明日の株式相場に向けて=外国人の「劇的買い転換」アノマリー
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きょう(2日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比843円安の3万7808円と大幅反落。上下にボラティリティが高まるなか、日替わりでベクトルの向きが変わり、なかなか一筋縄では読めない地合いが続く。「森より木を見る」という銘柄重視のスタンスはよく言われることだが、今は個別株戦略も急所が見えにくくなっている。 目先半導体関連が一服し、防衛関連にマーケットの視線が集まっているが、防衛というテーマは銘柄の裾野が比較的狭く、手詰まり感が生じやすい弱みもある。足もとで三菱重工業<7011.T>が連日にわたって2位以下を大きく引き離す断トツの売買代金をこなしているが、これは少し前までレーザーテック<6920.T>が独占していた“ポールポジション”であった。ここだけ見ると、売買代金トップの座を占めるシンボルストックの交代が、半導体から防衛関連へと主役テーマが入れ替わったことを暗示しているようにも見える。だが、ここから三菱重に全力投球できるかというと、それはファンダメンタルズを考慮した場合、実践的にはリスクも大きい。あくまでバロメーターとしての位置づけとなる。 イランとイスラエル間の紛争は徐々に抜き差しならぬ局面となってきた。基本的に地政学リスクによって相場の大勢トレンドが下げに転じることはない。しかし、悪材料が単独ではなく複合的に内在しているケースもあり、押し目はひたすら買い下がって報われるというほど単純なものでもない。イランがイスラエルに向けて弾道ミサイルを180発以上も発射したことが伝わるなか、「イスラエルのネタニヤフ首相はアイアン・ドーム(防空・迎撃システム)が突き破られたことに相当なショックを受けており、報復手段についてもこれまでのようなプロレスでは済まされない状況となっている」(ネット証券マーケットアナリスト)と指摘する。日本にすればイランVSイスラエルは遠くの戦争かもしれないが、足もと地政学リスクによって原油市況が急動兆しており、これが高騰を続けるような場合は、物価高の流れと相まって日銀にもかなり強い圧力がかかることになる。追加利上げに向けたモラトリアム期間が前倒しで解消されれば、株式市場もバランスを崩す。 一方、米国のリセッション懸念はひと頃よりは大分緩和されている。FRBによる利下げは年内2回、つまり11月と12月のFOMCで0.25%ずつ政策金利を引き下げるという見方が今のところ本線だ。NYダウが前日に反落したとはいえ、史上最高値圏で頑強な値動きを示しているのは、経済のソフトランディング期待と金融緩和期待が併存するゴルディロックス的な相場環境が好感されている証である。注目されるのは今週末4日に発表が予定される9月の米雇用統計だ。 9月の雇用統計について事前コンセンサスは、非農業部門の雇用者数の伸びが15万人と14万2000人だった8月から若干増勢が予想されるが、失業率については4.2%、平均時給については3.8%増(前年比)と、どちらも8月と並びが見込まれている。ひと言でいえば程よくブレーキの利いた数字で、この通りであればFRBの政策姿勢に影響はなさそうだ。ただ、想定以上に強い数字だった場合、地政学リスクを背景とした原油価格の高騰や、金価格上昇などと共鳴して利下げシナリオに水を差すケースもゼロではない。 10月相場も前途多難を思わせるが、10~12月の四半期タームでみれば外国人投資家が本気を出すクオーターでもある。10月は過去10年間をさかのぼって外国人は日本株を月間ベースで8回買い越し、8勝2敗だった。ちなみに昨年10月は現物で9600億円強の大幅買い越しとなっていた。外国人にとって9月は売り越しの月(1勝9敗)であり、その代わり10月に仕切り直して買い越しに転じるのが強力なアノマリーだ。持論を曲げた10月解散表明で物議を醸した石破新首相だが、外国人によほど嫌われない限り、マーケットからは政権に追い風が吹くタイミングとなる可能性もある。 あすのスケジュールでは、対外・対内証券売買契約、10月の日銀当座預金増減要因見込みが朝方取引開始前に発表されるほか、午前中に10年物国債の入札が行われる。また、午後取引時間中には日銀から需給ギャップと潜在成長率が開示される。海外では8月の豪貿易収支のほか、米国では週間の新規失業保険申請件数が注目される。このほか、9月の米サプライマネジメント協会(ISM)非製造業景況感指数、8月の米製造業受注などに対するマーケットの関心が高い。なお、中国、韓国市場は休場。(銀) 出所:MINKABU PRESS