「出口は近い」イラン停戦後に急反発必至の厳選17銘柄<小川浩一郎・米国株"上昇のナラティブ">

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コラム

◆「イラン戦争」は両者が"勝利宣言"をして停戦へ

 まず、多くの投資家を悩ませている今回の「イラン戦争」についてだが、結論から言えば、すでに戦争は8合目を迎えていて、終結へ向けたカウントダウンに入っているのではないだろうか。プロイセン(現ドイツ)の軍事理論家、クラウゼビッツの言葉を引くまでもなく、トランプ米大統領にとっては、イランへの攻撃は「政治の手段」に過ぎないからだ。

 確かにこの戦争の背景には、伝えられている通り様々な事情や思惑があるのだろう。米国が中東での石油利権の拡大を狙ったことも確かだろうし、イランの宿敵であるイスラエルの謀略に乗せられてしまったという可能性もあるだろう。米国内ではエプスタイン問題から国民の目をそらすのが目的だという見方さえある。

 日々、様々な情報がメディアを通して伝えられる。だが、それに過度に惑わされるべきではないだろう。今回の戦争では、イスラエルは国内の右派を、イランは革命防衛隊を強く意識せざるを得ない。したがって、両国からはタカ派的な発言が発信されがちだ。だが、戦闘終結に向けた交渉は、常に秘密裏に進められるものだ。交渉は難航するだろうが、双方が「出口」を探っていることは間違いがない。

 いま、米国のマーケット関係者の間でささやかれているメインシナリオは、遠くない将来、米国とイスラエルによる攻撃終結宣言とイランによるホルムズ海峡の開放が実施され、平時に回帰するというものだ。イスラエルが強硬な姿勢を崩さない可能性もあるが、そうなれば、中間選挙を控えたトランプ大統領が、自国に大きなダメージが及ぶ前に、ある段階で今回の戦争から一方的に手を引く。トランプ大統領はすでに「体制転換」は望んでいないと発言をしているし、アフガニスタンやイラクの時のように、地上兵を動員することも望んでいない。もし、そんなことをしたら、ただでさえ低下していた米国内のトランプ大統領への支持率が大きく落ち込んでしまうからだ。

 一方、イランの報復攻撃もセンセーショナルに伝えられがちだが、冷静に見てみれば、米国軍に死傷者が出るような攻撃は避けていて、本気で全面戦争をする気などないことが分かる。ボクシングでは判定決着時に、最終ラウンドのゴングが鳴った時に両選手が手を挙げて勝利をアピールすることがある。そのようなイメージで事態は収束に向かうのではないか。米国としては、敵の最高指導者の首を取り、敵軍を弱体化させたことは間違いないのだから堂々と「勝利宣言」をすればいい。片やイラン政府も、米国とイスラエルから自国を守ったと国内外にアピールできる。幸か不幸か、戦争にはボクシングのような判定決着はない。だから、双方にとってはそれで十分なはずなのだ。

 開戦以来、日本を含めたアジア各国の株価の下落と比べて、米国の主要指数の株価がそれほど下落していないのも、株式マーケットが今回の戦争の進展について、状況を冷静に捉えているからだ。もちろん事態が長期化すれば、いかに中東への石油依存度が高くないとは言え、米国でもインフレ圧力は高まっていく。先週開催されたFOMC(米連邦公開市場委員会)でのパウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長の発言は、その良い警告となったのではないだろうか。

◆TACOならぬ"TASOトレード"が発動、米国株は急騰局面に突入

 では事態収束後、株式マーケットはどのように動いていくのか。ここで重要なカギを握るのが、ベッセント財務長官の助言だ。株式マーケットは、相場が大きく動くときは暴走するという性質を持つ。下落相場の時は、空売り筋が仕掛けて、必要以上に株価を下げる。ウォール街出身のベッセント氏は、当然こうしたマーケットの性質を熟知していて、空売り筋の動向も観察している。そして、空売りが積み上がり、行き過ぎたと判断した時にトランプ大統領に助言をし、大統領自らが空売り筋を締め上げる。その後は、強烈な踏み上げ相場がやってくるというわけだ。

 これは実は昨年来、お馴染みの現象で、昨年4月、トランプ関税発動から短期間で株価が急反発したのも同じパターンだ。TACOトレードの「C」(チキン=怖気づく)を「S」(スクイーズ=踏み上げる)に変えて"TASOトレード"と命名したい実情があるのだ。そして足もとでは、ダウ工業株30種平均やS&P500種指数、ナスダック総合指数など主要指数のチャートが200日移動平均線を下抜きつつあり、そろそろ"TASO"が発動されてもおかしくないタイミングに来ている。これに"停戦"というカタリストが加われば、一気に株価は急騰局面を迎える、というのがメインシナリオだ。 

 もちろん、イスラエルの意向に引きずられ、戦争が長期化するというリスクもなくはない。だが、確率は低いだろう。むしろ潜在的に大きなリスクとなり得るのは、米金融市場で懸念が高まっているプライベートクレジット・ファンドの問題だ。JPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモンCEO(最高経営責任者)が指摘したこの問題は、2008年の世界金融危機(リーマン・ショック)との共通点も多い。ノンバンクという不透明な舞台での異変であり、トランプ政権としても、イスラエルに付き合い続けて金融リスクを放置する余裕はないはずだ。

◆「第2のパランティア」が期待できる防衛関連銘柄とは? 

 では次に、こうしたメインシナリオで進むことを前提に、今後の個別銘柄への投資戦略について考えてみたい。まず、イランでの停戦が実現した場合、真っ先に株価の急反発が期待できるのが、世界最大規模のクルーズ船運航会社のカーニバルと、北米を中心とした格安航空会社、サウスウエスト・エアラインズだ。両社とも開戦以来、大きく売り込まれているが、業績自体は悪くない。特にカーニバルの株価は必要以上に下落しているが、その分大きな反発も期待できるだろう。

 政策面では、4月から本格化するトランプ減税の還付への期待がある。低価格ファッションのロス・ストアーズやディスカウント大手のTJXは、日本での知名度は低いが業績・株価ともに右肩上がりで、地合いの変化とともに上値を追う可能性が高い。

 今年の6月以降にスペースXの上場が予定され、注目度が高まるだろう宇宙関連銘柄でも、いくつかの有望企業が挙げられる。中・小型ロケットの開発・製造、打ち上げサービスを中心に、関連ソフトウエアやシステムソリューションを一括して手掛けるロケット・ラボは、宇宙ビジネスの総合企業としてスペースXに対抗できる唯一の企業ではないかと言われている。

 業績はまだ赤字が続いているが、バイオベンチャーとは違って財務基盤はしっかりしている。何と言っても株価チャートの形が非常に良く、かつてのGAFAMもそうだったが、乱高下を繰り返しながら着実に下値を切り上げている。特に一定期間、揉み合いを続けた後は急騰するというサイクルがあり、まさに今のチャートはそこに当てはまっている。このセクターの中では4月以降、最も期待できる銘柄ではないか。

 他にも地球観測のプラネット・ラボや、衛星ブロードバンドのASTスペースモバイルも面白い存在だ。これまで、宇宙関連セクターは将来の夢に賭ける"理想買い"のステージだったが、そろそろ商用化への道も見え始めてきて、"現実買い"のステージに入ってきたのではないかと感じる。

 もしイラン戦争が収束したとしても、世界的な防衛費の拡大の流れは止まらない。そう考えれば、やはり防衛関連銘柄も外すことができない。このセクターでは昨年まで、パランティア・テクノロジーズが脚光を浴びていたが、今回は「第2のパランティア」となる可能性がある銘柄をいくつか挙げてみたい。

 1社目はクレイトス・ディフェンス&セキュリティ・ソリューションズで、米国防総省やロッキード・マーチン、ボーイングなどの防衛関連大手企業を主要顧客に、比較的低価格で軍事情報システムを提供している。事業規模はまだ小さいが、ひょっとしたら今後、パランティア同様の成長が期待できるかもしれない注目銘柄だ。同じく防衛関連のシステムインテグレーター、マーキュリー・システムズも成長余地は大きい。

 3月17日に上場したばかりの軍事用のドローン開発のスウォーマーは、早速、株価が吹き上がっている。ウクライナやイランの戦争で証明されたように、現代の戦闘の主力となる製品に強みを持つだけに、今後もマーケットの期待を集めるだろう。さらに準大手のL3ハリス・テクノロジーズは、ここに挙げた他社と比べて事業規模が大きく、株価の急上昇は期待できないだろうが、好業績が続いていて、安定した成長が見込める。

◆AIに置き換えられない企業と置き換えられてしまう企業

 次は次世代イノベーションの筆頭、光電融合の代表銘柄2社を挙げたい。光学部品メーカーで、先日、エヌビディアとの戦略提携が発表されたコヒレントと、光ネットワーク・システムの世界大手企業、シエナだ。いずれも昨年来、株価は急騰しているが、上値が重いAI(人工知能)関連企業と比較して、まだ上値余地は大きい。

 そして、本来は実力がありながらも、「SaaSの死」で売られ過ぎてしまった企業も狙い目だ。こうした企業はかなりの数に上るだろうが、中でもサービスナウとクラウドストライク・ホールディングス、セールスフォースの3社はその代表格だ。言うまでもなく、AIによってソフトウエア企業の全てが必要とされなくなるわけではない。各社とも株価に底入れの兆しがあり、バリュエーション的にも割安で、大きな投資妙味を感じる。

 一方、ソフトウエア企業の中には、確かにAIの進化によって必要とされなくなる可能性が高い企業もある。そして、この峻別こそが重要になるのは言うまでもない。私見だが、画像や映像制作がAIに置き換えられるアドビや、旅行情報を提供するトリップ・ドット・コム・グループなどは、その可能性が高いのではないか。要は凡庸な技術力やサービスしか持たない企業、言い換えれば事務作業の代行に過ぎないサービスを展開している企業は厳しいということだ。

 意外かもしれないが、いまのAIの進化を考えれば、動画配信世界最大手のネットフリックスも、淘汰の対象となる可能性があると見ている。確かに同社は、映像ビジネスの世界で革命を起こしてきた。ワーナー・ブラザース・ディスカバリーの買収騒動に見る通り、既存の映像事業者に比べれば、収益力ははるかに高い。だが、これは言ってみれば「プロ」に対する優位性であって、いまの映像ビジネスの潮流は、主体が「アマ」へと移っていることを忘れてはならない。YouTube動画の隆盛が証明しているが、「アマ」がAIによって「プロ」に負けない能力を発揮できる環境になれば、同社のビジネスモデルの優位性が根底から覆る可能性がある。

 そしてもう1社、"大穴"銘柄として挙げたいのは、エネルギー・インフラ企業のコンフォートシステムズUSAだ。税制優遇などでハイテク企業の集積しているテキサス州を地盤としていて、地味ながらもいわゆる「HALO(陳腐化されない実物資産)」銘柄の典型例と言える。業績も絶好調で、右肩上がりのチャートの形もすこぶる良い。日本企業に例えれば、最先端企業の集積地区に特化したきんでん <1944> とでも言える存在だ。

◆エヌビディアの株価上昇はカタリスト次第か

 最後に「イラン戦争」という突発的な出来事によって注目がそれてしまったが、本来、米国株市場で最も大きな問題だったハイパースケーラーのAIへの過剰投資にも触れておきたい。端的に言えば、エヌビディアの株価が足踏みしているのはなぜかということだ。26年1月期の好決算に続いて、先日、開催された年次開発者イベント「NVIDIA GTC 2026」でもジェンスン・フアンCEOは素晴らしい、夢のある発表をした。だが、市場の反応は冷ややかだった。

 やはりこれは、現在のAI開発競争の中で、エヌビディアがオープンAIを中心にした"スターゲート連合"に属していると目されていることが大きい。マーケットは依然として、この連合の"循環投資"と言われても仕方がない資金の流れに対する懸念を払拭できていないのだ。

 米主要指数の上値が重いのも、突き詰めればこの連合への市場の評価が定まらないからだ。逆に何らかのカタリストが生じて、エヌビディアの株価が上抜けるようなことがあれば、競合のブロードコムやアドバンスト・マイクロ・デバイセズ、アマゾン・ドット・コム、アルファベット、マイクロソフト、メタ・プラットフォームズなどを含めて、ハイテク各社の株価も持ち直し、主要指数も上昇トレンドを取り戻すだろう。

 カタリストとして一つ、可能性が考えられるのはオープンAIの上場だ。年内にも予定していると伝えられるこのイベントが成功すれば、米国株市場の流れを一変させるかもしれない。だが現時点では、しばらくはAI関連の主力企業の上値余地は限られると考えるべきだろう。


【著者】
小川浩一郎(おがわ・こういちろう)
岩井コスモ証券投資調査部長/チーフアナリスト

1967年生まれ。外資系コンサルティング会社で戦略立案、M&Aアドバイザリー等に従事した後、投資ファンドで投資実務や資産運用に携わり、2006年、岩井コスモ証券に入社。現在は米国株式を中心に外国株式に関する業務全般を担当。テレビ東京「Newsモーニング・サテライト」、インターネット配信「ストックボイス」等に随時、出演。長年の市場分析経験を生かしたストーリー性のある銘柄・セクター分析に定評がある。社団法人・日本証券アナリスト協会検定会員、米国公認会計士・米国証券アナリスト・有資格者。

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