【杉村富生の短期相場観測】 ─国際マネーは“脱”巨大IT企業?
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「国際マネーは“脱”巨大IT企業?」 ●日本市場は荒れ模様の展開に 日本の株式市場は「節分天井、彼岸底」のパターンである。気迷い感の強い状況は4月初旬まで続くだろう。 トランプ政権はカナダ、メキシコに対する25%の関税措置を3月4日に、予定通り実施する。中国には10%の追加関税に加え、さらに10%の上乗せを行う、という。 タリフマン(関税男)はやりたい放題である。しかし、マーケットは冷静のようにみえる。市場関係者は「いまのところ影響は限定されている」と解説する。ただ、VIX(恐怖)指数が21ポイントに急上昇、アメリカの経済指標が悪化するなど、個人消費などに心理面のダメージが徐々に顕在化しつつある。 マグニフィセント・セブン(アメリカ市場の時価総額上位7社)に投資するETF(上場株式投信)の価格は年初以来、10%下げた。一方、iシェアーズMSCIエマージングマーケットETF、香港ハンセン指数、NY上場のドイツのカントリーファンドなどがジリ高だ。これはアメリカの巨大IT企業に集中してきた国際マネーが分散を始めた兆しではないか。 再三指摘してきているように、バークシャー・ハサウェイ のウォーレン・バフェット氏は昨年、アップル を売りまくり、ドラッケンミラー氏はエヌビディア の持ち株をすべて売った。フィーバーの最中に売るのは難しい。まあ、相場巧者は燃え盛る炎の先が見えている、ということだろう。 いや~、相場はややこしい。素人(しろうと)は炎に身を投じる。プロは「燃え盛る炎の先に見えるのは“灰”だけ」という。しかし、「相場は最後が大きい」とされているし、短期・順張りでは値動きをひたすら追うしかない。これが資金効率が良い。半面、リスクは膨らむ。そんなことは「分かっている」と反論されそうだが……。 ●引き続いて、個別物色の戦術を! さて、アメリカ大統領が使える関税に関する法律には1930年の関税法、1962年の通商拡大法232条、1974年の通商法301条、1977年の国際緊急経済権限法(IEEPA)などがある。今回はIEEPAを発動している。不法移民、合成麻薬「フェンタニル」流入阻止などを目的に関税を課すことができる。 第1次トランプ政権では通商拡大法、通商法を使ったために、調査に時間がかかった。IEEPAは緊急事態を宣言すればよい。調査期間は不要だ。結果的に関税を取引(ディール)の材料に使用できるし、乱発の可能性がある。最後は関税引き上げの報復合戦(1930年代は第2次世界大戦の引き金に)になる。 だからこそ、トランプ大統領の外交・通商政策を軽視するな、と主張している。なにしろ、メチャクチャだ。AI(人工知能)を軸とする成長戦略はDeepSeekショックを受け、崩れかけている。これは宇宙開発では世界のトップを走っていたはずのアメリカが旧ソビエト連邦の人工衛星に先を越されたスプートニク・ショックと類似している。 ともあれ、3月相場はこれまで同様、積極的には動けない。3月決算期末を控え、実需筋の売りが出ているし、円高圧力がある。長期金利(10年物国債利回り)は1.4%台に水準を切り上げている。為替関係者は18~19日の日銀金融政策決定会合での3回目の利上げを予想する。 この局面での投資作戦、戦術はどうか。ここは引き続いて、総論を捨て各論(銘柄)勝負が有効だろう。利殖の投資(長期・逆張り)では全保連 <5845> [東証S]、井関農機 <6310> [東証P]、国際計測器 <7722> [東証S]に注目している。3社とも30円配当だ。国際計測器のPBRは0.78倍、配当利回りは4.68%ある。 キオクシアホールディングス <285A> [東証P] 、ソシオネクスト <6526> [東証P]には世界的な半導体業界の再編思惑がある。日本ではラピダス支援法が動き出した。半導体業界は戦国時代に突入だ。インテル は分割されようとしている。単独での生き残りは難しい。パワー半導体のローム <6963> [東証P]は思惑を呼ぶことになろう。 2025年2月28日 記 株探ニュース