【杉村富生の短期相場観測】 ─好業績、思惑内包、強い銘柄を攻める!
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「好業績、思惑内包、強い銘柄を攻める!」 ●短期的視点と長期的な視点は違う! 古来、「(おごるなよ)丸い月(満月)もただ一夜」という。これは相場格言として使われている。5月13日に、日経平均株価は3万8494円のザラ場高値まで上昇した。4月7日の瞬間安値3万0792円比で7702円幅、25%の急騰劇を演じたことになる。想定以上の反発力である。当然、マーケットには一転して強気の声があふれる。 しかし、ここは冷静さが必要だ。この日(13日)は満月だった。動物の精神は高揚する。オオカミは月に向かって吠える。VIX(恐怖)指数は18ポイント台に低下、為替は1ドル=146~147円の円安である。加えて、米中関税交渉の決着(休戦?)だ。マーケットの混乱(株価急落、ドル不安→金利上昇)がトランプ政権の政策転換を誘発した、と思う。 ただ、トランプ関税が消えたわけではない。日本など多くの国々との交渉はこれからだ。特に、日本は近く3回目の交渉に臨むが、難航が予想される。対中国は関税率を30%(従来は145%)に引き下げた。強気姿勢の中国に押し切られた格好である。トランプ政権は同盟国に厳しい。確かに、状況は3月下旬~4月初旬と逆のパターンになっている。 4月初旬にはVIX指数が50ポイント台に乗せ、日経平均株価の25日移動平均線とのマイナスカイリ率が15%を超えた。筆者はマイナスカイリ率の異常値は「富の源泉」と主張している。こんな局面は断固、買いになる。それが5月13日はプラス9%だった。ちょっと、上昇ピッチが速すぎる。当面は森(インデックス)を見ず、各論勝負の展開となろう。 ●足もとは減益予想だが、増益に転換する! 一方、決算発表はヤマ場を越えた。円高圧力の存在に加え、トランプ関税の行方が不透明とあって、自動車・同部品業界を中心に、2026年3月期の見通しは概ね慎重だ。「非開示」の企業も多い。この場合、日経平均株価の1株利益予想の算出に際し、とりあえず「ゼロ査定」となる。 実際、15日の時点では日経平均株価の実績ベースの1株利益が2458円なのに対し、予想ベースは2318円である。5.7%減益だ。企業業績が減益になるのは久々のこと。これが投資家心理を冷やすのは間違いない。この数字は、大手証券のトランプ関税が企業業績に与える影響のレポート「6~7%減益が不可避」と合致する。 もちろん、この相場見通しは短期的な視点である。日経平均株価の1株利益は「ゼロ査定」の企業について、日本経済新聞社が独自の数字を算出、修正される。この結果、2~3週間後には増益転換するだろう。すなわち、5月15日は予想ベースのPERが16.29倍、実績ベースが15.35倍だったが、予想ベースのPERは14~15倍に低下し、割高感は消える。 それに、4月に入って東証改革の流れを評価、外国人が大量買い越しをみせているように、日本企業のガバナンス改革は着実に進展している。自社株買いの急増、事業再編、親子上場の是正、増配などの動きは衰える気配がない。そもそも、日本株は出遅れている。トランプ関税の猶予期限は7月9日だ。それまでには何とかなるだろう。 物色面はどうか。やはり、引き続いて好業績(最高益更新など)銘柄、株価が強い(上場来の高値圏)銘柄、再編の思惑(M&A、TOB、MBOなど)を秘めた銘柄などがターゲットになろう。好業績銘柄ではUTグループ <2146> [東証P]、FFRIセキュリティ <3692> [東証G]、ロココ <5868> [東証S]などに注目できる。 値動き抜群の強い銘柄では社会インフラ(橋梁、電力鉄塔など)のメンテナンスを手掛けるトヨコー <341A> [東証G] 、AI(人工知能)を駆使し、スキンケア商品、美容家電を企画・開発しているAiロボティクス <247A> [東証G]、情報セキュリティのグローバルセキュリティエキスパート <4417> [東証G]などに妙味があろう。 思惑銘柄では好業績、かつ親子上場のSCSK <9719> [東証P]、GMOグループ再編の“核”になっているGMOインターネット <4784> [東証P]、アクティビストが介入中のフジ・メディア・ホールディングス <4676> [東証P]、青山財産ネットワークス <8929> [東証S]などが引き続いて狙い目である。 2025年5月16日 記 株探ニュース