次世代の食料供給インフラに脚光、再評価機運高まる「植物工場」関連株 <株探トップ特集>
投稿:
―高市政権が優先支援する一角、スタートアップ企業の大型資金調達が刺激に― 気候変動、労働力不足、食料供給の不安定化など農業・食を取り巻く環境が世界的に深刻化しているなか、天候に左右されにくく、安定的かつ高品質な生産が可能な 植物工場が次世代の食料供給インフラとして期待されている。高市早苗政権が掲げる戦略17分野で優先的に支援する製品・技術のひとつに植物工場が選定されていることもあり、関連銘柄に改めてスポットを当てた。 ●国内外市場のシェア3割目指す 高市政権が最重要政策に掲げる経済成長実現のための司令塔として設置された日本成長戦略会議は3月10日、官民投資を優先的に支援する主要な製品・技術などを選定した。そのひとつが「植物工場」で、選定された背景には定時・定量・定価格・定品質(4定)での農産物の提供が可能なことから、機能性成分や医薬品原料成分を含む農産物の生産による健康・医療など幅広い産業への貢献が見込めることがある。 また、輸入依存が高く高付加価値の農産物の安定供給のほか、植物工場において開発された高温に強い品種などや得られたデータ(作物ごとの最適な栽培条件)の農業現場への展開により、国内外の食料安全保障につながることも挙げられる。政府は2030年にかけて市場ニーズに応じた商業栽培品目を拡充するとともに、海外市場展開を拡大する構え。日本品質の農産物及び植物工場プラントと運営ノウハウをあわせた植物工場システムをパッケージ展開し、40年にかけて国内外市場のシェア3割を目指すとしている。 高市首相は5月8日に都内で開かれた日本農業新聞全国大会の懇親会に出席し、食料安全保障の実現に向けて国内外の需要を積極的に創出すると表明。すべての田畑をフル活用することに加え、先端技術の活用や輸出といった分野に集中投資することで稼げる農林水産業を創り出す考えを示した。 ●オイシイファームと連携相次ぐ こうしたなか市場で話題となっているのが、米国で植物工場を運営する日本発スタートアップのオイシイファーム(ニュージャージー州)が総額約240億円の資金調達を実施したことだ。これにより同社は、サステナブルな農業の実現と、日本発の新たなグローバル産業の創出に向けたオープンイノベーションを加速させるとしている。 同社は今夏に、世界最大規模の植物工場専用の研究開発拠点となる「オープンイノベーションセンター」(東京都羽村市)を正式開所する予定。各領域を牽引する企業とのオープンイノベーションを通じ、これまで独自に開発してきた各種要素技術の高度化と標準化を進め、世界展開に備える構え。具体的には、植物工場の運用に不可欠なIoT・設備分野ではNTT <9432> [東証P]との協業を開始しているほか、安川電機 <6506> [東証P]のロボティクス、ミスミグループ本社 <9962> [東証P]の機械部品を活用し、農業の自動化に向けた連携を推進。また、大和ハウス工業 <1925> [東証P]や荏原 <6361> [東証P]と、付加価値の向上及び成長加速につながる取り組みの可能性について検討を進めているという。 このほか、朝日工業社 <1975> [東証P]とは建設プロセスの標準化に関して検討している。同社は14日に公表した27年3月期を初年度とする3カ年の中期経営計画で、積極投資による新規事業開発と既存事業強化を掲げており、そのひとつが「植物工場の一括提案を起点としたアグリ事業参入基盤の構築」だ。植物工場システムの市場規模拡大が見込まれることから関連受注の拡大に注力する考えだ。 野村不動産ホールディングス <3231> [東証P]傘下の野村不動産は総合デベロッパーとして培ってきた知見を生かし、植物工場の開発に向けて検討している。同社は26年度にインフラ・インダストリー事業本部を新設し、物流施設、データセンター、エネルギー、工場など、社会・産業インフラを支えるアセットの開発をこれまで以上に強化する体制を構築。植物工場を社会課題の解決につながる新たな不動産アセットと捉え、インフラ・インダストリー事業の更なる進化を目指すという。 三井住友トラストグループ <8309> [東証P]傘下の三井住友信託銀行は、このほどインパクトエクイティ投資として出資した。オイシイファームの取り組みは同行が注力する新たな社会インフラの整備との親和性が高く、今後も事業拡大や領域発展に向けた取り組みを支援するとしている。 ●スタンレー、YUASAなどにも注目 これ以外の関連銘柄としてはYUASA <8074> [東証P]が4月15日、三菱ケミカルグループ <4188> [東証P]傘下の三菱ケミカルアクア・ソリューションズが展開する植物工場を6月1日付で引き継ぐと発表。システム販売にとどまらず、自社の施工技術による植物工場の建設、取り扱い商材である空調機器、冷蔵・保管庫、ビニールハウス、水処理機器、包装関連資材などの周辺機器・設備を掛け合わせたワンストップ提案を実施し、提供価値の最大化を図るとしている。 ハークスレイ <7561> [東証S]は3月31日付で、人工光型植物工場における野菜生産及び販売を手掛けるJリーフ(千葉県芝山町)を子会社化。グループが保有する流通販売ネットワーク(小売、卸、外食など)を活用した販路拡大及び供給体制の構築や、植物工場産レタスの「低菌・高鮮度」特性を核としたグループ会社での同社商品の活用及び新商品(新種・メニュー)開発及び販売などのシナジーを見込んでいるという。 スタンレー電気 <6923> [東証P]も見逃せない。同社は1月27日、東京大学と赤色レーザーダイオード(LD)を用いた植物栽培が、従来の発光ダイオード(LED)光源を上回る成長促進効果を示すことを世界で初めて実証したことを明らかにした。赤色LDが次世代型の植物栽培用光源として有望であることが示されたことで、植物工場などの人工光型農業における生産性向上及び省エネルギー化が期待される。 また、完全人工光型植物工場システムを扱う大氣社 <1979> [東証P]、グループ会社が植物工場フランチャイズを展開するレスター <3156> [東証P]、植物工場から一般家庭まで幅広く利用されている「OATハウス肥料」シリーズを手掛けるOATアグリオ <4979> [東証S]、自動化設備と栽培技術を融合させた次世代型植物工場モデルを推進している椿本チエイン <6371> [東証P]、植物工場システムを取り扱っているシンフォニア テクノロジー <6507> [東証P]などの動向にも注目しておきたい。 株探ニュース