再点火のAI相場! これから乗るための厳選銘柄とは[大山季之の米国株マーケット・ビュー]<GW特集>

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コラム

◆"古豪復活"インテル、TIの好決算が米国株上昇をけん引

 米企業の2026年1-3月期決算が佳境を迎えている。序盤戦でマーケットにインパクトを与えたのは、4月22日(現地時間、以下同)に発表されたテキサス・インスツルメンツ(TI)と23日に発表されたインテルの好決算だ。インテルの1-3月期は、調整後の売上高、営業利益、EPS(1株当たり純利益)が市場予想を大幅に上回り、4-6月期のガイダンス(業績予想)も大きく上振れた。TIも同様に、1-3月期決算と4-6月期のガイダンスが好調だった。これらの発表を受けた翌日の株価は、TIが19%超の上昇、インテルに至っては23%超の上昇となり、四半世紀以上前のドットコム・バブル期につけた最高値をついに更新した。

 余波はインテルのライバル、アドバンスト・マイクロ・デバイセズの株価にも影響をもたらし、メモリー半導体のマイクロン・テクノロジー、サンディスクを含めて半導体メーカーは全面高の様相を呈している。これら半導体メーカーがけん引し、SOX指数(フィラデルフィア半導体株指数)は4月24日まで18連騰を記録。S&P500種指数 やナスダック総合指数 も揃って最高値を更新している。

 さらに4月29日に発表されたアルファベット、アマゾン・ドット・コム、メタ・プラットフォームズの決算も軒並み、市場予想を上回る結果となり、AI(人工知能)バブル論の震源となっていたマイクロソフトも堅調な決算内容を発表。その後のマーケットの反応は各社まちまちだったが、総じて好地合いが継続し、ひと月前の不透明感が嘘のような、まさにAI相場の再点火といった様相を呈している。

◆3月までの"AI全否定相場" から一変した米国株市場

 なぜ、わずかひと月で相場の景色が一変したのだろうか。改めて今年に入ってからの米国株市場を振り返ってみると、3月末時点でS&P500種指数は年初来約4.6%、ナスダック総合指数は約7.1%下落していたが、4月に入ってから29日までのパフォーマンスは逆に約9%超と約14%超の上昇となっている。マグニフィセント・セブン(M7)に限ってみても、3月末までは約12%下落していたが、4月以降は15%以上の上昇、テスラを除く6社なら20%を超えるパフォーマンスとなっている。

 この上昇相場転換のカタリストとなったのは、イラン情勢をめぐるトランプ大統領のTACO発言など、停戦合意への動きがあったことは確かだろう。だがそれだけが原因なのだろうか。4月に入って期待インフレ率が低下したことも大きい。中東の原油供給難による一定の物価上昇は避けられないとしても、「これ以上の悪化はない」との安心感がマーケットを支配するようになったのだ。原油の自給能力を有する米国の地の利が、マーケット心理を支えたとも言える。結果として今では、政治的な完全解決には程遠いにもかかわらず、中東情勢は米国マーケットにとって単なるノイズに過ぎなくなってきている。

 次期FRB(米連邦準備制度理事会)議長に就任予定のウォーシュ氏による、上院銀行委員会でのコメントも大きかったはずだ。FOMC(米連邦公開市場委員会)では金融当局内部において意見が割れていることが露呈され、AIによる生産性向上で利下げが出来るとは明言していないものの、ウォーシュ氏の発言には、その方向性が暗示されている。

 加えてより重要なのが、マーケットによるAIの再評価だ。昨年末から「AI過剰投資論」や「SaaSの死」といったネガティブな視点がクローズアップされていたが、3月末時点のバリュエーションを冷静に見ると、テスラを除いたM7の6社の予想PER(株価収益率)はいずれも20倍を切る水準となり、成長率からすれば過度に低い評価だった。言ってみれば、AIの成長性を全否定したのが3月までの相場だったのだが、4月以降にマーケットがその認識を見直したことが株価反転の真因ではないだろうか。

 AI相場の主役でありながら、今年に入って上値が重かったエヌビディアも、4月以降は上昇に転じている。バンク・オブ・アメリカ(BofA)が同社に対して「AIエコシステムへの投資はすでに完了し、他のビッグテックと比べて50%割安だ」との見解を打ち出し、今後の株主還元強化の可能性にも言及しているのを始め、マーケットは再び、同社の成長性を正当に評価し直している。これらの動きを見て感じるのは、GPU(画像処理半導体)で始まったAI相場の焦点が、DRAM、HBM(広帯域メモリー)、NAND、CPU(中央演算処理装置)へと拡大した後、ここにきて再び大元のGPUに焦点が戻りつつあるということだ。

 では、足もとで急騰する半導体株を今から買ってもよいのだろうか。エヌビディアについては、上値余地があるとのBofAの見解に賛成だ。AIデータセンターへの投資熱は依然旺盛で、コーニング、フジクラ <5803> 、シエナ、GEベルノバなどのAIインフラ企業やメモリー半導体メーカーの需要拡大は、循環取引とは無縁の実需によるものだからだ。実際、4月29日のハイパースケーラー4社の決算を見ても、設備投資にはまったくブレーキが踏まれていない。

 そうした全体の流れを考えれば、3月30日時点でエヌビディアの株価が予想PER10倍台まで売られていたのは明らかに行き過ぎであったし、時価総額5兆ドルを超えた同社には、今でもなお、バリュエーション上の"歪み"が残っている可能性がある。今後、S&P500の8000ポイント突破に向けたけん引役として、再びAI相場の中心に返り咲くことが期待できるだろう。

◆PER100倍超のインテルより割安なメモリー半導体株に投資妙味

 一方、インテルについては慎重な見方をしたい。確かに同社については、米国政府が筆頭株主となり、エヌビディアやソフトバンクグループ <9984>  等の出資、スペースXによる「テラファブ」構想への参画など、オールアメリカンの支援体制が築かれつつある。しかし株価急騰を受けて予想PERは100倍超に達しており、成長戦略の柱であるファウンドリー事業ではまだ目に見える成果が表れていない。米バロンズ誌は同社の現状を映画「フィールド・オブ・ドリームス」に例え、「野球場を作れば彼ら(観客)はやってきた。同様に工場を作れば彼ら(顧客)はやってくると考えていたが、まだやってきていない」と表現していたが言い得て妙だ。今回の株価急騰は、同社の成長力を証明したのではなく、マーケットが"CPUの復権"というカタリストを強く求めていた反動とも言えるだろう。


 個人的にむしろ魅力を感じるのは、物色がひと段落した感のあるDRAMメーカーだ。代表格のマイクロン・テクノロジーは、HBMの需要急拡大を背景に4月以降だけで株価が50%超上昇している。それでも現時点の予想PERは8倍程度に過ぎず、PER100倍超のインテルと比べれば、どちらに投資妙味があるかは明らかだ。

 このセクターを特に取り上げたのは、他にも理由がある。今年4月、「ラウンドヒル・メモリーETF(上場投資信託)」という新たなETFが米Cboeグローバル・マーケッツ傘下のBZX取引所(旧シカゴ・オプション取引所)に上場したからだ。このETFはマイクロン、サムスン電子、SKハイニックスのDRAM世界大手3社でポートフォリオの70%超を占めており、これによって、これまで米国株投資家には手の届きにくかった韓国2社への間接投資が可能になった。売上規模でマイクロンを凌ぐ世界トップ2でありながら、サムスン電子の予想PERは10倍弱、SKハイニックスは6倍弱という割安水準にある。このETFの登場は、メモリー半導体メーカーへの投資環境を劇的に変える可能性を秘めている。

◆K字拡大が続く米景気、キーワードは富裕層の"ドケチ消費" 

 次に今後の米国株市場を展望するうえで、米国経済の現況を整理しておきたい。現在の米国経済では「K字化」が進んでいる。ミシガン大学の消費者マインド調査では、22年春以来約4年ぶりの低水準を記録しており、景況感の悪化は顕著だ。それでいながら株価は急騰するという矛盾した状況が続いている。

 株高を支えているのは富裕層の堅調な消費だ。ただし高額商品への偏重というわけではない。社会情勢に明るい富裕層は景況感の悪化を自覚しており、「ヨーグルト(日用品)は倹約、だがスカイダイビング(贅沢)にはお金を惜しまない」(4月17日付ウォール・ストリート・ジャーナル紙)という消費行動をとっている。

 これを端的に示すのが、ウォルマートやダラー・ツリー、独企業のアルディ(非上場)など、かつて低所得者向けとされた小売業の顧客層の変化だ。各社のデータによれば、年収10万ドル以上の層の来店が4年前と比べて大きく伸びており、ダラー・ツリーやアルディでは同層の顧客数が2倍近くに達している。富裕層が賢く節約しながら消費する「トレードダウン」が消費市場全体を下支えしている構図だ。

 現在、米国では株式・投資信託などの金融資産の約90%を所得上位約10%の人々が保有している。上昇相場が続く中で富める者はますます豊かになり、「K字化」はさらに深まる。ことの良し悪しは別にして、この構造的な流れは当面止まらないだろう。

◆モメンタムに乗るための大きなチャンスは韓国半導体トップ2への投資

 こうした環境下で確かなのは、「現在の相場のモメンタムには乗るべきだ」ということだ。イラン情勢はWTI原油先物が1バレル120ドルを超えるような急激な悪化には至りにくいとみる。プライベートクレジット問題も、JPモルガン・チェースやゴールドマン・サックス・グループの決算を見る限り、過度な金融不安に発展するリスクは低そうだ。むしろ大きく売り込まれたブルー・アウル・キャピタルなどは、底値を拾うタイミングかもしれない。

 個別株の有力候補は、データセンター関連のフィジカル企業の代表格であるGEベルノバ、キャタピラー、そして再評価の進むエヌビディアだ。GEベルノバは年初来60%超の上昇にもかかわらず、4月22日発表の26年1-3月期決算では受注残が1600億ドルに達しており、年間売上高380億ドルの企業としては驚異的な成長力を示している。この3社にPayPayを加えてもよいだろう。株価がまだ20ドル前後と買いやすく、上値余地は小さくない。

 そして今回の本命は、前述の「ラウンドヒル・メモリーETF」だ。割安な韓国の世界的半導体企業2社への投資機会は、これまでの米国株投資家には存在しなかった。最先端HBMをリードするサムスン電子とSKハイニックスは、エヌビディア同様に再点火するAI相場の主役となるはずだ。加えてインフラ関連の「ファースト・トラスト・ナスダック・クリーンエッジ・スマートグリッド・インフラ指数ファンド」、防衛関連の「グローバルX防衛テックETF」といった旬のテーマETFを組み合わせれば、現在の相場環境に即した堅実なポートフォリオが構築できるのではないだろうか。


【著者】
大山季之(おおやま・のりゆき)
松井証券マーケットアナリスト 

1994年慶應義塾大学卒業後、国際証券(現三菱UFJモルガン・スタンレー証券)に入社。2001年ゴールドマン・サックス証券、10年バークレイズ証券、12年から金融コンサルを経て現職に至る。これまで、機関投資家向け株式営業を中心に、上場企業へのファイナンス提案、自社株買い、金融商品組成などに関わる。現在は松井証券のマーケットアナリストとして、米国のマクロ経済分析や企業、セクターの分析等を行う。

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