明日の株式相場に向けて=半導体はダイヤの原石「化学株」に再脚光
投稿:
きょう(11日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比38円高の6万4217円と小反発。前場は乱気流に巻かれるような目まぐるしい上下動で立ちくらみを起こしそうな地合いであったが、後場に入ると日経平均は上値が重いながらも安定し、前日終値近辺でのもみ合いに終始した。結局わずかにプラス圏に足を踏み入れて取引を終えている。もっともキオクシアホールディングス<285A.T>と東京エレクトロン<8035.T>の2銘柄がツートップで相場を牽引したようなもので、プライム市場の値下がり銘柄数は1000近くに達し値上がり数を大きく上回った。あすはメジャーSQ算出日だが、もとより裁定買い残が積み上がっておらず、オプションの建玉も分散した状況では波乱要素には乏しく、きょうの乱高下も売り方と買い方のせめぎ合いという印象は受けなかった。 個別株はやや気迷いムードが漂う。相場の主軸を担ってきた半導体関連株にも跛行色が見られ、上げる時も下げる時も一斉に同じ方向に振れるという感じではなくなっている。きょうの朝方は半導体関連の主力どころが総じて軟調なスタートを切ったが、売買代金トップ常連であるキオクシアが寄り後いち早く戻り足に転じ、あれよという間にプラス圏に切り返し7万7000円台まで駆け上がった。売り方目線では思わず悲鳴をあげるような想定外のパフォーマンスである。このキオクシア・エフェクトがきょうの東京市場を支えた。というのは、キオクシアの背中を見ながら、日経平均寄与度の高い他の大手半導体株に追随買いの動きを誘発したからである。 キオクシアはもちろん、最近強さが目立つ東エレク、あるいは元祖エヌビディア関連のアドバンテスト<6857.T>のようにAI・半導体関連のテーマ物色で中心軸に位置する銘柄は、そう簡単に火種が消失することはない。したがって、株価が軟化した時に押し目を買い下がる方針で臨めば、短期的にはかなりの確率で報われる。少なくともここ1年間はそういう地合いであった。一方、急ピッチの上昇でスピード警戒感は覆うべくもなく、これら主力株の人気が盛り上がった時に高値に買いつくのは投資手法として得策ではない。本丸を狙うのであれば、基本はあくまで調整局面に目を光らせるのがポイントとなる。 目先はAI・半導体関連でもそれほど過熱感のない周辺株に再び投資マネーの視線が向いているようだ。化学・食品セクターを中心とする半導体材料の領域に展開する銘柄が静かにリバウンドの機を窺っている。味の素<2802.T>は食品業界の大御所で押しも押されもせぬ調味料最大手だが、半導体製造工程における無双のサプライヤーとしてマーケットで認知されている。同社が製造するのは半導体パッケージ基板用の層間絶縁材料である「味の素ビルドアップフィルム(ABF)」で、独自のアミノ酸製造技術とそこから派生した有機化学・配合技術を駆使し、ほぼ100%の世界シェアを握るというオンリーワン企業である。もし、仮に同社が食品セクター大手ではなく、ABFのみに特化した小型株であれば、グローバル・ニッチトップとして、とんでもない株価変貌を遂げたことは間違いない。イビデン<4062.T>は最先端半導体パッケージのメガサプライヤーとして、エヌビディア<NVDA>、インテル<INTC>の両巨頭を主要顧客としているが、パッケージ基板を製造する際にABFを全面使用しており、味の素とは不可分の関係性を有している。 また、化学業界は半導体の製造プロセスで代替不能な高度な技術を持つ銘柄群の宝庫といってもよい。半導体シリコンウエハーの世界首位でEUVレジストでもフロントランナーとなっている信越化学工業<4063.T>、フォトレジストで微細化のスペシャリスト東京応化工業<4186.T>、銅張積層板(CCL)をはじめ半導体後工程で圧倒的シェアを誇る商品群を抱えるレゾナック・ホールディングス<4004.T>などが代表的だ。 これ以外にも生成AI時代のインフラ構築で商機を高めている化学メーカーは少なくない。扶桑化学工業<4368.T>もその一角を占める。同社はリンゴ酸やクエン酸などの果実酸で世界首位級のシェアを誇るが、半導体ウエハー研磨材で必要不可欠の「超高純度コロイダルシリカ」でグローバル・ニッチトップの座を確立させていることが、投資マネーの琴線に触れ直近1年間で株価の居どころを大きく変えた。コロイダルシリカは半導体の化学機械研磨(CMP)工程で極めて重要な役割を担う。ナノレベルの高精度が求められる半導体微細化で必須だが、GPUなどのAI半導体向けでも3D積層化ニーズが高まるなか高水準の需要を獲得し、業績も飛躍的な成長トレンドに突入している。また、中小型の穴株では多木化学<4025.T>もマーク。化学肥料の大手で水処理薬剤では世界的に高シェアを確保しているが、同社のビジネス領域は半導体業界とも重要な交わりがある。半導体生産設備で欠かせない超純水製造や排水・薬品処理に絡むソリューションで同社の活躍余地は大きい。 あすは株価指数先物・オプション6月物の特別清算指数(メジャーSQ)算出日にあたる。このほか、前場取引時間中に3カ月物国庫短期証券の入札が行われ、後場取引時間中には4月の鉱工業生産(確報値)が開示される。海外ではスペースⅩ<SPCX>のナスダックへの新規上場にマーケットの視線が集中する。これ以外ではインドの消費者物価指数(CPI)が開示されるほか、6月の米消費者態度指数(ミシガン大学調査・速報値)にマーケットの関心が高いなお、フィリピン市場は休場となる。(銀) 出所:MINKABU PRESS