10月は最高値更新も月末に上昇分消す (1) 【シルバーブラットの「S&P500」月例レポート】

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市況

S&P500月例レポートでは、S&P500の値動きから米国マーケットの動向を解説します。市場全体のトレンドだけではなく、業種、さらには個別銘柄レベルでの分析を行い、米国マーケットの現状を掘り下げて説明します。

●THE S&P 500 MARKET:2024年10月
個人的見解:企業利益の(市場予想を上回る)好調は続き、株価はわずかに下落し(10月は0.99%下落、年初来では19.62%上昇)、選挙をめぐる懸念で投資家はすぐにも反応する構え(今年はもはやこれまでか?)

 10月30日時点において、市場ではすべてが順調に進んでおり、楽勝とは言わないまでも利益は出ていました。S&P500指数 は6ヵ月連続の上昇(10月30日時点で累計15.45%上昇)、また年初来で9回目の月間での上昇(同年初来で21.88%上昇と47回の史上最高値の更新)の間際まで来ていました。ところが、実際にはそうはなりませんでした。ハロウィーンが市場を怖がらせようとしたのでしょうか。実際に、10月は恐ろしい月であり、下落率が過去最悪の25営業日のうち32%が10月に起こっています。

 また、ハロウィーンは「スケープゴート」を生み出し(投資委員会の仕事において、スケープゴートを見つけることは極めて重要です)、マグニフィセント・セブンはグループとして10月31日に急落しました。いや、それも少し違います。10月30日時点でS&P500指数の月初来のトータルリターンはプラス0.96%でしたが、マグニフィセント・セブンを除くとマイナス0.38%でした。つまり、10月30日時点でマグニフィセント・セブンは市場を牽引しており、31日のS&P500指数の1.86%下落を含めても、指数の足かせになったわけではなく、単に10月前半の上昇分が失われたにすぎません。

 10月のS&P500指数のトータルリターンは、マグニフィセント・セブンを含めるとマイナス0.91%、7銘柄を除いてもマイナス0.90%と、ほとんど差はありません。それどころか、同指数の年初来リターンのうち48%が7銘柄によるものです。市場では、ここで利益を確定して2ヵ月間の休暇に入るのが最善のように思われますが(そのまま市場に戻らない方がもっと良いかもしれません)、勝つためには市場にとどまる必要があります。そのため、われわれは市場に残り、投資を続けますが、非課税資産や繰延税金資産のことを考えると、ポートフォリオを清算して短期金融商品に投資し、保険として価格の高いオプションを活用するのが良い結果につながる可能性があります。

 10月の市場には、野獣を殺すほどの美しさはありませんでしたが、マグニフィセント・ワン、すなわちエヌビディアは指数のリターンに0.57%寄与し、10月の損失を抑えるのに貢献しました(エヌビディアは指数の年初来リターンの25%に寄与しています)。10月は値下がり銘柄数(304銘柄)が値上がり銘柄数(199銘柄)を上回りました。

 金は引き続き光り輝き、米10年国債利回りは上昇(価格は下落)し、ガソリン価格は下落して、消費者物価指数(CPI)や生産者物価指数(PPI)の動きに寄与しました。米連邦準備制度理事会(FRB)は選挙の翌日から動き始めると予想され、同日に0.25%、さらに12月18日に0.25%の利下げを実施すると見込まれています。

 時価総額の72%に相当する銘柄が2024年第3四半期の決算発表を終え、売上高と利益の両方で四半期の過去最高を更新する見通しです。信じられないような話ですが、利益については2025年にかけて毎四半期で四半期ベースでの過去最高の更新が予想され、「素晴らしく偉大で美しい明日」が見込まれます。楽観主義は、従来よりも割高な水準でバリュエーションの新たな定位置を決めたようです。足元で12ヵ月実績株価収益率(PER)は25倍、2025年予想PERは21倍となっています。

 11月に関しては、最大の(そして裏話的な面でも)話題は選挙であり、取引に影響を及ぼすことは間違いありません。世論調査に基づくと(2020年は正確ではありませんでしたが)、郵便投票の集計や再集計もあるため、選挙結果が判明するまでに何日か、あるいは裁判所も関与することになれば、さらに時間がかかる可能性があります。いずれにせよ、市場が最も嫌う不確実性が非常に大きくなることは確実です。

 誰が大統領になるかによって、金がどこに流れるか、税制や信用はどうなるか、規制政策はどうなるかが左右され、それが明確にならない限り、企業は支出を控えると思われます。重要なのは利益であり、小売り企業はホリデーシーズンのガイダンスを示し始めており、現時点で3%の支出増が見込まれています。そのほか、11月6日-7日と12月17-18日の米連邦公開市場委員会(FOMC)、雇用データ(ADP全米雇用統計は予想を大幅に上回り、月次の雇用統計は11月1日に発表されます)やインフレ率など、いずれも取引に影響を及ぼす要素です。

 筆者はすでに投票を終えているため(執筆時点で期日前投票は6200万人超)、これ以上のメールや電話、郵便箱への投函はご遠慮ください。11月6日からは、2028年11月7日の選挙に向けた準備が始まります。

●インデックスの動き

 ○10月の株式市場も上昇相場が続き、過去最高値が更新されましたが、S&P500指数は最終日に上昇分がすべて失われるという結末を迎えました。S&P500指数は10月31日に1.86%下落して、月間では0.99%下落となり、今年に入って2回目の月間での下落となりました(1回目は4月の4.16%下落)。指数は終値で5800を突破し、10月中に終値での最高値を4回更新しました(年初来では47回)。

 ダウ・ジョーンズ工業株価平均(ダウ平均)も終値で初めて4万3000ドルを超え、10月中に終値での最高値を7回更新しましたが(年初来では40回)、最終的に下落して月を終えました。

  ⇒10月にS&P500指数は0.99%下落しました(配当込みのトータルリターンはマイナス0.91%)。9月は2.02%上昇(同プラス2.14%)、8月は2.28%上昇(同プラス2.43%)でした。

  ⇒過去3ヵ月間のS&P500指数の騰落率は3.32%の上昇となりました(同プラス3.66%)。

  ⇒年初来では19.62%上昇(同プラス20.97%)となり、年率換算すると23.75%上昇(同プラス25.42%)に相当します。

  ⇒過去1年間では36.04%上昇(同プラス38.02%)となっています。

  ⇒10月は値上がり銘柄数が199銘柄、値下がり銘柄数が304銘柄となり、値上がり銘柄数が減少し、値下がり銘柄数を下回りました(9月は値上がり銘柄数が324銘柄に対し、値下がり銘柄数は179銘柄)。

  ⇒10月は23営業日のうち11営業日で上昇し(9月は20営業日のうち12営業日で上昇、年初来では211営業日のうち119営業日で上昇)、1営業日で1%以上変動しました(9月は5営業日で1%以上変動し、そのうち3営業日が上昇、2営業日が下落)。年初来では42営業日で1%以上変動しました(27営業日が上昇、15営業日が下落)。

  ⇒11セクターのうち、3セクターが上昇しました(9月は8セクターが上昇)。

 ○S&P500指数の時価総額は10月に4650億ドル減少して(9月は1兆2630億ドル増加)、48兆2360億ドルとなりました。年初来では8兆1970億ドル増加しました。2023年は7兆9060億ドルの増加、2022年は8兆2240億ドルの減少でした。

  ⇒ダウ平均は、10月に終値での最高値を7回更新し(年初来では40回)、終値で4万3000ドルを突破しました(終値の最高値は4万3275.19ドル、取引時間中の最高値は4万3325.09ドル)。なお、9月は7回、8月は4回、7月は3回最高値を更新しています。同指数は10月に1.34%下落して(配当込みのトータルリターンはマイナス1.26%)、4万1763.46ドルで月を終えました。9月は1.86%上昇して(同プラス1.96%)4万2330.15ドル、8月は1.76%上昇して(同プラス2.03%)4万1563.08ドルで月を終えました。過去3ヵ月の騰落率は2.25%上昇(同プラス2.72%)、年初来では10.81%上昇(同プラス12.50%)、過去1年間では26.35%上昇(同プラス28.85%)となっています。2023年は13.70%の上昇(同プラス16.18%)、2022年は8.78%の下落(同マイナス6.86%)でした。

 ○10月の日中ボラティリティ(日中の値幅を安値で除して算出)は、0.81%と9月の1.08%から低下し(8月は1.32%)、年初来では0.91%となっています。なお、2023年通年は1.04%、2022年は1.83%、2021年は0.97%、2020年は1.51%でした(長期平均は1.42%)。

 ○10月の出来高は、9月に前月比8%増加した後に、同10%減少し(営業日数調整後)、前年同月比では1%減少となりました。2024年10月までの12ヵ月間では前年同期比4%減少しています。2023年通年では前年比1%減で、2022年通年では同6%増でした。

 ○10月は1%以上変動した日数は23営業日中1日(下落)、2%以上変動した日はありませんでした。9月は1%以上変動した日数は20営業日中5日(上昇が3日、下落が2日)、2%以上変動した日数は1日(下落)でした。年初来では、1%以上変動した日数は42日(上昇が27日、下落が15日)で、2%以上変動した日数は5日(上昇が2日、下落が3日)でした。2023年通年は、1%以上変動した日数が250営業日中63日(上昇が37日、下落が26日)、2%以上変動した日数が2日(上昇が1日、下落が1日)でした。

 10月は23営業日中5日で日中の変動率が1%以上となり、2%以上となった日はありませんでした。対して9月は1%以上の変動が20営業日中9日で、2%以上変動した日が3日ありました。年初来では、70日で日中の変動率が1%以上となり、2%以上変動した日数は9日ありました。2023年通年では1%以上の変動が113日、2%以上の変動が13日で、3%以上の変動はありませんでした(直近で3%以上の変動があったのは2022年11月30日)。2022年は1%以上の変動が219日、2%以上の変動が89日、3%以上の変動が20日でした(4%以上の変動が4日、5%以上の変動が1日)。

 過去の実績を見ると、10月は57.3%の確率で上昇し、上昇した月の平均上昇率は4.25%、下落した月の平均下落率は4.61%、全体の平均騰落率は0.51%の上昇となっています。2024年10月のS&P500指数は0.99%の下落でした。

 11月は61.5%の確率で上昇し、上昇した月の平均上昇率は4.11%、下落した月の平均下落率は4.16%、全体の平均騰落率は0.97%の上昇となっています。

 今後の米連邦公開市場委員会(FOMC)のスケジュールは、2024年は11月6日-7日、12月17日-18日、2025年は1月28日-29日、3月18日-19日、5月6日-7日、6月17日-18日、7月29日-30日、9月16日-17日、10月28日-29日、12月9日-10日となっています。

※「10月は最高値更新も月末に上昇分消す (2)」へ続く

株探ニュース

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