建築コスト高騰の出口戦略、「不動産再生ビジネス」が描く成長曲線 <株探トップ特集>
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―消費者の選別厳しさ増しバリューアップが重要、26年度税制改正も追い風― 中東情勢の緊迫化が住宅市場にも影響を及ぼしている。TOTO <5332> [東証P]では4月、システムバス・ユニットバスの新規受注を停止(現在は再開)したが、フィルム接着やコーティングに使われるナフサ由来の建材が不足していることが要因だった。ナフサ由来の建材の値上げや供給停滞は続いており、分譲価格の上昇や工期の遅れなどが懸念されている。 こうしたなか、これまで以上に関心が高まっているのが中古住宅だ。なかでも リノベーションにより付加価値を高めた再生住宅は継続して人気が高く、関連企業の業績も堅調なものが目立つ。改めて中古不動産再生関連に注目したい。 ●「マイホーム」の中古シフト進む かつて「マイホーム」といえば新築一辺倒だった日本の住宅市場だが、その状況は徐々に変わりつつある。東日本不動産流通機構(東日本レインズ)によると、今年3月の首都圏の中古マンションの成約件数は前年同月比0.2%増で17カ月連続増加し、1平方メートル当たりの成約単価も同9.3%増と71カ月連続で上昇した。中古戸建住宅の成約件数は同1.2%減と減少したものの、2月まで16カ月連続で増加しており、成約価格も同1.8%増と3カ月連続で上昇と堅調だ。 こうした状況の背景にあるのは、新築分譲の価格が高騰したことによる、比較的価格が安い中古物件へのニーズの高まりがある。マンションで見ると、一般的に中古マンションは新築に比べ平均価格で2~4割以上も安い。物価高で中古マンションの成約単価も伸びてはいるものの、依然として新築よりは手が届きやすい。 価格の割安感以外にも中古マンションは都心や駅近の好立地物件が豊富にあることや、中古物件のストックが豊富にあり選択肢が多いことなどもメリットとして挙げられる。中古マンションを選好する動きは当面続きそうだ。 ●住宅、オフィスの建築費も過去最高に また、建築費の高騰はマンションだけにとどまらない。建設物価調査会が発表する建築物の工事価格の動向を表す「建設物価 建築費指数」(2015年平均=100)によると、26年4月の東京地区の集合住宅(鉄筋コンクリート造)の指数は143.8(暫定値)で前月比0.4%増、前年同月比5.8%増となり、過去最高となった。このほか事務所(鉄骨造)は141.8(暫定値)、住宅(木造)は149.4(同)でいずれも過去最高となっており、建築費の上昇が著しい。更に、中東情勢の緊迫化でナフサ価格が上昇しており、建築費の上昇に拍車がかかることが予想されるため、今後も不動産市場で中古物件の重要性は増しそうだ。 ●26年度税制改正も追い風 もっとも、日銀の利上げ局面で住宅ローン金利の上昇が警戒されるなか、消費者の物件の選別眼も強まっていることから、「中古なら何でも売れる」時期は終わった。購入者は限られた予算内で、「追加リフォーム費用のいらない、完成度の高い物件」や「省エネ性能が高い物件」を求めるようになっており、中古不動産再生ビジネスへの関心が高まっている。 特に26年度の税制改正で、質の高い既存住宅の借入限度額・控除期間の拡充や床面積要件の緩和などが行われ、「ZEH水準省エネ住宅」や「省エネ基準適合住宅」が優遇されたことで、中古不動産を再生する企業の手掛ける物件には強力な追い風が吹くことになる。関連企業のビジネスチャンスは拡大が期待できそうだ。 ●中古不動産再生関連の主な銘柄 そこで今回は戸建・マンションの中古再生事業を手掛ける銘柄を中心に、オフィスビルなどのバリューアップを手掛ける銘柄なども紹介したい。 カチタス <8919> [東証P]は、地方都市を主体に全国で戸建中古住宅の再生事業を展開しており、販売戸数は業界トップ。ニトリホールディングス <9843> [東証P]との資本・業務提携による家具付き住宅の販売や圧倒的仕入れ網が強みで、空き家の増加も仕入れ機会の拡大につながっている。5月8日に発表した27年3月期連結業績予想では、営業利益210億円(前期比14.9%増)を見込み、年間配当予想は前期比10円増の90円を予定している。 インテリックスホールディングス <463A> [東証S]は、中古マンション再生流通事業の大手で、中古マンションを1戸単位で仕入れ、最適なリノベーションを施した後に販売するリノヴェックスマンション事業を手掛けており、累計で2万8000戸以上の販売実績を有している。また、省エネ性能を向上させたリノベーションの新工法を開発しており、税制改正の恩恵も受けやすい。4月28日には26年5月期連結業績予想の上方修正を発表しており、営業利益を24億9800万円から28億7500万円へ引き上げている。 スター・マイカ・ホールディングス <2975> [東証P]は、ファミリータイプを中心に賃貸中のマンションを買い取り、退去後にリノベーションしたうえで売却する独自のビジネスモデルを展開しており、賃貸と売買から安定的に収益を生み出しているのが特徴。都心の物件を豊富に抱えていることから、マンション価格の上昇が在庫価値の向上につながり、利益押し上げに寄与している。26年11月期第1四半期連結決算は営業利益が34億9200万円(前年同期比51.5%増)と大幅増益で着地。通期予想の営業利益92億9800万円(前期比27.1%増)に対する進捗率は38%(前年同期32%)に及ぶ。 ムゲンエステート <3299> [東証S]は、中古不動産の再生を行う不動産買取再販を中心に、不動産開発、不動産小口投資、不動産賃貸、不動産内外装工事の各事業を展開。不動産買取再販事業では、首都圏1都3県を中心に投資用・居住用マンションの再生を手掛けており、自社で内外装工事も手掛けていることから、仕入れから工事、再販までを一気通貫で行うのが特徴だ。26年12月期業績は連結営業利益123億9800万円(前期比12.2%増)を予想。なお、5月15日に26年12月期第1四半期決算の発表を予定している。 LAホールディングス <2986> [東証G]は、新築不動産販売、再生不動産販売、不動産賃貸の3つのビジネスを中核事業として展開しており、再生不動産では一等地の中古マンションを中心に1棟または戸別に仕入れ、リノベーションを施したうえで富裕層や投資家向けに販売している。26年12月期の業績は連結営業利益175億円(前期比74.6%増)を予想。なお、5月14日に26年12月期第1四半期決算の発表を予定している。 トーセイ <8923> [東証P]は、東京経済圏を中心に不動産再生、開発、賃貸、ファンド・コンサルティング、管理、ホテルの6事業を展開。うち不動産再生事業は資産価値の劣化した不動産を取得し、デザイン性やセキュリティーの向上、環境配慮仕様などを施したうえで投資家やファンド、個人へ販売している。4月6日に発表した26年11月期第1四半期連結決算は営業利益が154億9900万円(前年同期比25.8%増)で着地。通期計画の営業利益246億1100万円(前期比10.2%増)に対する進捗率は63%(前年同期55%)に及ぶ。 ランドネット <2991> [東証S]は、独立系の中古不動産流通大手で、独自の不動産データベースと自社システムに基づく直接仕入れ・直接販売のダイレクト不動産に特徴がある。扱う物件もワンルームにはじまり、現在はファミリーや戸建、アパートなどに展開しており、施工チームを抱え、自社でリフォームの設計と施工を行う点が強み。26年7月期業績は連結営業利益45億300万円(前期比20.3%増)を予想している。 このほか、都心の築古ビルをスタートアップ向けオフィスや店舗、ホテルなどへ再生するリアルゲイト <5532> [東証G]や、中古の中小型ビルにテーマ性を加味してリノベーションするのが特徴のコロンビア・ワークス <146A> [東証S]、中古・リノベーション住宅の流通プラットフォーム「cowcamo(カウカモ)」を運営し、市場拡大の恩恵を受けやすいツクルバ <2978> [東証G]などにも注目したい。 株探ニュース