明日の株式相場に向けて=超ハイボラ機関車とウォーシュ・マジック
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きょう(15日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比1008円高の6万8751円と大幅続伸。朝高後に値を消す場面はあったが、前場後半を境に上値指向を強め、結局この日の高値近辺で取引を終えた。相変わらず韓国株市場に振り回される展開が続いているが、きょうに関して言えばベクトルの向きは上であった。韓国KOSPIは朝方からリスクオンに傾斜し、一時8%を超える上昇をみせた。仮にこれを日経平均に引き直すと5400円超の上昇となる。最近は日経平均が1日で1000円以上動くのは日常的な風景ともなっているが、KOSPIからみれば大分緩やかであることは間違いない。もし、東京市場で日経平均が日々5000円以上の上昇や下落があれば、それはもう鉄火場の様相で、容易には手を出しにくい地合いといえる。生身の人間では大火傷を負いかねず、それこそロボット(AI)同士を走らせる代理戦争の風景へと変わっていくのではないか。 きょうはイベント的には、日本時間の後場取引時間中に開示されたオランダの半導体露光装置世界最大手ASML<ASML>の決算に熱い視線が向かった。好決算が事前に予想されていたのは当然として、フタを開けてみれば4~6月期の売上高がコンセンサスを上回り、更に7~9月期の売上高予想も市場期待を軽々と跳び越えてみせた。これは、ASMLのEUV装置向けにマスクブランクス検査装置を独占供給するレーザーテック<6920.T>の株価を突き上げた。この日は、一頭地を抜く売買代金で大立回りを演じたキオクシアホールディングス<285A.T>よりも、売買代金2位に食い込み10%を超える急騰を演じたレーザーテクの方が主役としてスポットライトを浴びた感が強い。 ただ、全体を俯瞰すれば依然として超ハイボラティリティの韓国株市場が機関車となって引っ張り回す構図だ。韓国KOSPIの場合は「個別株レバレッジETF」の影響が大きく、これは基本的には単一銘柄において元来の株価の値動きに対するボラティリティが倍化する仕組みになっている。これに群がる個人投資家は、カジノに資金を投入するような感覚に近いはずだ。そしてそのターゲットは紛れもなくSKハイニックス<SKHY>とサムスン電子である。この2銘柄に錯綜する韓国トレーダーの思惑がそのまま日経平均に結び付けられた状況で、為替・金利などの外部環境や企業のファンダメンタルズといった、本来リンクされるべき要素を弾き飛ばし、モメンタム相場の塊と化している。結果的に韓国トレーダーを虜(とりこ)にしている個別株レバが1300兆円の東京市場(プライム)をブンブンと振り回す。これでは冷静に投資するには難しい環境だ。AIバブル論(懐疑論)については、肯定派、否定派で諸説入り乱れるが、収益(EPS)が伴っているから問題ないという論調は、現場の値動きに直面していない机上からの目線だからこそ言える面もある。やはり、この常軌を逸した動きが収まって、巡航速度で株価が上昇していくような局面が訪れるまでは、いかにAI革命の将来に確信を持っていても、腰を入れた投資は困難といえる。 モノサシであるはずのEPSがモンスター化している。しかし、足もとで捻出されている収益実績は、近い将来に過剰かもしれないAI投資の徒花(あだばな)となる可能性を考えておかなければならない。業態は全く違うが、AIデータセンターの建設ラッシュは日本で言えば湾岸中心に建てまくるタワマンバブルの構図に相似した部分がある。もちろん需要があるから建てるのだが、その需要が蒸発するシナリオが静かに動き出した時、既に株価の放物線は頂点を超え、ハイスピードで下向きに変わっているはずである。 こうなると、AI大相場の発祥の地である米国株市場の方がよほど合理的な値動きに見えてくる。こちらは金利動向を横目に次の一手を考えているようなトラディショナルな相場つきである。FRBはウォーシュ氏というニューリーダーを迎え、市場との対話が難しくなってくるのではないかという懸念も取り沙汰されたが、意外にしたたかな舵取りをする可能性がある。直近開示された6月の米消費者物価指数(CPI)は前年同月比、前月比ともに事前コンセンサスを大幅に下回った。これを受けて今月28~29日開催のFOMCで利上げは見送られる可能性が高まった。しかし、その後のウォーシュFRB議長の議会証言では、市場の楽観ムードに明らかに釘をさす発言がなされた。 いわく物価に関して「インフレの高止まりは容認しない」そして「インフレは選択の結果だ」と強調した。つまりすべてFRBの金融政策によってインフレになるかどうかが決まるという主張である。これに被せて「連邦準備制度の独立性は極めて神聖(不可侵)である」とも述べている。フォワードガイダンスに否定的なスタンスを標榜しながら、タカ派的な雰囲気を確信犯的に漂わせている。しかし、これはあえて裏返してみる必要があるかもしれない。つまり、本当は金融引き締めをしたくない。そのためにマーケットを踊らせないように言葉で締めている印象である。昨日のNYダウがほぼ横ばい、0.01%高で着地させたのは、ウォーシュ・マジックといえなくもない。 あすのスケジュールでは、週間の対外・対内証券売買契約が朝方取引開始前に発表されるほか、前場取引時間中に1年物国庫短期証券の入札が行われる。海外では韓国の金融通貨委員会が行われ政策金利が発表されるほか、ユーロ圏貿易収支が開示される。また、週間の米新規失業保険申請件数、5月の米企業在庫、6月の米小売売上高、6月の米仮契約住宅販売指数、7月のフィラデルフィア連銀製造業景況指数、7月の全米建設業協会(NAHB)住宅市場指数などがある。更に、この日はTSMC<TSM>やネットフリックス<NFLX>の4~6月期決算にマーケットの関心が高い。(銀) 出所:MINKABU PRESS