米国関税どこ吹く風、デジタルシフト大潮流に乗る「DX関連」5選 <株探トップ特集>

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コラム

―大手各社は今期好調見通し、NTTデータ提携企業や「ねとらぼ」運営会社など中小型株を選抜―

 デジタルトランスフォーメーション(DX)関連企業の決算が好調だ。今週で3月期企業を中心とする決算発表シーズンが一段落したが、トランプ関税の影響が懸念される製造業はやはり苦戦が目立った。特に今期減益、あるいは未定の予想が相次いだ自動車セクターは目を引く。一方、関税の影響が少ない内需・ディフェンシブ株は比較的底堅く、今後の物色を考える上ではこの辺りの銘柄群が引き続き候補になりそうだ。こうしたなか、国内でますます広がりをみせるデジタルシフトの流れを捉え、ストックビジネスの側面があり景気耐性も併せ持つDX関連株に改めて注目したい。

●「DXのモメンタム変わらず」

 富士通 <6702> [東証P]が先月発表した25年3月期連結決算は、営業利益が前の期比78%増の2650億8900万円となった。DX支援事業「ユーバンス」が伸びたほか、モダナイゼーション(システム刷新)案件が好調だった。あわせて開示した26年3月期も前期比36%増の3600億円と高成長を予想。3期ぶりに営業最高益の達成を目指す。配当も連続増配を見込んだ。同じく先月決算を発表したNEC <6701> [東証P]も25年3月期は営業37%増益(特定項目を控除したNon-GAAPベース)で着地。昨年開始したDX支援事業「ブルーステラ」は堅調な立ち上がりをみせた。続く26年3月期も利益成長継続の見通しで、こちらも連続増配(株式分割考慮後)を見込んだ。

 DX支援事業といえば「ルマーダ」で知られる日立製作所 <6501> [東証P]がある。同事業は国内の堅調なデジタル需要を捉え拡大を続けており、全体の業績を牽引。26年3月期は5期連続の営業増益を見込む。このほかITサービス各社の26年3月期の営業利益予想は、日本電信電話 <9432> [東証P]からTOBを受けたNTTデータグループ <9613> [東証P]が61%増益で6期連続のプラスを計画、SCSK <9719> [東証P]は29%増益で連続最高益を見込む。オービック <4684> [東証P]も長期増益トレンドを続け最高益を更新する見通しだ。

 米政権が打ち出す相互関税・品目別関税を巡る先行き不安が依然拭えないなか、株式市場ではこの影響を大きく受けるセクターと、そうでないセクターとで明暗が分かれている。DX関連株はどうか。各社からは「今の段階で明確にプロジェクトが止まる、あるいは大きく予算を絞り込まれるところまでは聞こえてきていない」(富士通、決算説明会質疑応答)、「現時点でプロジェクトを遅延させるなどの具体的な話はない」(NEC、決算説明会質疑応答)という声も聞かれ、「DXのモメンタムは中長期で変わらない見通し」(日立、決算説明会資料)とのコメントも出ている。

●好業績はもちろん配当面で妙味ある銘柄も

 ABEJA <5574> [東証G]はビジネスを自動化するAIプラットフォームを提供。国産生成AI開発事業「GENIAC(ジーニアック)」の採択事業者の1社であることで知られる。同社の株価をみると、2年前の上場直後に一時1万円台まで水準を切り上げた後、費用先行で減益となるなか下落基調に。昨年末に上場来安値(1527円)をつけたが、今年に入り潮目が変わった。四半期決算が好調で、先月の上期決算発表時には通期予想を一転増益に上方修正。生成AI案件の寄与を見込んでいる。

 インフォマート <2492> [東証P]は帳票業務をデジタル化する「BtoBプラットフォーム」を運営する。請求書や契約書、受発注など幅広い業務に対応し、利用企業数は100万社以上に及ぶ。主要顧客は外食チェーンやホテル、旅館といったフードサービス業界だ。同業界は人手不足対応でデジタル化が急務となっており、この旺盛な需要を捉えることができる。第1四半期の営業利益は前年同期比2.5倍の5億8000万円と急拡大。3期連続の増益を目指す通期計画(23億円)に対する進捗は順調だ。

 テラスカイ <3915> [東証P]はクラウドシステムの構築や導入支援、保守を手掛ける。米IT大手セールスフォースとの提携関係を生かし、金融機関や自動車メーカーをはじめ多様な業種・業態の顧客へサービスを提供している。昨年4月にNTTデータグループ傘下のNTTデータと資本・業務提携を結び、国内外での更なる事業拡大に向け取り組みを推進。前期(25年2月期)に営業2.8倍増益で最高益更新と飛躍を遂げ、今期(26年2月期)も26%増益と成長をキープする見込みだ。

 アイティメディア <2148> [東証P]は「ねとらぼ」で知られるニュースサイト運営会社だが、主力はITに関する法人向けサイトの運営と、そのサイトを通じた広告商品の販売やマーケティングソリューションの提供などだ。イベント開催も手掛け、テクノロジー製品を買いたい企業と売りたい企業をつなぐ。先行投資と収益確保の両立を図り、26年3月期は3期ぶり営業増益の見通し。株主還元にも手厚く、29年3月期まで配当性向70%以上の目標を掲げる。足もとの配当利回りは6%超だ。

 アセンテック <3565> [東証S]は自宅の端末で職場と同じ作業ができる「仮想デスクトップ」製品を展開。セキュリティー関連製品も手掛け、デジタル化とそれに伴い重要性が増すセキュリティー対策の2つのニーズを捉える。26年1月期は連続最高益・増配を計画。株価はコロナ特需を背景にDX関連株物色が盛り上がった2020年秋に上場来高値(2534円)をつけ、その後低迷を続けていたが、ようやく好業績を織り込む動きが顕在化。昨年後半から上げ足を速め、足もと1300円前後で推移している。

株探ニュース

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