深刻な教員不足をデジタルが救う!「校務DX」関連株を徹底解剖 <株探トップ特集>

投稿:

コラム

―26年度予算規模は前年度の8倍へ、過酷な現場を変えるツールを手掛ける実力派銘柄―

 イラン情勢の先行きにはいまだ不透明感が漂い、東京株式市場も引き続き外部環境に神経質な局面が続いている。原油価格の動向や地政学的リスクが投資家心理にのし掛かるなか、脚光を浴びやすいのは外部環境に左右されにくく、着実に需要が積み上がる分野だろう。

 そこで注目したいのが、深刻な教員不足とそれに伴う教員の過重労働という社会課題を解決する「校務DX」だ。文部科学省は2026年度予算で、次世代校務DX環境の全国的な整備に向けた支援を一段と加速させており、国を挙げた巨大な改革が静かに、しかし力強く進行する。関連銘柄のビジネスチャンス拡大につながり要注目だ。

●校務DX整備に予算を8倍に拡充

 「校務DX」とは、デジタル技術を通じて校務を効率化し、教育活動の質を高める取り組みのこと。19年に始まったGIGAスクール構想により、児童・生徒1人に1台の端末と高速大容量の通信ネットワークの一体的な整備が進められたが、社会的に問題視される教員の業務負担増大を解消するためのデジタル技術の導入は遅れていた。

 そこで政府は、 DXによる教員の業務効率化などに向けて、26年度から4年間かけてパブリッククラウドを前提とした次世代校務DX環境への移行を順次進める方針だ。文科省の26年度予算では、「GIGAスクール構想支援体制整備事業」予算を前年度の5億円から37億円に拡充し、「都道府県域での共同調達・共同利用等を前提とした次世代校務DX環境の整備」や「都道府県域での次世代校務DX環境整備に向けた準備」を支援する。また新たに「校務DX等加速化事業」を設け、3億円を投じて「今の環境でできる校務DX」と「環境整備を伴う校務DX」を推進する。

●採用者数は増えるも教員不足が深刻化

 校務DXの整備を急ぐ背景には、教員不足解消と働き方改革の推進が急務の課題となっていることがある。

 かつて「教師」といえば、「安定した職」「社会的に尊敬される仕事」として、多くの子どもや保護者から憧れの対象だった。しかし平成以降は、いじめ問題やモンスターペアレント、長時間労働、部活動の指導などの負担の大きさが社会的に可視化されるようになり、なり手不足が問題視されている。

 文科省が昨年12月に発表した公立学校教員採用選考試験の実施状況によると、全体の受験者総数は10万9123人(前年度比7059人減)で過去最少を更新した。また、全体の競争率(採用倍率)も2.9倍(前年度3.2倍)と過去最低となった。特に競争率が低いのが小学校で、2.0倍と「質の確保が難しくなる危険水域」と言われる水準に落ち込んでいる。

 全体の採用者数は、教員の年齢構成に起因する大量退職などに伴う採用者数の増加もあって、前年度比954人増の3万7375人と増えているものの、特別支援学級の増加や育休取得者の増加により必要な教員の数も増えており、なり手の減少と相まって教員不足は深刻化している。(中略)そのため、欠員が出ても代わりの教員が見つからず、「教員1人当たりの負担が増える」「教頭や副校長が授業を掛け持ちする」といった悪循環に陥っている。

●業務効率化で専門性を発揮できる環境を整える

 教員不足以前から、日々の業務負担が大きいことも問題となっていた。教員は授業以外にも、授業の準備や児童・生徒のサポート、部活動の指導、保護者の対応、職員会議や研修など、更には学校の施設管理など多岐にわたる業務を担っている。そのため、残業や自宅に持ち帰っての作業も多いとされ、それに時間や手間を取られることで、授業の質の低下にもつながりかねないと懸念されていた。

 こうした状況を打開するために整備が進められているのが校務のDX化だ。DXの導入で教員の業務負担を軽減し、教員の専門性を発揮できるようにすることで、子どもたちに対してより良い 教育を行えるようにするのが狙い。25年3月に公開された「次世代校務DXガイドブック」によると、校務DXを通じて、汎用クラウドツールの活用による教員の負担軽減・コミュニケーションの迅速化などに加え、ロケーションフリーでの校務実施や、校務系データと学習系データの円滑な連携を通じたきめ細かな学習指導などが求められている。

 そこで今回は、こうした校務DXに関連した製品・サービスを提供している銘柄のなかでも、大規模な基幹システムを手掛ける大手ITベンダーではなく、実務上で役に立つツールなどを手掛ける企業に注目してみたい。

●校務DXの関連銘柄

 POPER <5134> [東証G]は、学習塾など教育事業者向けにSaaS型コミュニケーション&業務管理プラットフォーム「Comiru(コミル)」を提供し、保護者とのコミュニケーションや学習の進捗管理、請求・決済などバックオフィス領域の効率化に貢献。また、自治体と連携し千葉県八千代市、習志野市、大阪市での部活動地域移行を支援しているほか、千葉県の「業務改善DXアドバイザー配置事業」にマイナビ(東京都千代田区)の専門アドバイザーとして各学校の校務DXをサポート。更に千葉県栄町では校務DXの推進や生成AI活用研修などを伴走支援している。

 内田洋行 <8057> [東証P]は、教室環境の整備から校務支援システムまで、教育ICT領域のハード・ソフト両面で高いシェアを有している。特に校務DXでは、教務系・保健系・学籍関係を一つのシステムで一元管理できる統合型の校務支援システム「デジタル校務」を提供し、児童・生徒にまつわる情報を一元管理することで、業務負担の軽減と効率化、教育の質の向上に貢献している。また中学校、高等学校、中高一貫校向けには校務支援システム「スコーレ」も提供している。

 テクノホライゾン <6629> [東証S]は、「映像&IT」や「ロボティクス」技術を基盤にFAや教育分野向けにロボット制御機器や光学機器などを展開している。教育分野では書画カメラや電子黒板などのハードに強いが、ソフト面でも教育現場のICT化を支援しており、特に校務DX分野では、通知表、要録、調査書、進路指導などの事務作業を支援する「スクールマスターZeus」を展開。また、画像編集や校内掲示物作成ソフトなども手掛けている。

 チエル <3933> [東証S]は、学校向け学習支援システムを中心にICT機器販売などを手掛け、教育現場のICT基盤を支えている。校務DX関連では、Googleを活用して校務のDXを支援するソリューション「らくらく先生ツール」を提供。スプレッドシートを使用して週案の作成・時数の計算を管理する「週案・時数計算ツール(学校用)」や、専用のスプレッドシート上で面談の日程調査用フォームを作成し、回答結果を表形式で表示する「面談調整ツール」、学校全体で共有しておきたい情報を可視化する「サイネージボード」などを提供している。

 サイバーリンクス <3683> [東証S]は、流通業界や自治体向けを中心に業界特化型のクラウドサービスを提供している。そのなかの学校・教育機関向けサービスとして、小中学校向け校務支援サービス「Clarinet(クラリネット)」では学籍・指導情報を一元管理し、成績処理業務など校務の標準化・簡便化を図ることで「校務の負担軽減」と、「児童生徒に先生全員で向き合える環境」を提供。そのほか、迅速に保護者への一斉メールを送信できるメール連絡システム「ぐるりんメール」も提供している。

 システム ディ <3804> [東証S]は、業種・業務に特化したパッケージソフトを核にさまざまなソリューションを提供しており、公教育ソリューション事業で公立小中高校向けクラウド型校務支援システム「School Engine(スクールエンジン)」を展開している。昨年9月には都道府県立学校から市町村立学校まで、全ての学校種(小学校・中学校・高等学校・特別支援学校など)に関わる校務支援、グループウェア、Webサービスなどの機能を一つのシステムに統合した「School Engine One」を発表しており、5月に開催予定の「EDIX(教育総合展)東京2026」でお披露目を予定している。

 JTP <2488> [東証S]は、人財育成ソリューションやDX開発を手掛けるデジタルイノベーション事業やICTシステムの構築・運用を行うICT事業、医療機器の保守サービスなどを手掛けるライフサイエンス事業を展開しており、昨年9月に次世代校務DX支援ソリューションをリリースした。SIerや業務システムベンダー(ASP事業者)を対象に、次世代の校務DX環境の整備に伴うクラウド化、ネットワーク統合・セキュリティー強化、データ連携、運用支援までを包括的にサポートするもので、校務DXを提供する企業を支援する。

 すららネット <3998> [東証G]は、AIを活用した対話型ICT教材「すらら」「すららドリル」を展開している。「すらら」は先生役のアニメーションキャラクターと一緒に、児童・生徒1人ひとりの理解度に合わせて進めることができるICT教材で、採点を自動化することで採点作業を効率化するだけではなく、個々の「つまずき」をデータで可視化するため、教員がデータ分析に割く時間を削減できるといった特徴がある。また、学習状況のモニタリングなど学習管理機能も充実している。

株探ニュース

オンラインで簡単。
まずは無料で口座開設

松井証券ならオンラインで申し込みが完結します。
署名・捺印・書類の郵送は不要です。