イラン危機で原料供給難、尿素急騰で思惑の「肥料関連」株に視線集中 <株探トップ特集>
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―日本は化学肥料原料のほぼ全量輸入、肥料ショック再来後の値上げ効果を先取りへ― 米国とイスラエルによるイランへの軍事行動が長期化するとの懸念が広がっている。海上輸送の停滞による影響が警戒されるなかで、原油価格とともに肥料価格も世界的に高騰するとの見方が強まっている。株式市場においては原材料高を背景とした値上げによる業績押し上げ効果を先取りする形で、 肥料関連株が物色されるようになった。緊迫化した中東情勢が安定化する道筋がみえないなか、関連株に対しては思惑的な資金流入が継続するシナリオが横たわる。 ●ホルムズ海峡封鎖で船舶足止め ホルムズ海峡が事実上の封鎖となったことを受けて、肥料として用いられる尿素を積載した船舶が足止めを余儀なくされることとなったと伝わった。石油や天然ガスといった資源が豊富な中東地域は、これらを原材料とする肥料の一大供給地でもある。尿素に関しては、過去に中国が輸出を制限して国内向けに配分をするようになった影響もあって、今回の中東危機以前から世界的に供給不安がくすぶった状況にあった。ロシアによるウクライナ侵攻が始まった2022年でも肥料不足の懸念が広がったが、今回のイランを巡る軍事衝突を受け再び「肥料ショック」が発生することとなった。 北半球では気温が上昇し多くの地域で農産物の作付けが始まる時期に差し掛かろうとしている。トウモロコシの作付け期を迎える米国をはじめ、すでに世界的に尿素価格が大幅に上昇しており、農家の経営に深刻な打撃が出ることが危惧されている。農林水産省によると、日本は化学肥料の原料である尿素、リン酸アンモニウム、塩化カリウムのほぼ全量を輸入している。24年7月~25年6月の1年間では、尿素はマレーシアから、リン酸アンモニウムは中国からが輸入量全体の7割超を占め、塩化カリウムはカナダからが8割弱を占める。 株式市場では、調達コストの上昇が肥料の製品価格に転嫁され、関連各社の収益を大きく押し上げるとのシナリオに基づき、肥料関連銘柄に投資マネーが流入するようになった。米国市場では3月に入り肥料大手のCFインダストリーズ・ホールディングスが2月末比で一時38%高。同業のLSBインダストリーズ は3割超、CVRパートナーズ も4割の上昇となる場面があり、上昇一服後も高値圏を維持している。 国内の肥料関連株も3月に入り騰勢を強めることとなった。中小型株が主体で値動きは軽く、それゆえ短期的な過熱感を高める結果となったものの、構造的に不足感のあった尿素に関しては、状況が劇的に改善に向かうことが見込みにくい現実もある。中東情勢が日々目まぐるしく変化するなか、肥料関連株については持続的な上昇が見込まれるとして、多くの投資家からの注目を集める展開が続くことが期待できそうだ。 ●片倉コープなどに注目 片倉コープアグリ <4031> [東証S]は肥料業界の売上高では国内最大級。前身の片倉チッカリンが丸紅 <8002> [東証P]系、コープケミカルが全国農業協同組合連合会(JA全農)系だったことから、丸紅とJA全農がそれぞれ20%超を保有する主要株主となっている。26年3月期は構造改革に伴う一時的な費用の発生で20億円の最終赤字を計画するものの、主力の肥料事業では生産拠点の再編などを進め収益力の強化を図る方針。31年3月期に最終利益17億円以上、ROE(自己資本利益率)6%以上を目指す。 多木化学 <4025> [東証P]は化学肥料大手で水処理薬剤などにも展開。2月9日発表の26年12月期業績予想は肥料などの販売価格上昇を見込み増収を計画する一方、原料調達での不透明要因を踏まえ2ケタの減益予想となっている。その後のイラン危機による肥料関連株物色の流れを受けて株価は上昇ピッチを速めた。完全人工栽培の「バカマツタケ」を巡る思惑で同社株は過去に急騰することがあったが、20年6月の上場来高値8720円と昨年来安値の半値戻しの水準(5762円)まではまだ距離がある。PBR(株価純資産倍率)は0.9倍近辺だ。 OATアグリオ <4979> [東証S]は10年9月に大塚ホールディングス <4578> [東証P]グループの大塚化学から分離独立後、14年6月に上場。23年にプライム市場からスタンダード市場に移行した。殺虫・殺菌剤が主力だが、水耕栽培肥料の国内シェアでトップ。植物の免疫力を高めて成長を促進させるバイオスティミュラントも手掛ける。26年12月期は営業利益予想が1割増と3期ぶりの過去最高益更新を計画。株価は今月に入り上場来高値を更新した。 ●イチネンHDや太平発も要マーク イチネンホールディングス <9619> [東証P]は自動車リース関連や機械工具販売が主力。事業の多角化を進め、農業関連の前期の売上高構成比率は11%程度となっている。23年に肥料の製造販売を手掛ける日東エフシーをグループに迎え入れた。19年に東証1部上場を廃止し一時的にファンド傘下となった日東エフシーは北海道各地に工場を持ち、ポテトチップス用のジャガイモなどさまざまな農作物向けの肥料を供給。関連会社で海外の有力肥料メーカーの代理店業務も展開する。イチネンHDはパーキング事業や海外事業の成長に注力しつつ、農業関連を主力事業の一つに育成する姿勢を示している。 太平洋興発 <8835> [東証S]は北海道・釧路の炭鉱運営企業をルーツとし、現在は輸入炭やバイオマス燃料販売、不動産事業を手掛ける。グループ会社の訓子府石灰工業は、北海道北見市に隣接する訓子府町に鉱山を保有し、炭酸カルシウム肥料や苦土生石灰を製品群に持つ。前期の売上高に占める肥料事業の割合は5%程度で26年3月期第3四半期累計(4~12月)では営業損失の状態にあるが、販売数量は増加傾向にあるといい、今後黒字転換を果たせるか注視される。 ユーグレナ <2931> [東証P]はミドリムシを活用した健康食品・化粧品の販売とともに、バイオ燃料事業を展開。バイオ燃料のスケールアップを図る一方で、アグリ事業の育成にも取り組む。25年度に微細藻類入り機能性飼料・肥料の本格販売を開始。昨年10月には微細藻類のユーグレナとクロレラを配合した100%有機肥料や有機培養土の新製品を発表した。アグリ事業に関しては新商品の開発やM&A、海外進出などにより、中期的に売上高を100億円以上の規模に拡大させる構想を示している。 このほか、生花販売事業のビューティカダンホールディングス <3041> [東証S]は昨年4月に液肥の製造販売企業の子会社化を発表。メニコン <7780> [東証P]はコンタクトレンズやケア用品の開発で蓄積した技術を生かし、堆肥化促進材や稲わら分解促進材を販売する。フマキラー <4998> [東証S]は殺虫機能を持つ肥料をラインアップに揃える。 高野豆腐事業の副産物である微生物塊を原料とした旭松食品 <2911> [東証S]の有機質肥料「ソイバイオソイル」は化学肥料を抑えた農作物の栽培に寄与するものとして期待されている。レアアース関連株と位置付けられている東洋エンジニアリング <6330> [東証P]は海外での尿素プラントに対し独自技術のライセンスを供与するなど多数の実績を誇る。鉄鋼商社の阪和興業 <8078> [東証P]は尿素の取扱量で国内トップクラスだ。 株探ニュース