビ広告とは、ネット広告などと同様に広告の効果をデータで分析し、より効果が期待できるスポット枠を指定してCM枠を買い付ける広告のこと。テレビCMで重視される視聴率以外にも、検索数やウェブサイトへの流入数、サービス契約の増減などさまざまな面から効果を測定。その検証結果を受けて、より高いコンバージョン(成果)が見込める枠へ集中的に予算を投入して認知率を高めるCMの運用手法だ。従来のテレビCMと異なり、費用対効果を検証できるため、改善策をすぐに実行に移しやすい点などが特徴とされる。 運用型テレビ広告は20年ごろから普及し始めたといわれており、前述のテレシーがデジタルインファクト(東京都文京区)と共同で実施(22年1月~3月)し、22年4月に発表した運用型テレビCM市場調査によると、21年の国内運用型テレビCM市場は115億円(推測)と前回調査(20年11月~12月)時の50億円(推測)から2.3倍に拡大。更に25年には1300億円規模に拡大すると予測している。 ●運用型テレビ広告の関連銘柄 いまだ市場規模が小さいことから上場企業で運用型テレビ広告を手掛ける企業は少ないものの、徐々に関連企業の裾野は広がりつつある。代表的な銘柄をピックアップしてみた。 日本テレビホールディングス <9404> [東証P] 子会社の日本テレビ網は今年3月、運用型地上波テレビCMサービス「スグリー」を開始した。3月に運用を開始したテレビ広告のアドプラットフォーム「Ad Reach MAX」を活用し、地上波テレビCMをオンラインで発注できるWebサービスであり、従来の視聴率ベースでの取引ではなく、インプレッション数を取引通貨として直前発注、ターゲティング、迅速なレポーティングなどを実現したのが特徴。昨年12月のプレオープン後にアカウントの新規登録を開始し、4月1日時点で225社の広告主や広告会社に所属するユーザーから申請を受け付けたという。 サイバーエージェント <4751> [東証P]は、その「スグリー」のプレミアパートナーの認定を受けたことで注目されている。テレビCMの販売は、これまでは一部の大手広告代理店の独壇場とされてきたが、アドテクノロジーの分野ではネット広告大手にも強みがある。「スグリー」の初の広告主は暗号資産(仮想通貨)取引所運営のbitFlyer(東京都港区)だったが、これもサイバーが担当している。また、サイバーのほかにも、セプテーニ・ホールディングス <4293> [東証S]傘下のセプテーニや、デジタルホールディングス <2389> [東証P]傘下のオプトなどもネット広告会社として「スグリー」のプレミアパートナーになっており注目される。 ラクスル <4384> [東証P]は、印刷事業におけるマーケティングの成功ノウハウをもとに、20年4月に国内における運用型テレビCMサービスの先駆けである「ノバセル」を事業化。同事業を含むマーケティングプラットフォーム事業の売上高は全体の1割に満たないものの、既に一定の競争優位性を有しており、大手企業への導入実績も多い。同社全体としても21年7月期以降、順調に売上高・営業利益を伸ばしており、業績拡大期待も高い。 また、前述のテレシーを傘下に有するカルタHDと、買収により同社をグループ傘下に収めるNTTにも注目したい。テレシーは運用型テレビCMの戦略立案からクリエイティブ、メディア、分析・改善提案までのフルサービスを一気通貫で提供しており、電通が保有するテレビCMの豊富なナレッジやデータにカルタHDの持つデジタルマーケティングのテクノロジーを組み合わせることで導入実績を積み上げている。また、TVer広告やタクシー広告、エレベーター広告なども手掛けている。 もちろん、広告大手も運用型テレビCMサービスを手掛けており、電通グループや博報堂DYホールディングス <2433> [東証P]などにも要注目。また、メタリアル <6182> [東証G]は5月、テレビ局営業担当者向けCM効果測定・広告戦略レポート作成AI「Metareal コマーシャルアドバタイジング」の提供を開始した。スポンサーへの提案力を高めたい営業担当者のためのツールで、CM効果をデータで可視化し、説得力あるレポートと出稿提案をスピーディーに仕上げることができるとしており、これも関連銘柄といえよう。 株探ニュース