DXで観光地の課題解決! 「オーバーツーリズム対策」関連株に注目 <株探トップ特集>

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コラム

―政府は対策予算を8.3倍へ異例の拡充、人流解析や価格最適化が商機を掴む―

 訪日外国人客数(訪日外客数)の急激な増加を受けて、各地でオーバーツーリズム(観光公害)が顕在化している。政府は3月10日、日本を訪れる外国人を事前に審査する「電子渡航認証制度(JESTA)」の創設などを盛り込んだ入管難民法の改正案を閣議決定し、2028年度からの導入を目指すとした。また、訪日客向け消費税免税制度の廃止なども議論されているが、効果のほどは不確実な部分が多い。

 オーバーツーリズム対策は観光客の分散促進や地方誘客、駐車場など交通インフラの整備、混雑緩和のための DXの導入など幅広い切り口を内包している分野でもある。国が対策に本腰を入れ始めた今、関連銘柄のビジネスチャンス拡大が期待されている。

●訪日外国人客数は25年4268万人に

 日本を訪れる 訪日外国人は近年、増加の一途をたどっている。政府は16年に「30年に訪日外国人旅行者数6000万人」との目標を定めたが、日本政府観光局(JNTO)の推計によると25年の年間訪日外客数は4268万3600人(前年比15.8%増)で、それまでの過去最高であった24年の3687万148人を580万人以上上回って年間の過去最高を更新し、目標に向かって順調に増加している。

 2月18日に発表された1月の推計値では、中国政府が昨年11月以降、自国民に対して日本への渡航を控えるよう呼びかけていることや、昨年は1月下旬であった旧正月(春節)が今年は2月中旬となったことによる影響が一部でみられたことから359万7500人と前年同月比で4.9%減となったが、引き続き高水準で推移している。最新の統計(2月推計値、25年12月暫定値)は18日午後4時15分に発表予定だが、前述の春節の影響などもあり、増勢が続く公算が大きい。

●各地で顕在化するオーバーツーリズム

 こうした訪日外国人客数の増加に伴い、有名観光地をはじめとして全国の至る所で問題となっているのが、オーバーツーリズムの問題だ。

 オーバーツーリズムとは、特定の観光地への観光客の過度な集中によって引き起こされる交通渋滞、自然環境破壊、地域住民の生活への影響といった問題のこと。これまでにも有名観光地では、イベントの事前予約制の導入や宿泊税の導入など独自の対策を進めてきた。ただ、政府はインバウンドの更なる受け入れに対する国民の不安を払拭し、観光を我が国における「戦略産業」として持続的に発展させていくためには、局所的・短期的な対応が中心となっていたこれまでの対策に加えて、中長期的な視点からより実効性のある面的な対策を一層促進していく必要があると指摘。その対策に本腰を入れ始めており、26年度の観光庁関係の予算額1383億4500万円(前年度比2.4倍)のうち「オーバーツーリズムの未然防止・抑制をはじめとする観光地の受入環境整備の促進」に100億円を充てる方針で、これは前年度比で8.3倍という異例の拡充となる。また、25年度補正予算でも「オーバーツーリズム対策等観光交通確保事業」に67億7000万円が充てられており、本気度がうかがえる。

●対策の最適解を導き出すにはDXが重要

 オーバーツーリズムで注視されるのは、インバウンドにおける消費の「質の変化」といわれている。かつての「爆買い」に代表されるモノ消費から、体験や文化を重視する「コト消費」へとシフトが進み、そのコト消費がSNSなどを通じて特定の人気スポットに集中したことが、オーバーツーリズムの一因とされている。これを解消するためには「集客」ではなく「管理」が必要とされるが、混雑を回避しつつ1人当たり消費単価を上げるには膨大なデータを処理し、リアルタイムで最適解を導き出すDXが重要となる。

 そこで今回は、オーバーツーリズム対策に関連するDXを手掛ける企業を中心に、関連銘柄をピックアップしてみた。

●人流の分析やダイナミックプライシング関連に注目

 DXによるオーバーツーリズム対策といえばNEC <6701> [東証P]や富士通 <6702> [東証P]など大手ITベンダーがメディアなどによく取り上げられるが、今回は大手以外に注目したい。

 ニューラルグループ <4056> [東証G]は、AIアルゴリズム研究とそこで開発したAI技術の社会活用が主な事業。高度なAI解析技術に強みがあり、昨年には建設技術研究所 <9621> [東証P]と共同で、AI画像解析技術を活用した駐車場満空把握ソリューションを熊本県阿蘇市の道の駅に提供した。また、京都市の嵐山地域でもエッジAI画像解析技術を活用した人流データの取得を京都市から受託して実施しており、警備計画の資料などに利用されている。

 セーフィー <4375> [東証G]は、クラウド録画サービスで国内最大級の「Safie(セーフィー)」を開発・運営する。AIカメラにより、観光地などで人の滞留状況や通行量をリアルタイムで計測し、自動的に人流解析を行っており、混雑状況の可視化などオーバーツーリズム対策に貢献。近年でも富士急行 <9010> [東証P]の「富士芝桜まつり」で、ライブ中継を行い来訪前に状況を確認させることにより、人流の分散を促している。

 unerry <5034> [東証G]は、国内最大級のリアル行動データプラットフォーム「Beacon Bank」を運営する。特定の観光スポットの混雑状況をリアルタイムで解析することで、混雑していない場所のクーポンを組み合わせるなどデータドリブンな観光経営を支援しており、22年からはNTTドコモ(東京都千代田区)とも連携。特定のスポットにおける人流や訪れた人々の性年代などの属性把握などにより、リテールマーケティングや市街地回遊の活性化支援などに取り組んでいる。

 ギックス <9219> [東証G]は、データを活用したコンサルティング業務やツールの開発などが強み。デジタルスタンプラリー「Mygru(マイグル)」を用いた通行時間帯変更や公共交通機関利用などの混雑解消行動にインセンティブを付与することでオーバーツーリズムの解消に貢献しており、昨年10月から12月にかけては神戸市の慢性的な渋滞解消に向けた取り組みにも参加している。

 手間いらず <2477> [東証S]は、宿泊予約サイトの一元管理システムであるサイトコントローラー「TEMAIRAZU」を展開する。「TEMAIRAZU」では、宿泊施設独自のアルゴリズムを自動化し、稼働率に応じたプランの価格調整や販売チャネルの最適化などを支援。機動的に価格調整を行うことで、ピーク時の高単価設定による「質の向上」とオフピークへの誘導を促進している。

 フォルシア <304A> [東証G]は、膨大・複雑なデータから必要な情報を抽出する検索テクノロジーを基盤に事業を展開しており、なかでも観光業界向けに強みを持つ。昨年10月から12月にかけて香川県の小豆島でオーバーツーリズム対策を目的とした実証実験プロジェクトに参加。AI画像認識技術を活用した実証実験により、観光客のリアルタイムな動向分析と混雑予想モデルの有効性を検証した。

 このほか、駐車インフラを提供することでオーバーツーリズム対策に貢献する日本駐車場開発 <2353> [東証P]やパーク24 <4666> [東証P]、駅周辺の案内図(地図広告)で独占的シェアを有し、デジタルサイネージによる多言語対応の観光案内から「穴場スポット」への誘導を行う表示灯 <7368> [東証S]、通信機能でリアルタイムにゴミの蓄積状況を管理・分析し、ゴミが溢れる前に溜まったゴミを自動で圧縮するIoTスマートごみ箱「SmaGO」をフォーステック(東京都千代田区)と展開しごみ問題の解決を目指すBIPROGY <8056> [東証P]などにも注目したい。

株探ニュース

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