金利高で不動産株に風雲急、物価・市況から読み解く投資戦略の勘所 <株探トップ特集>

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コラム

―オフィス空室率は低水準、インフレ耐性力有するセクターで見直し機運高まるか―

 金融株が上昇する一方で、 不動産株は低迷している。その理由は金利上昇だ。長期金利(新発10年物国債利回り)は30年ぶりに一時3%の大台を突破し、今後も日銀による政策金利の引き上げが予想されている。金利上昇は、貸し手にとっては収益増加をもたらすが、借り手にとっては費用増加となる。不動産業界は、借入金や社債など長期有利子負債が多いという業態・財務的な特徴があり、将来的な金融費用増加が懸念されている。しかし、不動産には「インフレ耐性」という別の特徴があるほか、そもそもオフィス市場は好調だ。割安感を強めた不動産セクターの見直し機運は高まるのか。投資環境を点検していく。

●増配・自己株取得は「自信の表れ」

 金利上昇は負債サイドの借入金に対してマイナスに寄与する。インフレは資産サイドの不動産に対してプラスに寄与する。一般的に物価が上昇すれば、不動産賃料は引き上げられる。保有不動産の時価も上昇する。インフレ局面では、現金(広義には金融資産)よりも実物資産が有利であり、歴史的にも実物資産の代表格として不動産が選好されてきた。不動産会社は金利上昇に弱い事業構造というイメージが広がってはいるものの、資産の部分に対するインフレに着目すれば、そうは言い切れない面がある。

 大手不動産会社の保有する賃貸ビルの空室率はコロナ禍後に一貫して低下基調であり、平均賃料は上昇傾向が継続している。住宅、商業、宿泊、物流などの諸施設についてもほぼ同様だ。上場不動産株の多くが該当する「不動産賃貸業」では、金利上昇をはるかに上回る賃料上昇メリットを享受できている状況だ。増配や自己株取得など株主還元を拡充する動きが顕在化しているのも、業界各社の先行きに対する自信を表しているのだろう。

 金利に上昇圧力が掛かるなか、東京都心の中古マンション価格が前月比で下落したとの調査報告があり、不動産市場に対する悲観が広がりつつあるのは事実である。ただしファミリー向けで1億円を超える都心中古住宅の市場規模はさほど大きくはなく、少しの仮需が入れば、価格は大きく振れる可能性がある。仮に、中古市場の低迷が新築市場に波及したとしても、悪影響は住宅ディベロッパー(不動産開発・分譲)や流通(不動産仲介)などの部門に限定されるに違いない。

 もっとも、ザラ場ベースで東証REIT指数の年初来高値は1月、同安値は6月となっている。REIT(不動産投信)は、賃貸用不動産を保有し、その収益を投資家に分配するファンドであり、資金調達の面では、自己資本に匹敵する有利子負債を活用するため、金利上昇の影響を受けやすい。東証REIT指数は足もとで再び下落基調にあり、目先は注意深く構える必要があるだろう。不動産株については東証REIT指数にやや遅れる形で、2月高値、8月安値の銘柄が多数派を占めている。投資家の慎重姿勢が強まっている不動産セクターではあるが、銘柄によっては高値期日から6カ月を経過し、信用買い残の整理が進捗しているものもあり、底打ち機運の高まりが期待される。

●王道の旧財閥系不動産

 インフレを前提とするなら、不動産セクターに関しては、東京都心のオフィスビル賃貸を主力とする旧財閥系大手への投資が王道となる。市場が懸念しているマンション分譲のウェイトが相対的に大きくない点にも安心感がある。不動産大手は、PBR(株価純資産倍率)が1倍を超えているものの、賃貸用不動産等の含み益は大きく、それら含み益を考慮した実質PBRは1倍を下回る。つまりは、解散価値を下回る評価に甘んじているということだ。しかも、業績見通しは極めて良好だ。

 三菱地所 <8802> [東証P]は、東京・丸の内の賃貸ビル事業が大きなウェイトを占めており、「丸の内の大家」とも呼ばれている。27年3月期第1四半期(4~6月)決算は増収増益、ほぼ全部門が好調だった。主力の丸の内ではビル賃料の増額改定を進めており、海外不動産の利益貢献度も高まりつつある。ROE(自己資本利益率)10%を長期目標に利益成長を図るとともに、株主還元では毎期原則3円増配の累進配当と継続的な自己株取得を掲げている。

 住友不動産 <8830> [東証P]も主力は東京のオフィスビル賃貸だ。第1四半期(4~6月)決算は2ケタの最終増益で、通期の連続最高益更新に向けて順調だ。金利上昇に負けないオフィスビル賃料上昇を図るとともに、国内では東京都心に集中投資、海外ではインドの商業中心地ムンバイで大規模開発を推進。株主還元も強化しており累進増配を実施している。

 三井不動産 <8801> [東証P]は、東京ドームを傘下に収め、帝国ホテル <9708> [東証S]を持ち分法適用関連会社に持つなど多角化を図っている。第1四半期(4~6月)決算は減収減益となったが、分譲・物件売却のタイミングによるもので、オフィスや商業施設などの賃貸は伸長。通期では増収増益を見込む。長期経営方針では、EPS(1株利益)年8%以上の成長とROE10%以上を目標に掲げ、成長性と効率性を追求する計画だ。株主還元では、累進配当と自己株取得により総還元性向50%以上を表明している。

●特色ある尖った不動産会社

 独自の戦略で成長を追求する不動産会社にも注目したい。ヒューリック <3003> [東証P]は、オフィスビルや商業施設など不動産賃貸を主力に、銀座、新宿東口、渋谷・青山、浅草を重点エリアとする。資産売却・入れ替えを含めた効率性重視の経営方針に特色があり、M&Aも駆使して不動産運用、観光、こども教育、高齢者・健康、環境・インフラなどにも事業展開を図っている。足もと業績は好調、今期からスタートした新中長期経営計画では、配当性向45%を目標としている。

 京阪神ビルディング <8818> [東証P]は、場外馬券売り場やオフィスビル賃貸が主力だったが、1988年からデータセンターへと大きく事業シフトを図った。エクイティ投資などを通じて海外事業の強化も目指し、アセットタイプの多角化と事業領域の拡大を進めている。政策保有株式の縮減に努めつつ、累進増配を実施。資本効率の向上と株主還元拡充に取り組んでいる。

 パーク24 <4666> [東証P]は、時間貸し駐車場の国内最大手で、駐車場の一部を活用したカーシェアにも展開。「モビリティサービスプラットフォーマー」への進化を目指している。26年10月期第3四半期累計(25年11月~26年7月)は主力の国内駐車場とカーシェアが増収、海外駐車場も事業再構築によって黒字転換した。駐車場事業は、オーナーから借り上げた用地を「タイムズ」ブランドで運営するサブリースが主力だが、一時的な土地活用の場合が多いため、再開発が停滞すれば用地供給が増える可能性もある。

●隠れ不動産株にも注目

 業種として不動産業に属していないものの、不動産事業の利益貢献度が高く、不動産含み益が大きい「隠れ不動産株」も数多く存在する。資産効率向上、収益力強化、株主還元重視など昨今の流れから見ると、ある意味では時代遅れかもしれないが、こういう会社が変化するときに株価も大きく動くことがある。

 日本郵政 <6178> [東証P]は、郵便・物流、郵便局窓口、国際物流などに加えて、ゆうちょ銀行 <7182> [東証P]とかんぽ生命保険 <7181> [東証P]の上場子会社を傘下に持つ。25年3月期には事業セグメント区分が変更され、不動産事業を分離独立、主力事業として育成する方針を明確にした。金融2子会社を除く4事業セグメントの中では、営業収益は最下位だが、セグメント利益では最上位を占める。郵便局舎の統廃合によって大都市駅前を中心に再開発を推進する計画。前期末の賃貸等不動産の含み益(時価と簿価の差額)は7027億円に達し、将来的な再開発パイプラインは潤沢だ。

 片倉工業 <3001> [東証S]は、繊維業界の老舗で、機械、医薬品にも事業展開するが、不動産事業が連結売上高の29%を占め、利益寄与度は大きい。全国各地にあった工場など事業所の跡地再開発による商業・複合施設の賃貸が主力となっている。26年12月期第2四半期累計(1~6月)決算発表の際に、通期業績予想は増額修正された。事業構造改革を継続し、収益性の向上に取り組む方針。総還元性向60%程度を掲げている。

 他にも、ダイビルを完全子会社化した商船三井 <9104> [東証P]、横浜や神戸などに複合施設を保有する三菱倉庫 <9301> [東証P]、赤坂の本社隣接地に土地・建物を保有するTBSホールディングス <9401> [東証P]なども隠れ不動産株だ。いずれも不動産事業の利益寄与が大きく、含み益も有数の規模を誇っている。

 REITに投資するなら、東証REIT指数に連動するETF(上場投資信託)が有力な選択肢となる。各社から多数のETFが出ているが、主だったものとしてNEXT FUNDS 東証REIT指数連動型上場投信 <1343> [東証E]と、iシェアーズ・コア Jリート ETF <1476> [東証E]がある。いずれも信託報酬は0.2%未満で、売買の流動性もそれなりにあるが、基本はインカムゲイン志向の金融商品である点に留意すべきだ。

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