米中会談の陰で始動中、巨大プロジェクト「対米投融資」関連株リスト <株探トップ特集>
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―第1号案件で融資決定、総額87兆円規模の異次元スキームの新たな動きに注目― 米中首脳会談が中国・北京で行われている。米国は経済・貿易面での成果を狙う半面、中国は台湾問題に関し米国側の姿勢を変化させる好機として捉えており、会談の結果次第で東アジアの不安定化につながるリスクもある。仮に米中が一段と接近した場合、日本は米国に対し日米関係の重要性を更に強く訴える必要に迫られることになるだろう。特にトランプ政権に対しては安全保障面とともに、経済分野においても米国に「貢献」する姿勢が問われていく。対米投融資プロジェクトにおいて、日米両国から新たな投資案件がどのように打ち出されるのか、市場参加者の関心が高まっている。 ●ガス発電とデータセンターで「ポーツマスコンソーシアム」組成 昨年7月に日米間で合意した総額5500億ドル(約87兆円)の対米投融資案件がいよいよ動き始めることとなった。政府系金融機関である国際協力銀行(JBIC)は5月1日、第1号案件の3つの事業について、約22億ドルの融資を決定したと発表した。JBIC主導でメガバンク3行が参画し、民間金融機関の融資には日本貿易保険(NEXI)の保険が付く。 第1号案件は、1)オハイオ州におけるガス発電所333億ドル、2)テキサス州の石油輸出施設21億ドル、3)ジョージア州の 人工ダイヤモンド製造施設6億ドルの3件からなり、総事業規模は360億ドルに達する。資金調達スキームが明確になったため、三菱UFJフィナンシャル・グループ <8306> [東証P]、三井住友フィナンシャルグループ <8316> [東証P]、みずほフィナンシャルグループ <8411> [東証P]については、融資残高の拡大というメリットが期待できる。資金調達コストも上昇していることから、条件面ではさほどの旨味はないかもしれないが、NEXI保証案件としてリスクは限定的だ。周辺分野への融資・役務提供などの追加的な案件獲得があれば、収益性を高めるチャンスはあるだろう。 3つの事業のうち、ガス火力発電所プロジェクトは、人工知能(AI)データセンター などに電力を供給するための9.2ギガワットの天然ガス火力発電所を建設するものであり、工場跡地を活用し、世界最大級のAIデータセンターと電源インフラを整備する計画の一部を成す。ソフトバンクグループ <9984> [東証P]傘下のSBエナジーが運営主体となり、財務省のリリースによると、東芝、日立製作所 <6501> [東証P]、三菱電機 <6503> [東証P]などが関心を示しているとされる。 オハイオ州におけるガス発電とデータセンターを合わせた官民連携プロジェクトを推進するための「ポーツマスコンソーシアム」も組成された。日本側からは前記の4社の他に、製造業では住友電気工業 <5802> [東証P]、フジクラ <5803> [東証P]、パナソニック ホールディングス <6752> [東証P]、TDK <6762> [東証P]、村田製作所 <6981> [東証P]が参画企業として名を連ねる。高効率発電用ガスタービンでは、三菱重工業 <7011> [東証P]、GEベルノバ、シーメンスの3社が圧倒的な大手だが、三菱重の名前がないところを見ると、本件では発電所の主要部分はGEベルノバが採用され、周辺部分あるいはデータセンター部分に日系企業も参画すると想定される。 運営主体となるソフトバンクGにとっては、本命データセンターのインフラ部分に日本からの低利融資資金が充当できるというメリットがある。運営主体であるとともに、エクイティを持つため、アップサイドがあれば享受することが可能となる。一体的に展開するAIデータセンターの効果も期待できよう。ソフトバンクGは、オープンAIやオラクル とともにデータセンター・AIインフラ整備計画「スターゲート」構想も発表しており、電力インフラが整った後のデータセンター部分にはこれら2社を含む大手AI関連企業の参画があるかもしれない。 ●石油輸出施設でプラント大手にチャンスも 石油輸出施設プロジェクトは米国産原油の輸出インフラを構築するものであり、運営主体になっているセンチネル・ミッドストリームが以前から計画していたプロジェクトだ。財務省リリースによると、商船三井 <9104> [東証P]、日本製鉄 <5401> [東証P]、JFEホールディングス <5411> [東証P]、三井海洋開発 <6269> [東証P]などが関心を示しているとされる。 米国産原油は、基本的に地産地消の構造であったため、VLCC(超大型原油タンカー)をフルに積載できるターミナルはルイジアナ沖の1カ所しかなく、輸出の際のボトルネックとなっていた。それゆえ、テキサス沖にターミナルを新設する計画が複数あったのだが、環境問題も絡み、沖合の深水域へのターミナル建設は技術的にも経済的にも難易度が高かった。そこに、日本からの投融資が充当されるという構造だ。ターミナル全体としては、パイプライン、貯蔵タンク、港湾積出設備、関連施設などが必要になる。 計画が進んでいたプロジェクトではあるが、日揮ホールディングス <1963> [東証P]、東洋エンジニアリング <6330> [東証P]、千代田化工建設 <6366> [東証S]などのプラント大手にはチャンスがあるかもしれない。三井海洋も同様だ。部材納入という面では、鉄鋼メーカーには恩恵がありそうだ。特に、USスチールを傘下に収め、油井管の世界首位である日本製鉄の場合、直接的な受注ももちろん、需要増加による製品市況の改善効果が期待できる。 商船三井については、ターミナル利用ということだろうが、出資・運営参画という可能性もあるかもしれない。同社は、市況変動の激しい海運事業と連動しない「安定収益型・非海運事業」の拡大を志向しており、昨年には欧米に7拠点持つ化学品タンクターミナル世界大手企業を約17億ドルで買収した実績がある。ちなみに、テキサス州はメキシコ湾(大西洋側)に面しているため、立地的には日本向け輸出には適さない。本件そのものの日本への利益寄与は限定的だが、今後の投資案件への波及効果(太平洋側の輸出ターミナル、パイプライン、LNG基地などのプロジェクト)の実地教材にはなるだろう。 ●人工ダイヤはAIサーバー用でも拡大機運 人工ダイヤモンド製造施設プロジェクトは、高圧・高温合成ダイヤモンド砥粒施設を建設するもので、ダイヤモンド大手のデビアス傘下のエレメントシックスが運営主体となる。財務省リリースによると、旭ダイヤモンド工業 <6140> [東証P]、ノリタケ <5331> [東証P]などが関心を示しているとされる。エレメントシックスは英国本拠で、アイルランド、ドイツ、南アフリカ、米国に生産拠点を持ち、今回は米国拠点を拡充する案件だ。人工ダイヤモンドは、素材としての硬さによって切断・研磨に適しているため、主に工具として利用されている。人工ダイヤモンドの生産では中国が圧倒的シェアを持っており、経済安全保障上の重要な製品と認識されている。 人工ダイヤモンドの製造には、HPHT法(高温高圧合成法)という既に確立された技術があるが、大きな電力と熱を使用し、巨大な装置が必要となる。この点が、安い電力コストと国家的支援によって大量生産体制を確立した中国の寡占を許した理由であり、今回は「第2のレアアース」となるのを避けようという意図がある。一方、ダイヤモンド加工業者の集積があるインドでも、足もとで人工ダイヤモンド生産が増加しつつあり、今回のプロジェクトの採算性には疑問もない訳ではない。 工具以外には、熱伝導率の高さを生かして放熱(ヒートシンク)性能に着目したAIサーバー用冷却板としての利用も増えつつある。将来的には、半導体の超精密研磨や量子デバイス素材としての研究開発も進みつつある。いずれもコストが問題となるが、人工ダイヤモンドは究極の材料として有望と見られている。前出の旭ダイヤとノリタケの場合、ダイヤモンド工具の世界的大手として、部材購入の面で中国依存度を下げて安定的な調達を可能にする効果があるとは考えられる。ただし、出荷までには時間を要すると見込まれる。 株式市場において人工ダイヤモンド関連として注目されている銘柄も挙げておく。住石ホールディングス <1514> [東証S]は、子会社ダイヤマテリアルで人工ダイヤモンドの製造・販売を手掛けている。同社が採用するのは、衝撃圧縮法(爆発合成)によるもので、中国からの輸入品とともに、主として研磨材料として出荷されている。イーディーピー <7794> [東証G]は、産業技術総合研究所発のベンチャーとして、ダイヤモンド単結晶・関連製品を製造・販売している。CVD法(化学気相蒸着法)という板状の結晶を製造する技術に特色があり、基板・ウエハー、光学部品など精密デバイス向けにも向いている。 ●検討進む候補案件も要マーク 第2弾のプロジェクト推進においても日米両国は合意している。テネシー州とアラバマ州での日立とGEベルノバによる次世代原発の小型モジュール炉(SMR)建設と、ペンシルベニア州とテキサス州での天然ガス発電施設で、最大730億ドルの規模となる。SMRではIHI <7013> [東証P]や日本製鋼所 <5631> [東証P]による関連機器の納入などが期待されているという。 これら以外に蓄電池や銅精錬、アラスカでの油田開発、ジャパンディスプレイ <6740> [東証P]の米国内での工場運営といった事業が第3弾以降の候補になるとの見方が広がっている。蓄電池関連ではジーエス・ユアサ コーポレーション <6674> [東証P]やFDK <6955> [東証S]、蓄電池AI最適制御システムのインフォメティス <281A> [東証G]が一部報道で動意づいた経緯がある。 次世代原発関連では岡野バルブ製造 <6492> [東証S]や日本ギア工業 <6356> [東証S]、助川電気工業 <7711> [東証S]、木村化工機 <6378> [東証S]などの銘柄群がマークされる。銅精錬関連ではJX金属 <5016> [東証P]や三菱マテリアル <5711> [東証P]、住友金属鉱山 <5713> [東証P]といった大手とともに、日鉄鉱業 <1515> [東証P]に注目が集まることになるだろう。資源開発ではINPEX <1605> [東証P]や石油資源開発 <1662> [東証P]の関与とともに、石油プラント向けポンプを手掛ける日機装 <6376> [東証P]やバルブのキッツ <6498> [東証P]、タンクシールなどを供給する櫻護謨 <5189> [東証S]などにも目配りをしておきたい。 株探ニュース