消費税減税への扉が開く、「無双の小売セクター」最強布陣6銘柄精選 <株探トップ特集>
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―内需の勝ち組銘柄に再び脚光、空前のゲームチェンジで浮上する株を追う― 週末25日の東京株式市場は日経平均株価が666円高と大幅高で3日続伸。フシ目の3万5000円台後半まで一気に水準を切り上げるとともに、上値抵抗ラインとして意識された25日移動平均線を完全ブレークする形で上げ足を強めた。これまでトランプ米政権が打ち出す高関税政策に世界は振り回され、とりわけ直近は米国と中国の関税合戦による先行き不透明感から、株式市場にとってはかなりアゲインストな環境が意識されていた。しかし直近では、先鋭化の一途をたどっていた米中対立が足もとで両国ともに姿勢をやや軟化させる動きが観測され、マーケットでも買い戻しの動きが急速に広がってきた。この日は 半導体関連株へのショートカバーが加速し、日経平均を押し上げる格好となっている。 ただし、急速な戻りを演じるなかで半導体関連株は目先上昇一服感も出そうである。実態面では引き続き過剰なAI投資の反動が懸念される状況で、半導体セクターはファンダメンタルズ面から一段の上値を買い進むにはやや時期尚早の感がある。決算発表が本格化するなか、今期業績についてのガイダンスリスクもつきまとう。また、トランプ米大統領の発言一つで景色が一変する外需株は、機関投資家目線でも実需の買いは入れにくい。 ●小売関連株が再び仕込み場を提供 ここは、いったん上げ足の止まっている内需株に再び視点を合わせるところで、特に インバウンド特需や政策恩恵の見込まれる小売セクターに照準を合わせてみたい。2020年のコロナショックの反動でリベンジ消費が喚起されたが、最近はそれが一巡する一方で川上インフレによるコスト高によって、小売セクターは同じ業界内でも跛行色が強まった。インバウンド消費はうなぎ登りだが、その影響によってインフレ圧力が助長された面もあり、これにうまく対応できた企業と、そうではない企業とで格差が生まれている。勝ち組に位置しながら、依然として株価の水準訂正途上にある銘柄にスポットライトを当てたい。 今は何といっても物価高が顕著で、コメの高騰などは社会問題化している。全国消費者物価指数(CPI)の先行指標として注目される4月の東京都区部CPIは総合指数で3.4%の上昇となり、23年4月以来の高い伸び率となった。プラスは44カ月連続となる。いうまでもなく7月には参院選を控えている。石破政権としても早急に対応する必要に迫られている。政策をしっかりと国民に指し示すことができなければ、今の内閣が事実上レイムダック化してしまうことが避けられないからだ。 ●党内でもにわかに高まる消費税減税シナリオ 既に石破政権は国内産業を保護するための資金繰り支援や雇用維持などの対策をまとめた「緊急対応パッケージ」を決定し、躊躇なく追加的に必要な対応を行っていく構えをみせているが、その内訳に新鮮味はなく、当然ながら国民目線ではそれでは不十分という見方が強まるはずである。国内消費を喚起する方策としては、年収の壁引き上げや、ガソリン価格の引き下げ、電気・ガス料金支援などの採択を行っているが、現状で国内のインフレ圧力を拭い去るには到底至らない。石破政権もこのままでは、7月の参院選でかなり大きな痛手を被る可能性が高い。そうしたなか、にわかに浮上しているのが、これまでは聖域でもあった消費税の減税である。 これには伏線があって、物価高対策として消費減税を求める声が与野党に広がっていた。以前から、れいわ新選組は消費税について減税ではなく「廃止」を求めているが、日本維新の会や国民民主党なども減税、もしくはゼロ(食品について)を訴えている。立憲民主党も野田代表がここ動きを活発化させていた。24日の「次の内閣(ネクスト・キャビネット)」の会議で、消費税率の一律5%引き下げや食品の税率ゼロ(期間限定)にするといった案についての検討を行ったことが伝えられた。そして25日の執行役員会では、夏の参院選公約に、26年以降に食料品の消費税率をゼロとすることを盛り込むことを決定している。 ●トランプ関税を交えた政治的な思惑も渦巻く 石破政権も音無しの構えではいられない。24日に参院幹部が森山幹事長らと面会したが、自民党所属の参院議員に対して実施したヒアリングで約8割の議員が消費税減税を要望したことが伝えられた。特に食料品について税率引き下げを要望する声が強く、2年程度の無税化を時限的に実施することへの主張が多くみられたという。もっとも、ジャンルを限定した中途半端なものでは、おそらく国民の支持を得ることは難しい可能性があり、そうなると総論としての消費税の引き下げ要請は今後社会的に更に強まっていくことが予想される。 そして一部では、トランプ関税が今回の消費税減税シナリオに影響を与えているという見方もある。トランプ大統領は「消費税も関税とみなす」という発言を行い、世界の耳目を驚かせたが、トランプ氏からすれば日本に課題を突き付けたともいえる。今回の消費減税に向けた思惑は、意外な方向からその外堀が埋められていた可能性がある。 こうした政治的な背景も念頭に置いたうえで、株式市場でもテーマ買いの動きが大きな波となって小売業態をはじめとする消費関連セクターに押し寄せそうだ。今回のトップ特集では、ここから注目度が改めて高まりそうな小売関連の最強フォーメーションとして6銘柄を選抜した。 ●改めて活躍の舞台に立つ小売関連有望6銘柄 ◎エービーシー・マート <2670> [東証P] ABCマートは靴専門店の業界最大手で全国チェーン展開を図っており、インバウンド消費を高水準に取り込むことに成功している。昨今のスニーカーブームも追い風となって、都心部の大型店を中心に品揃えを強化したスニーカーやサンダルが消費者ニーズを捉えている。既存店売り上げが増勢基調にあるほか、新規出店戦略も軌道に乗っている状況だ。他方、海外事業の縮小で利益率が改善しており、客単価の上昇も寄与していることでトップライン、営業利益ともに過去最高更新トレンドが続く公算が大きい。新規立ち上げでシナジーが期待されるアパレル事業は、春物商品が好調で業績押し上げに貢献している。26年2月期営業利益は前期比2%増の640億円予想だが保守的で上振れ余地がありそうだ。 株価は収益が過去最高水準にありながら昨年8月暴落時以来の安値水準に位置しており、安値買いの好機とみたい。株価指標面からもPERなどに割高感は乏しい。滞留出来高の多い2800円どころをブレークすれば上値は軽く、中勢3000円台復帰が視界に入る。 ◎ベルーナ <9997> [東証P] ベルーナはアパレルを中心とするカタログ通販の大手だが、ネット経由の販売も展開する。女性層を主要顧客としており、アパレル以外では生活雑貨、家具、化粧品のほか、呉服関連事業など幅広い商品領域を手掛ける。また、通販の顧客向けファイナンスや不動産流動化(再生・開発)ビジネスなどでも実績を重ねる。北海道エリアを中心にホテル運営に注力し、サービスの付加価値向上などでインバウンド需要も取り込み、業績に反映させている。25年3月期営業利益は前の期比18%増の115億円予想と2ケタ伸長を確保する見込みだが、続く26年3月期も収益成長トレンドに変化はなさそうだ。 株価はここ急速に上値を指向し21年6月以来約3年10カ月ぶりの高値水準に浮上しているが、依然としてPBRは0.6倍台と割安感が強く、1000円台乗せから一段と上値指向を強めそうだ。増配など株主還元に積極的に取り組み、前期の年間配当は前の期実績比8円50銭の大幅上乗せとなる29円を計画、今期も増配の可能性がある。 ◎サツドラホールディングス <3544> [東証S] サツドラHDは北海道を地盤に店舗展開するドラッグストアで低価格戦略を推進し、調剤併設型店舗のほか、食品や日用品なども取り扱い幅広い顧客ニーズを獲得。ドラッグストアという業態にこだわらず、地域や生活に密着した総合的な店舗戦略を志向している。北海道は訪日外国人観光客にも人気の地であり、同社は訪日客需要に対応した品揃えと、店舗によっては免税カウンターの完備など、インバウンド消費の囲い込みに傾注している。業績は好調を極めており、24年5月期は営業利益が前の期比で4.6倍化しピーク利益を更新したが、25年5月期も増益基調は不変だ。会社側では前期比1%増の14億円を見込むがかなり保守的。第3四半期時点で前年同期比40%増の12億8800万円と大幅な伸びを達成しており、通期見通しも進捗率を考慮して大きく上乗せされる公算が大きい。 株価は800円台後半から900円にかけてのもみ合いだが、早晩ここを上放れ昨年3月中旬につけた上場来高値985円奪回を想定。今期はトップラインが初の1000億円台乗せを見込んでおり、株価も4ケタ大台での青空圏飛翔が期待される。 ◎サイゼリヤ <7581> [東証P] サイゼリヤは首都圏を中心に低価格のイタリアンレストランを展開する。自社工場で食材を生産し、加工調理に至るまで一気通貫で自社管理することを特長としており、アジアなどを中心に海外事業にも力を入れている。コメ高騰などのコスト増は逆風ながら、値ごろ感を武器に顧客獲得が進んでおり、商品それぞれの価格が安いことから注文点数も多くなりやすく、増収効果をもたらしている。25年8月期の業績予想について、売上高は従来見通しの2536億円から2587億円(前期比15%増)に増額した一方、コスト負担の高まりで営業利益は166億円から155億円(同4%増)に減額を余儀なくされた。ただ、過去最高更新見通しにあることに変わりはない。 株価はソーサーボトム形成後に浮上局面に移行している。5日・25日移動平均線のゴールデンクロス示現を経て戻り足を更に強めることが見込まれる。4400円近辺は累積売買代金が多く一つのフシとなっているが、ここをブレークすれば株式需給面でも値運びが軽くなる。5000円台復帰を目指す展開に。 ◎ハードオフコーポレーション <2674> [東証P] ハードオフはリユース品の買い取り・販売を行う総合リユース事業を展開している。パソコンや楽器・オーディオなどは「ハードオフ」で、アパレルや雑貨、家具・家電については「オフハウス」で扱うといったように棲み分けている。このほか、フィギュアやゲーム、ホビー関連など多岐にわたる商品ジャンルを網羅していることも特徴。出店戦略にも積極的で売上高は2ケタ伸長を続けているが、一方で営業利益の伸びも顕著であり、25年3月期は前の期比17%増の32億7000万円を見込んでいる。国内だけでなく海外事業にも注力の構えで、4月1日付で「グローバル事業部」を新設し取り組みを強化。現在は4カ国・地域20店舗を展開するが、直営店を有する米国及び台湾で100店舗ずつ出店することを当面の目標として掲げている。 株価は4月上旬に全体相場の急落に抗えず、1571円まで急落したものの、その後はV字リバウンドで切り返し、直近は1900円前後まで水準を戻している。2月6日につけた年初来高値1990円の更新から2000円台での活躍を見込む。 ◎ワッツ <2735> [東証S] ワッツは 100円ショップの大手だが、直営による小規模の店舗展開で機動力を強みとした経営が特徴だ。M&A戦略などを駆使した多角化にも取り組んでいる。100円ショップ以外の事業では生活雑貨店や日用品全般を扱うディスカウント店、大黒天物産 <2791> [東証P]との協業で食品ディスカウントとのコラボレーションなども行っている。業績は近年利益面で苦戦を強いられたが、24年8月期に営業利益が前の期比倍増となるなど急回復を果たした。今期も同利益は伸び率こそ鈍化するものの前期比8%増の13億5000万円を見込んでいる。集客力強化に向けた努力が奏功するなか高単価商品の販売割合も高まっており、利益率が上昇傾向にある点は評価材料となる。 株価指標面でもPERが10倍前後でPBRは0.7倍台と割安感が強い。今期配当は前期の特別配当5円が剥落しても年18円を見込み、配当利回りも2.5%前後を維持する。株価は今週22日に768円の年初来高値形成後押し目を入れているが、拾い場と判断され、昨年9月中旬の高値859円が目標に。 株探ニュース