大手企業のリストラ加速、ピンチこそ商機「転職関連株」に上昇機運 <株探トップ特集>

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コラム

―早期・希望退職募集の対象人員数はリーマン・ショック上回るペース、人材流動化も加速―

 大手企業による人員削減を含むリストラ策が相次ぎ発表されている。5月もパナソニック ホールディングス <6752> [東証P]が9日、グループ経営改革の一環として国内外で主に2025年度に1万人規模の人員削減計画を発表。日産自動車 <7201> [東証P]も13日に、国内外7工場の閉鎖と24年度から27年度にかけて2万人の人員削減を行うと発表した。

 上場企業が人員削減を行う際には、あわせて再就職支援を行うケースが多い。また、多くの人材が離職することもあり、転職支援 企業のビジネスチャンスにつながる。関連銘柄には好業績企業も多く要注目だろう。

●大手企業が相次ぎ人員削減を発表

 東京商工リサーチ(東京都千代田区)によると、今年1月から5月15日までに「早期・希望退職募集」が判明した上場企業は前年同期比8社減の19社だったものの、対象人員は8711人と前年同期の4654人に比べて9割近く増加した。同社によると、日産自は国内の募集人数が不明のため人数の集計に含んでいないとしており、これを含めると更に対象人員は膨らむことになる。

 日産自の発表以降も、5月15日にはジャパンディスプレイ <6740> [東証P]が国内で1500人程度の希望退職者の募集を発表。協和キリン <4151> [東証P]やマブチモーター <6592> [東証P]も希望退職者の募集を発表している。

 東京商工リサーチによると、この状況が続くと25年の「早期・希望退職募集」は2000年以降、最多だった09年の2万2950人を上回る可能性も出ているとしている。09年はリーマン・ショック直後であり、当時と比べて経済環境は悪くないものの、企業が人員削減を行っている現状が見てとれる。

●利用が進む再就職支援サービス

 大手企業が人員削減を行うのは、業績の改善や中長期的な競争力の強化を図るためであり、余力があるうちに先手を打つ形で人員の適正化を進めようとするケースが多い。そうした大手企業を中心に、希望退職を募る際にあわせて発表されるのが、特別退職金の支給や再就職支援サービスの提供だ。

 そのうち再就職支援サービスとは、会社都合で人員削減を行う際、退職対象者が次の就職先を見つけられるように支援するサービス。提供する企業は企業からの依頼を受けて、退職対象者のキャリアプラン設計のサポートや再就職の斡旋などを行う。退職対象者にとってメリットがあるだけではなく、企業にとっても円滑な人員整理や法的リスクの低減などのメリットがあり、そのため活用が広がっている。

●転職支援サービス業界も活性化へ

 再就職支援サービスは法人が顧客だが、一方、企業が再就職支援を導入していない場合や、すぐにでも再就職したい場合などで、個人が顧客となり利用されるのが転職支援サービスだ。

 ひと昔前に比べて転職を経験する人が増えているとはいえ、終身雇用制度が根強く残る日本では、転職者数の割合は多くはない。総務省統計局が5月13日に発表した労働力調査(25年1-3月期平均)によると、就業者6764万人のうち、転職者数は328万人で前年同期に比べて23万人の増加となったものの、就業者に占める転職者の割合(転職者比率)は4.8%(前年同期比0.3ポイント増)にとどまる。転職者比率はここ数年5%前後で推移しており、同サービスの成長余地は大きい。

 人口減少を背景に、既存事業の潜在成長率の伸び悩みが予想されるなか、今後も人材の流動化は更に進むとみられる。更なる転職市場の活発化が予想され、関連企業の商機も拡大しそうだ。

●再就職・転職支援サービスの関連銘柄は

 再就職支援サービスを提供するのは、パソナグループ <2168> [東証P]やリクルートホールディングス <6098> [東証P]など人材サービス大手が中心だ。特にパソナGでは「キャリア支援サービス」として1984年から再就職支援サービスを提供。これまでに約6000社の再就職支援をサポートしている。

 一方、転職支援を提供する企業も、前述の人材大手をはじめ多い。

 学情 <2301> [東証P]は、20歳代向け転職サイト「Re就活」や、30歳代に特化したダイレクトリクルーティングサイト「Re就活30」を運営するほか、転職イベントなどを開催している。25年10月期第1四半期単独決算は営業損益が4億200万円の赤字(前年同期5700万円の赤字)と赤字幅が拡大したものの、会社側では新卒採用の早期化・難化により、新たな季節要因が発生したためとしている。足もとの受注は復調傾向にあるとして通期では営業利益30億円(前期比12.9%増)の従来見通しを据え置いている。

 キャリアデザインセンター <2410> [東証P]は“ひとつ上を目指す人のキャリア転職サイト”「Type」の運営を主力に女性のための転職サイトの運営やダイレクトリクルーティング、転職フェアの開催、人材派遣・紹介などの事業を行っている。25年9月期上期単独決算は営業利益が6億3000万円(前年同期比8.2%減)と減益となったが、期初計画をやや上回って推移していることに加えて、外部環境や季節性から下期は上期より利益が増加する想定であるとして、通期営業利益予想は17億6200万円(前期比23.0%増)の従来見通しを据え置いている。

 ビジョナル <4194> [東証P]は、即戦力人材に特化した会員制転職サイト「ビズリーチ」の運営を主力に人財活用システムや採用管理システム、勤怠管理システムなどさまざまなDXツールを提供している。足もとでプロフェッショナル人材への企業の採用ニーズや求職者の動向は好調で、25年7月期上期連結決算で営業利益は102億2400万円(前年同期比4.4%増)と増益で着地。「ビズリーチ」は下期も日系企業を中心に伸長が見込めるとして、これを牽引役に通期営業利益191億5000万円(前期比7.4%増)と連続最高益更新を見込む。

 ワンキャリア <4377> [東証G]は、就活サイト「ONE CAREER」を中心に、転職サイト「ONE CAREER PLUS」などを運営する。これまで可視化されていなかった「キャリアデータ」を活用しているのが特徴で、例えば転職サイトでは「どこからどこへ転職したか」「なぜ転職をしたのか」「他にどんな企業を検討したか」などのデータを公開することで、求職者がキャリア選択できるよう支援している。25年12月期第1四半期単独決算では、営業利益は3億3000万円(前年同期比52.4%増)と大幅増益で着地。通期でも同18億5700万円(前期比43.3%増)を見込む。

 オープンワーク <5139> [東証G]は、国内最大級の社員クチコミ数を有する、転職・就職のための情報サイト「OpenWork」の運営が主な事業。企業向けダイレクトリクルーティングサービス「OpenWorkリクルーティング」も運営することで事業拡大を図っている。25年12月期第1四半期単独決算は、増収効果に加えて広告宣伝費の抑制もあり、営業利益は3億2400万円(前年同期比4.6倍)と大幅増益で着地。通期も同11億3000万円(前期比10.1%増)と2ケタ増益を見込む。

 アトラエ <6194> [東証P]は、IT業界に強い転職サイト「Green」の運営を主力に、組織力向上プラットフォーム「Wevox」、ビジネス版マッチングアプリ「Yenta」などを展開。「Green」は、業界初の成功報酬型求人メディアとして独自のポジションを確立している。25年9月期上期単独決算は、営業利益が6億8600万円で着地。今期から単独決算に移行したため前年同期との単純比較はできないものの、前年同期の連結営業利益との比較では25.2%増となった。通期では同21億円(前期比26.5%増)を見込む。

 フォーラムエンジニアリング <7088> [東証P]は、理工系学部の学生がエンジニア職に就き、その長く充実したキャリアを終えるまでの4つのサービス(新卒、研修、派遣、転職)を展開しており、そのうち機械・電気系エンジニアの転職を支援する「コグナビ転職」は、就職支援サービス、エンジニア派遣サービスに次ぐ第3の柱に育成する方針だ。25年3月期連結決算で、営業利益は42億100万円(前の期比38.7%増)で着地。26年3月期は同50億円(前期比19.0%増)を見込む。また、年間配当予想を前期比9円50銭増の62円50銭としている。

 このほか、アルバイト・パートの求人サイト「バイトル」を主力に、正社員への就職・転職支援サイト「バイトルNEXT」などを運営し、好配当企業としても知られるディップ <2379> [東証P]や、投資強化で転職サイト「エン転職」の再成長が期待されるエン・ジャパン <4849> [東証P]、社員及びフリーランスのプロフェッショナル人材によるコンサルティングサービスを主力に、プロ人材の転職支援なども行うINTLOOP <9556> [東証G]などにも注目したい。

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