明日の株式相場に向けて=内需系セクターローテションの罠
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きょう(19日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比265円安の6万0550円と4日続落。朝方は先物主導で日経平均が高く始まったものの、程なくして値を消しマイナス圏に沈んだ。値上がり銘柄数が1100あまりに達し、プライム市場全体の7割強を占めており、実態は上昇相場の色彩が強かったともいえるのだが、それでも体感温度としてはかなり寒さを感じる地合いだった。前日の米国株市場では半導体関連株に売り圧力が強まり、マイクロン・テクノロジー<MU>やアプライド・マテリアルズ<AMAT>、サンディスク<SNDK>などが軒並み5%を超える下落となったほか、決算発表間近のエヌビディア<NVDA>も続落、高値圏で陰線を連ねる形で下値リスクを意識させる足となっている。フィラデルフィア半導体株指数(SOX指数)は2.5%安に売られ、5日移動平均線を下放れた。足もとで風向きの変化が感じられるなか、東京市場も半導体関連に嫌なムードが漂った。 何といっても前日にストップ高比例配分となったキオクシアホールディングス<285A.T>が、きょうは高く始まったものの、どうにも上値が重く冴えを欠いた。前場中ごろから急速に値を崩し大幅反落となったことが投資マネーの気勢を削いでいる。エヌビディア決算というビッグイベントを前に、残念ながら半導体セクターは目先調整局面に入った可能性がある。エヌビディアの決算は5~7月期のガイダンスも含め好調を極めることが予想されるが、それでも楽観はできない。成長の伸びしろは十分にあり、決して材料出尽くしということではないのだが、短期的にはモメンタム相場の振り子が戻りそうなタイミングにある。 そうしたなか、市場ではセクターローテションを唱える向きが多くなっている。すなわちAI・半導体関連一本槍のスタイルから、内需系バリュー株への資金分散の機が熟してきたという見立てである。確かに、高値圏で逡巡する半導体の値がさ株に追撃買いを入れるのはリスクが大きい。それよりはバリュエーションの割安な内需系の銘柄にリターンリバーサル狙いの買いを入れ、戻りを待つ方がローリスクで有利という考え方だ。これは既に多くの個人投資家が実践しているもようで、ネット証券大手の話では5月に入ってからの信用買い残がかつてないピッチで急増しており、その投資対象としては底値圏にあるバリュー株の逆張りが主軸となっているという。 しかし、きょうはその思惑に沿う地合いだったとはいえ、消去法的な流れで勢いが感じられなかった。内需系といっても金利上昇局面でメガバンクや大手生保の株価は強いが、一方で不動産株は波乱含みだ。不動産セクターは以前にも触れたが、湾岸地域を中心にタワマンバブル崩壊懸念がくすぶっている。これは教科書的な金利上昇に伴うデメリットだけでなく、不動産税制の変化や転売ヤーに関する自主規制などで、インバウンド資金の流入が細っていることも影響している。前週から今週にかけて、住友不動産<8830.T>の好決算発表後の崩れ足は警戒感を募らせる。そして、不動産にイエローシグナルが点滅しているとなれば、その影を落とすのは不動産セクターに限らない。建設や鉄道など“地続き”の業界には相応に影響が及ぶ。銀行も今は金利上昇に伴う運用益で潤っても、近い将来には貸し手の縮小と不良債権リスクでバランスシートを傷めるシナリオを排除することができない。 きょう朝方発表された1~3月期国内GDPは年率換算で2.1%増と2四半期連続のプラスで事前コンセンサスも上回ったが、これが水戸黄門の印籠のように効力を持ち続けることは考えづらい。AI・半導体から内需出遅れ株へのローテーションがうまく利かないとすれば、全体株価も一段と下値を探る展開を念頭に置いておく必要がある。仮に日経平均がフシ目の6万円大台を割り込めば、同時にテクニカルの要衝である25日移動平均線も下抜けることになる。また、きょうはTOPIXの方は上昇したが、NT倍率の調整が進むプロセスでTOPIXが水準を切り上げるとは限らない。株式市場は総論として注意が必要な時間帯に入った可能性がある。 目先は業態を問わず強い株に着目。そのなか、上値をつかみに行くのではなく、急騰パフォーマンスを演じた後に売り物をこなし、踊り場を形成している銘柄に焦点を当ててみたい。ポイントサイトを運営するセレス<3696.T>や、AI関連でトップライン・利益ともに高成長路線をまい進するユーザーローカル<3984.T>。同じくAI絡みでサイオス<3744.T>も中低位株ならではの魅力を内包する。このほか、量子コンピューター関連の雄であるテラスカイ<3915.T>や、ペイントアプリで時流を捉えるアイビス<9343.T>などをマーク。 あすのスケジュールでは、前場取引時間中は目立ったイベントはないが、債券市場(発行市場)で20年物国債の入札が予定されており、その結果が注目される。後場取引時間中には4月の主要コンビニエンスストア売上高が開示され、夕方に公表される4月の訪日外国人客数に市場の関心が高い。また、日銀による債券市場サーベイ・5月調査も発表される。海外では5月の中国最優遇貸出金利のほか、インドネシア中銀が政策金利を決定、欧州では4月のユーロ圏消費者物価指数(HICP)、4月の英消費者物価指数(CPI)が発表される。また、米国では4月28~29日開催分のFOMC議事要旨が開示、米20年物国債の入札も行われる。バーFRB理事の講演が予定され、発言内容にマーケットの視線が向かう。個別ではエヌビディアの2~4月期決算発表が要注目となる。(銀) 出所:MINKABU PRESS