メガファーマ攻勢で躍動、次世代医療の主役「AI創薬」有望株リスト <株探トップ特集>
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―医薬品開発分野で加速するパラダイムシフト、国策の創薬支援も追い風に― 米国とイランの停戦交渉の期限が2週間延長されることとなり、米原油先物相場の上昇は一服したものの、軍事衝突前の2月の水準を大きく上回って推移している。資源価格の高騰によるインフレが世界景気に打撃をもたらすとの警戒感は払しょくされたわけではない。医薬分野は従来から景気変動に左右されにくいディフェンシブセクターと位置付けられているが、AIや量子計算などを活用し、研究開発期間の大幅な短縮と早期の収益化を目指す取り組みがグローバルで加速していることは注目に値する。次世代医療の主役といえる「AI創薬」関連の有望株を掘り下げていく。 ●創薬支援の結実に不可欠な新手法 高市政権の下で設置された「日本成長戦略会議」では、重点的な投資対象として戦略17分野が定められ、このなかにはAI・半導体や防衛産業と並び、 創薬が含まれている。3月10日には集中的に支援する61の製品・技術が選定され、医薬品分野では「バイオ医薬品・再生医療等製品」や世界初承認となる「ファーストインクラス製品」、有用性が最も高い「ベストインクラス製品」、「感染症対応製品」に対し優先的に支援をする方針が示された。 医薬品の研究開発は一般的に10年を超える時間と巨額の費用が必要とされている。新薬候補が成功する確率は基本的に極めて低く、医薬品メーカーは現行の主力薬の特許切れにより売上高が急減する「パテントクリフ(特許の崖)」を見越して経営をする必要にも迫られる。AIを活用して創薬の成功確度の向上と開発期間の大幅な短縮につながる「AI創薬」へのパラダイムシフトは、ある意味必然的な流れと言える。 事実、コンピューター上で研究開発を行う「インシリコ(in-silico)」の活用はここにきて急速に拡大している。AIや量子計算などの技術を併用し、治験前に安全性や有効性を確認する新世代の創薬手法は、国策として進む創薬支援が実を結ぶためにも不可欠なものとされており、中長期のリターン獲得を狙う機関投資家にとっても目を離すことのできないテーマとなっている。 ●米国の関連銘柄には下値抵抗力も メガファーマはすでにAI創薬企業との提携に乗り出している。米アルファベット傘下のアイソモーフィックラボは、ノバルティス やイーライ・リリー と戦略的な提携関係を構築。ジョンソン・エンド・ジョンソン とも研究活動で協力している。アイソモーフィックラボのデミス・ハサビスCEO(最高経営責任者)は、タンパク質構造予測AIモデルの研究で2024年のノーベル化学賞を受賞した人物だ。今年3月には、イーライ・リリーが香港のAI創薬企業インシリコ・メディシンと提携に乗り出したことも明らかになった。契約金額は最大で27億5000万ドルに上るという。 医薬品の研究開発活動は、多少の景気変動があったとしても、巨額の費用を投じて進められるものである。AI創薬関連の事業を手掛ける海外企業としてはほかにも、リカージョン・ファーマシューティカルズ がサノフィ やロシュ、バイエルなどとパートナー関係にあり、シュレーディンガー やセルタラ 、シミュレーションズ・プラス 、アブサイ が関連銘柄と位置付けられている。これらのなかにはイラン情勢の緊迫化で米株が調整色を強める状況下でも、下値の堅さを発揮する銘柄や、戻り歩調を鮮明とする銘柄が散見される。日本国内においてもAI創薬領域で競争力の発揮が期待できる企業が存在し、中期的な成長期待が膨らんだ状態にある。 ●フロンテオやウェリタスに注目 FRONTEO <2158> [東証G]は自社開発のAI「KIBIT」をもとに、リーガルテック、ライフサイエンス、サプライチェーン解析をはじめとする経済安全保障領域に事業を拡大。疾患に関連する遺伝子・分子のつながりを解析し、新薬開発の成功確度の高い標的分子を絞り込む「AI創薬支援プラットフォーム」を手掛け、製薬各社とのプロジェクトを進めており、関連銘柄の筆頭格となる。ライフサイエンスAI事業の売り上げ規模は26年3月期第3四半期累計(4~12月)で5億円強にとどまるものの、成長は著しくプロジェクト案件数も増加基調にあり、創薬開発の進捗に応じたマイルストーン収入などが加われば非連続的な成長を実現することとなる。 Veritas In Silico <130A> [東証G]は独自のAI創薬プラットフォームにより、製薬会社とともにmRNA標的低分子医薬品の創出に取り組む。従業員数は昨年末時点で19人と少数精鋭型の企業で、核酸医薬品を中心に自社パイプラインの創出にも注力。感染症及び精神・神経系疾患を対象として塩野義製薬 <4507> [東証P]と、がん領域を対象としてラクオリア創薬 <4579> [東証G]と提携。武田薬品工業 <4502> [東証P]や東レ <3402> [東証P]との共同創薬研究にも臨む。このうち塩野義と進める共同創薬研究では昨年5月にマイルストーンの達成を発表した。mRNAとAIという創薬トレンドの最先端に位置する企業とあって、創薬研究の進捗がそのまま株価の強烈なカタリストになる構図にある。 PRISM BioLab <206A> [東証G]は、細胞内での信号伝達を担うタンパク質間相互作用(PPI)創薬技術をもとに、創薬標的の選定と臨床化合物の開発を進める企業。エーザイ <4523> [東証P]とがんの治療薬の共同開発を進めるほか、ロシュなどとライセンス契約を締結した実績を持つ。今年3月12日には米レセプターAI(マサチューセッツ州)との創薬提携契約の締結を発表し、これを受けて株価は一時ストップ高に買われた。PRISMバの技術とレセプターAIの多目的AIナビゲーションエンジンを組み合わせ、革新的なヒット化合物の創出を目指すという。 アルフレッサ ホールディングス <2784> [東証P]は医療用医薬品卸売の国内最大手。25年1月に創薬ベンチャーのジェクスヴァル(神奈川県藤沢市)との資本・業務提携を発表した。ジェクスヴァルは武田からスピンアウトした企業で、希少疾患領域のなかで神経系や心循環器系向けの新薬の開発を進めるほか、独自開発のAI創薬プラットフォーム「RePhaIND」を持つ。同年3月にアルフレッサはAIスタートアップのアセントロボティクス(東京都渋谷区)との資本・業務提携も公表。医薬品物流や医療現場に向けた最新AI技術によるソリューションやサービスの導入を進めており、AIによる医療エコシステムの強化に向けた重要な役割を担っている。 カルナバイオサイエンス <4572> [東証G]はキナーゼ阻害薬の研究開発や、製薬企業向けの創薬支援サービスを展開。自社パイプラインとして血液がんや免疫・炎症疾患などに向けた新薬の臨床試験を進め、19年に米ギリアド・サイエンシズ に対しDGKα阻害剤に関する創薬プログラムをライセンスアウトし、これまで契約一時金やマイルストーンを合計で約40億円受領するなど実績を構築してきた。創薬支援領域ではキナーゼ阻害薬のプロファイリングサービスにおいてデータの正確さが高く評価されているという。AI創薬では信頼性の高いプロファイリングデータが不可欠となり、同社のサービスに対する需要が高まった状態にあると言える。 このほか、NEC <6701> [東証P]や富士通 <6702> [東証P]、日立製作所 <6501> [東証P]など電機大手もAI創薬関連のビジネスを展開。富士フイルムホールディングス <4901> [東証P]は創薬支援CRO(開発業務受託機関)領域において、AIを用いた創薬支援サービス「drug2drugs」を手掛ける。三井物産 <8031> [東証P]はAI創薬支援サービスのゼウレカ(東京都港区)を21年に設立。三菱商事 <8058> [東証P]とNTT <9432> [東証P]などもAI創薬に関する実証実験の開始を発表している。インテージホールディングス <4326> [東証P]は傘下のインテージヘルスケアがAI創薬プラットフォーム「Deep Quartet」をもとに、ドラッグデザインから実合成までをワンストップで提供するサービス体制を構築。神戸天然物化学 <6568> [東証G]はインテージヘルスケアとともにAI創薬の研究支援サービスで連携し、新規化合物の実合成を行う。 株探ニュース