明日の株式相場に向けて=怒涛のAI・半導体と炎立つ建設株
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きょう(8日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比2878円高の5万6308円と大幅高で4日続伸。目の覚めるような急騰劇であった。停戦交渉期限が引き延ばされる可能性はむしろ高いと見られていたが、実際にトランプ米大統領がイランへの大規模な軍事攻撃を2週間延期すると表明すると、東京市場は絵に描いたようにリスクオン一色に染まった。あまりにベタ過ぎるTACOだが、これにも筋書きがあった。時系列で起点となったのはパキスタンのシャリフ首相がSNSでトランプ大統領に対し交渉期限の2週間延長を求めたことで、その要請に応える形でトランプ大統領は振り上げた拳を下ろすこととなった。茶番と言ったら怒られそうだが、この予定調和のシナリオは早い時点で決まっていたと思われる。 それを裏付けるのが前日の米国株市場であり、NYダウが朝方に450ドル以上の下落を示していたが、その後はトランプ氏の翻意を見透かしたように下げ渋り、終盤に来て急速に戻り足に転じた。ナスダック総合株価指数やS&P500指数に関してはいずれも引け間際にプラス圏に足を踏み入れ、そのまま取引を終えている。今回の中東有事は、イランだけではなく、もはや米国も厭戦気分の絶頂に達していたと思われる。しかし、それでいて双方ともメンツがあって止められない構図となっていた。トランプ氏はホルムズ海峡の開放を条件に停戦に合意してもいい、つまりイランをいったん許す姿勢をみせたが、イランにすれば通航料を課すことを条件に挙げ、これをトランプ氏が承諾した形で、事実上このチキンレースはイラン側の勝ちに等しい。米国にすればイランに対する賠償金を払わないで済むという点でメリットはあるが、イランの石油資源の掌握をバックボーンに仕掛けた戦争で、それが思い通りに運ばなかったから、日本などアジア諸国にその失敗の代償を払わせるというスタンスは米国の威信を失墜させるに十分なエビデンスとなる。 また、今回米国がイスラエルと連携してイランに攻撃を加えたことは、核武装の阻止という大義名分はあるものの、これは世界の「警察官」という立場ではなく、グローバルな視点では力づくによる資源獲得、いわゆる「略奪者」としての立場がクローズアップされている。いったん停戦という果実は得ても、これは戦争終結とは意味が違う。東京市場は、きょうのところは至近距離でTACOトレードの恩恵にあずかった格好ではあるが、日経平均2900円高は企業のファンダメンタルズとは一切関係のないのアプローチで、ショート筋のポジション解消が終わった後も、なお上昇トレンドが継続すると考えるのは無理がある。 イランの後ろには中国やロシアの存在があり、代理戦争的な要素も強く、単なる中東有事では収まらない側面がある。少なくとも日本にとって遠くの戦争ではない。すぐにではなくとも、例えば中国による台湾有事のシナリオに火をつける可能性につながっていく。その時米国は全力でこれを阻止するだろうか。トランプ米大統領の迷走で、11月の米中間選挙では共和党の大敗の可能性が現実味を帯びてきた。中国古典「三国志」には諸葛孔明の名言として「治世は大徳を以ってし、小恵を以ってせず」と記されている。トランプ関税や、資源掌握を狙った戦争は米経済や米国民にとってはおそらく小恵の部類である。大徳から掛け離れた政治がアメリカファーストとなり得るはずもない。トランプ政権の次を見据えなければいけない高市早苗首相も難しい舵取りを迫られることになりそうだ。 大局的な話は置くとして、きょうの個別株に目を向けると確かに大きな地殻変動があった。キオクシアホールディングス<285A.T>がマドを開け、1兆3500億円超の記録的な大商いで大幅高に買われ上場来高値を更新したほか、古河電気工業<5801.T>がAIインフラ構築のニューヒーロー的なポジションで存在感を高めている。対してきょうは軟調推移で、逆に目立ったのが信越化学工業<4063.T>だ。半導体シリコンウエハーで世界トップだが、塩ビ樹脂部門の逆風が意識されているのか、株価は冴えを欠いた。しかし、同社株はレアアース関連でもありここは買い下がっておいて妙味ありとみたい。これ以外に、半導体関連では半導体パッケージ装置を手掛けるAIメカテック<6227.T>も株式分割後の仕切り直し相場で期待が持てる株価位置にある。 このほか、半導体セクター以外にも目を向けておきたい。7日の参院本会議で26年度予算が成立したが、国土強靱化の本格化で追い風が吹く建設関連株を今のうちにチェックしておきたい。大手ゼネコン以外では、大豊建設<1822.T>、淺沼組<1852.T>などは底値買い好機に見える。また、昨年大相場を演じた大盛工業<1844.T>も再度注目しておきたい。 あすのスケジュールでは、週間の対外・対内証券売買契約が朝方取引開始前に開示されるほか、前場取引時間中に6カ月物国庫短期証券の入札及び5年物国債の入札が行われる。また、3月のオフィス空室率が発表される。後場取引時間中には3月の消費動向調査が発表され、午後3時以降に開示される3月の工作機械受注額にも関心が高い。この日はIPOが1社予定されており、東証スタンダード・名証メイン市場にソフトテックス<550A.T>が新規上場する。海外ではポーランド中銀が政策金利を発表するほか、米国で重要指標の発表が相次ぎ、週間の新規失業保険申請件数、2月の個人所得・個人消費支出(PCEデフレーター)、2月の卸売在庫・売上高などが注目される。また、米30年債の入札も予定されている。(銀) 出所:MINKABU PRESS