明日の株式相場に向けて=くすぶり続ける中東と背後に迫るリスク
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きょう(25日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比1497円高の5万3749円と大幅続伸。トランプ米大統領の思惑通りというべきか、イランとの間で停戦の話が浮上し、これが今回のリスクオフ相場のバロメーターともなっている原油先物価格の下落を誘い、原油価格と逆相関でリンクされた株価上昇を演出した。しかし、冷静に見れば停戦が成立してもそれは戦争終結に向けた踊り場に過ぎない。 前日ときょうの上昇で日経平均は確かに2200円以上も水準を切り上げたが、目先の戻り足は氷の上をスライドしているようなもので、歓声も悲鳴も聞こえないひたすら無機質にドリフトしただけの相場である。ここが仕込み場かどうかという判断は、未来を覗けない人間にとって不可能といってもよい。丁半博打的に短期逆張りで対処する手はあるが、打診買いあるいは打診売りにとどめるよりないところだ。テクニカル的には日経平均の日足一目均衡表を見ておくところであろう。雲を下抜けた後、マドを開けて切り返しに転じたが、上空にはそれなりに厚い雲があり、ここを完全に突き破るのは容易ではない。足もとで求められるのは中東情勢における宥和政策の始動だが、仮にこれをマーケットが好感しても長続きはしないはずである。何といっても、トランプ米政権側は1カ月程度の停戦を念頭に置いて動いている。つまり、思惑通りに停戦が実現してもまた宙ぶらりんの状態でマーケットは更に1カ月間も悶々とさせられることになる。 そして週初の当欄でも触れたが、そうこうしているうちに背後からはAIインフラへの過剰投資が絡んだプライベート・クレジット問題がジリジリと距離を詰めてきている感がある。今回の中東有事は地政学リスクであり、経済・金融とは土俵が違う。したがって世界的な株式市場のトレンド崩壊の直接的要因とはなりにくいが、こちらに気を取られてバランスを崩しているところに、至近距離まで間を詰めたプライベート・クレジット問題が経済に重いボディーブローを放つこととなる。さすがにリーマン・ショックのようなシステミック・リスクには至らなくても「信用不安」のトリガーを引けば、そこからマーケットを取り巻く投資マネーの退潮が加速する可能性は十分にある話だ。 足もとの東京市場に目を向ければ、何といっても信用買い残の膨張度合いが激しい。東証が前日開示した信用残高の直近データ(19日申し込み現在)では、買い残が5兆8025億円と2006年以来約20年ぶりの水準に膨らんでいる。対して信用売り残は若干増勢とはいえ1兆円をわずかに上回った程度、弱気筋が雲散している状態が逆に怖さを醸し出している。ちなみに、今から20年前の06年当時といえば、マーケットは好調な企業業績を拠りどころに強気の塊だった。だが、周知の通りその1年後にサブプライム問題が取り沙汰され、更に1年後にリーマン・ショックの大暴落へと発展していくことになる。今、騒がれ始めたプライベート・クレジットの融資先は全体の4割強がIT関連、いわゆる過剰投資懸念に晒されているAI絡みだ。これから解約請求が噴出したとしても、銀行とは切り離されているという部分ではまだ安心感があるが、ファンドの破綻が相次げばそうも言っていられなくなる。 このプライベート・クレジット問題が厄介なのは、単独ではなく2段構えの悪材料となっていることである。米アンソロピックの新AIモデルが“SaaS”を介したビジネスモデルを大きく揺るがし、完全淘汰とは言わないまでも最後まで立っていられるソフトウェア企業はそれほど多くはないという認識が広がったことが、ネガティブな思惑として底流している。AIの計算資源に関して言えば大規模化していくことが必定であり、データセンター建設の必要性は否定されなくても、企業への融資という観点では相当な目利きでなければ焦げ付く可能性が高い。 そこに投資しているマネーが逃げ出そうとするのは当然で、他がそのような素振りをみせれば、我先にという解約請求の嵐となる。資産運用会社のブルー・アウル・キャピタル<OWL>の償還手続き停止は、結果的に氷山の一角だったということになり得る。サブプライム問題の時も当初、専門家は口を揃えて大したことはないと言っていたが、結局はリーマン・ショックの導火線となった。中東に目を奪われているうちに、意識から消えている後門の狼にも注意を払っておく必要がありそうだ。 あすのスケジュールでは、週間の対外・対内証券売買契約、2月の企業向けサービス価格指数がいずれも朝方取引開始前に発表されるほか、後場取引時間中には日銀が基調的なインフレ率を捕捉するための指標を開示する。また、後場取引終了後に国債市場特別参加者会合が行われる。海外では南アフリカ中銀、ノルウェー中銀、メキシコ中銀などが金融政策決定会合を行い、政策金利を決定する。米国では週間の新規失業保険申請件数への注目度が高い。また、米7年物国債の入札も予定されている。(銀) 出所:MINKABU PRESS