「防災関連株」が獅子奮迅の活躍へ、防災庁スタートをにらみ出動前夜 <株探トップ特集>
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―石破首相の目玉政策いよいよ始動、26年度中の設置目指し6月にも概要判明― 石破茂首相肝いりの「防災庁」について、政府は2026年度中の設置を目指し組織の概要を来月にも示す方針だ。極めて高い確率で発生するといわれる南海トラフ地震や首都直下型地震への備えに加え、頻発・巨大化する自然災害などに対応する構えだ。「防災関連株」のすそ野は広く、株式市場でもさまざまな局面で折に触れ取り上げられてきた。防災庁の概要が明らかになる6月を前に、防災分野で活躍期待が高まる関連株を幅広い視点でチェックした。 ●「世界一の防災大国にしたい」 石破首相は昨年12月、防災推進国民会議を開催し「わが国を世界一の防災大国にしたい」と発言。26年度中の防災庁設置に向けた準備を着実に進めるよう指示を出し、「防災立国」構築に向けた姿勢を強く打ち出している。災害対応の司令塔となる防災庁の設置は、石破首相の目玉政策のひとつでもあり、株式市場でも昨年秋の自民党総裁選辺りから動意づいている。そして先月中旬には、石破首相が防災庁の設置に向けて「6月におおむねの姿を示したい」としており、株式市場でも再び関心を集めそうな気配だ。 株式市場は、いわゆるトランプ関税の影響を受け波乱展開に陥ったが、ここにきては次第に落ち着きを見せ始めている。とはいえ、気まぐれともいえるトランプ砲なだけに、関税引き上げという無茶ぶりな砲弾が、いつどこに飛んでくるかは予想もつかない状況が続いている。4月には、トランプ大統領の関税政策に影響を受けにくいとされる銘柄や、再生医療関連に位置付けられるバイオベンチャーなどに思惑買いが先行した。防災関連株もまた、国土の強靱化という日本固有の事情が背景にあるだけに、比較的トランプ関税に翻弄されにくいという側面を持っている。防災庁の概要発表が迫るなか、関連株の値動きには目を配っておきたい。 ●雄大なすそ野広がる関連株 防災関連には、雄大なすそ野が広がっている。「事前防災」の観点からは、まずは災害に強い国づくりが重要となる。株式市場での一大テーマといえる「国土強靱化」がまさにそれで、関連する銘柄も多岐にわたることになる。建設では大手ゼネコンや、のり面吹き付け工事大手で地盤改良・薬液注入工事に強みを持つライト工業 <1926> [東証P]、地盤改良と消波ブロック大手の不動テトラ <1813> [東証P]、さまざま河川護岸材を扱う前田工繊 <7821> [東証P]などに関心が向かいやすい。 また、昨年8月に「南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)」が発表された際には、地盤ネットホールディングス <6072> [東証G]、応用地質 <9755> [東証P]、SAAFホールディングス <1447> [東証G]といった地質調査や改良に絡む銘柄に投資家の視線が集まった。更に、可搬型発電機を手掛けるデンヨー <6517> [東証P]、コンクリート2次製品のヤマックス <5285> [東証S]やヤマウホールディングス <5284> [東証S]などにも買いの矛先が向かう場面があった。 ●WNIウェザ、防災分野で急速に存在感 こうした“防災常連株”の一角では、ウェザーニューズ <4825> [東証P]に改めてスポットを当ててみたい。同社は、民間気象情報で世界トップクラスだが、気象事業とつながりの深い防災分野でも急速に存在感を高めている。1月には、静岡県と全国で初めて「防災・減災に関する包括連携協定」を締結。直近の4月だけでも3日には「災害・緊急時等に活用可能な小型無人機を含めた運航安全管理技術」に宇宙航空研究開発機構(JAXA)などと共同で応募し、採択されたと発表。また、同月22日には福岡県の民放4局とNHKが大地震など大規模災害における航空取材の連携のため、WNIウェザのヘリコプター向け運航管理システムを導入したと発表するなど活躍領域を大きく広げている。業績も好調で、25年5月期の連結営業利益は前期比28.4%増の42億円と9期ぶりの最高益更新を計画。成長ロードを快走する同社からは目が離せない。 ●防災ソリューションでエコモット、TOA 防災関連株では、中核的存在の建設や土木株を中心に関心が集まりやすい。しかし、最先端のIoTソリューションを活用した防災・減災に対する新たな取り組みも活発化しており、投資家の注目度も高まっている。 エコモット <3987> [東証G]は4月30日、資本・業務提携先の積水樹脂 <4212> [東証P]と共同で、異常気象や気象災害時に道路管理・監視業務の省人化・省力化を実現するWebアプリケーションサービス「ICOT-LINK」を開発したと発表。一括遠隔監視や、計測値と連動した遠隔制御が可能となり、災害時の道路管理・監視業務の省人化・省力化が図れるという。エコモットは災害検知ソリューションを手掛けており、これまでも豊富なセンシングノウハウで災害対策に貢献してきた。4月14日に発表した2月中間期連結業績では、営業利益が4400万円(前年同期300万円)となり、すでに通期計画(3300万円)を超過している。株価は小型株特有ともいえるボラティリティの高さがあり、3月も急速人気化し672円まで買われ年初来高値を更新するなど、短期間で株価を倍化させ投資家の視線を集める場面があった。現在は、調整一巡感が漂うなか400円を挟みもみ合う展開。 放送・音響システム大手のTOA <6809> [東証P]は、長年培ってきた「音の技術」を活用し防災ソリューションを手掛けることで関連銘柄の一角としての関心度も高い。同社は、連休前の2日取引終了後、26年3月期連結業績予想について営業利益を前期比25.4%増の45億円と発表。営業利益は、12期ぶりに最高益を更新する見込みだ。これを受けて、きょうの株価は急伸し、一気に年初来高値を更新した。神戸市に本社を置く同社だが、阪神・淡路大震災から節目の30年となるなか、1月には「神戸市帰宅困難者対策訓練」に協力し、スピーカー搭載ドローンによる屋外拡声ソリューションの飛行・展示を実施した。 ●モリタHDは快走、ホーチキ、いであ、能美防災も 消防ポンプ車最大手のモリタホールディングス <6455> [東証P]が、4月25日に発表した25年3月期の連結営業利益は前の期比45.3%増の137億3300万円に拡大。続く26年3月期も前期比0.5%増ながら138億円を見込み、連続での最高益更新を計画している。消防車両事業が復調しており、防災事業は消火器の売り上げが堅調に推移。加えて、消火設備の大型工事案件などが順調に進捗した。大阪・関西万博でも、AIを用いた現場指揮支援システムや日本初の実運用されるEV消防ポンプ自動車など、最新鋭の消防車両及び機材を協賛している。海外事業の育成を図り、グローバルな総合防災ソリューション企業を目指す。また、特装車では極東開発工業 <7226> [東証P]にも活躍期待が募る。同社は、安全で迅速に消防作業を支援する「消防用省力装置」や、さまざまな道路維持・防災関連車両を手掛けている。 防災事業を主力に展開し火災報知設備や消火設備、法人向けの防災システムを手掛けるホーチキ <6745> [東証P]からも目が離せない。株価は、年初来高値付近の2700円手前で跳ね返される場面が繰り返されているが、この水準を抜ければ新展開も期待できそうだ。そのほかでは、建設コンサルと環境コンサルを主体とし、厳しい受注競争が続くなか防災分野での活躍領域を広げているいであ <9768> [東証S]にも期待が膨らむ。昨年12月にはブルーイノベーション <5597> [東証G]と戦略的業務提携に関する覚書(MOU)を締結したと発表。両社はドローンやロボティクス技術を活用した新たなソリューションの開発を進め、公共インフラ維持管理の効率化や災害時対応力の向上を目指す。また、セコム <9735> [東証P]傘下の防災機器大手・能美防災 <6744> [東証P]にも妙味がありそうだ。豊富な受注残高を背景に、成長余力も十分。 ●面白い存在のイトーキ 変わったところでは、オフィス家具大手のイトーキ <7972> [東証P]が面白い存在だ。同社は4月、東京国立博物館へ23年から継続納入している高機能展示ケース「Artivista(アルティビスタ)」を新たに納入したと発表。同ケースは、展示品の鑑賞を妨げない低反射コーティング高透過合わせガラスを採用しており、仏像をはじめとした文化財の繊細な表情や佇まいを、より美しく、ありのままに鑑賞できるという。ポイントは、地震対策として滑り免震機構も装備している点。巨大地震による脅威が叫ばれる日本列島だが、人命とともに文化財の保護は大きな命題となるだけに、今後ニーズが更に拡大しそうだ。同社は今月2日取引終了後、25年12月期第1四半期(1~3月)の連結営業利益が、前年同期比22.9%増の74億2200万円で着地したと発表。通期計画(115億円)に対する進捗率は約65%に達している。好業績発表を受け、株価は新値街道をまい進している。 株探ニュース