プライベートクレジット変調で押し目形成、金融株投資の勝算を探る <株探トップ特集>
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―イラン発リスク回避のダブルパンチも、波乱収束ならファンダメンタルズ評価へ― 中東情勢の緊迫化で株式市場のボラティリティが高まるなか、英住宅金融会社の破綻を機にプライベートクレジット市場が変調をきたし、金融株は売り込まれた。全体相場においてはイラン危機による悪材料の織り込みが進みつつあるが、下押し圧力が強まった金融株の足もとの水準については仕込み場と捉えるべきなのか。今後の投資戦略を組み立てるうえでのポイントを踏まえつつ、リスク要因が後退した際に反騰機運の高まりが期待できる個別銘柄を取り上げていく。 ●「フロス」なら過度な懸念は後退 イスラエルと米国によるイラン攻撃を契機として原油価格が大幅に上昇し、世界景気に対する悪影響が懸念されている。日本経済についても原材料コストの上昇を通して景気下押し要因となるとの試算が見られる。一方、原油などエネルギー価格の上昇は総合的な物価上昇要因でもあり、インフレ率が加速する可能性がある。基本的にインフレを抑えるためには、中央銀行において金利引き上げと金融引き締めという金融政策が採られることが多い。金利上昇は金融機関の業績を支援し、株価評価にもプラスとなると考えられてきたが、現状を見る限り国内外とも金融株は下げている。 戦乱の拡大を懸念した「質への逃避(リスク資産の売却)」局面に陥ったため、リスク資産である株式は売られても仕方がない。原油価格上昇によるインフレは、いわゆる「悪いインフレ」であり、引き締め策は採られない可能性があるという見方もある。そもそも原油価格上昇は景気全般を冷やし、企業業績の悪化要因となるため、既存債権が劣化し、いわゆる「不良債権」の増大によって金融機関の業績に悪影響を与えるという懸念もある。不良債権問題については見通しが困難な面があり、世界的な金融不安にまで波及するのか否か、注視するしかない。 とはいえ過去をみると、質への逃避的な行動は時間とともに終息するのが常となっている。また、欧米を中心に英住宅金融会社マーケット・フィナンシャル・ソリューションズ(MFS)の破綻などノンバンク・プライベートクレジット業界の金融不正疑惑という問題が表面化している。確かに、金融株下落の要因としては首肯できるかもしれないが、問題が広がる可能性がどこまであるのだろうか。局地的かつ個社レベルでの問題にとどまるのなら、本邦金融機関への直接的な影響はない。サブプライム問題に端を発したリーマン・ショックや日本のバブル崩壊に匹敵するようなバブルなのかどうか、フロス(小さな泡)に過ぎないなら、過度な懸念が一気に後退する可能性がある。 3月に入り原油高、株安、金利上昇、日本においては為替円安が進んだが、戦乱が短期で収束した場合には、いずれも反転の可能性があるだろう。半面、紛争が継続した場合にはキャッシュの希少性が高まることとなる。過去のオイルショックの教訓を踏まえてみても、長期金利については上昇が継続する可能性が高い。そもそも日本経済は、緩やかながら金利上昇局面にあり、その点でも金利上昇の蓋然性は高いと見られる。 ●会計ルール変更機運の生保には出遅れ感 インフレと金利上昇から恩恵を受ける 金融株の代表格は三菱UFJフィナンシャル・グループ <8306> [東証P]や三井住友フィナンシャルグループ <8316> [東証P]、みずほフィナンシャルグループ <8411> [東証P]といったメガバンクであり、波乱相場が一服した局面で押し目を狙う投資家は一定程度存在するに違いない。SOMPOホールディングス <8630> [東証P]やMS&ADインシュアランスグループホールディングス <8725> [東証P]、東京海上ホールディングス <8766> [東証P]などメガ損保も押し目買いの候補としては有望だ。 生命保険業界は、保険契約(負債)が長期にわたるため、運用(資産)面でも長期債を多く保有している。金利上昇局面では、資産サイドの債券価格が下落するため、一時的に含み損が拡大する。ゆえに、株価には出遅れ感がある。先日、日本公認会計士協会は、生命保険会社が保有する「責任準備金対応債券」の会計上の取り扱いを変更する案を発表した。金利上昇によって債券価格が下落しても、機械的に減損処理を行う必要がなくなる。実態面は変わらないが、会計上の損益の振れが小さくなるという効果があり、業界にとってはマイナス要因ではない。 ソニーフィナンシャルグループ <8729> [東証P]は銀行や損害保険にも事業展開するが、主力は生命保険事業だ。昨年9月にソニーグループ <6758> [東証P]から分離上場した。過去に同じコード番号で上場していたこともある。従来の生保とは異なり、ライフプランナーが顧客の人生設計に合わせて保障内容を組み立てるオーダーメイド設計とコンサルティングに特色がある。債券ポートフォリオの入れ替えなどの影響で26年3月期の業績予想は下方修正され、純利益は前期比で37%減益となる見込みだが、保有契約高、保有契約件数ともに増加するなどファンダメンタルズは良好であり、今後も法人契約を中心に事業拡大を図る方針だ。 ライフネット生命保険 <7157> [東証P]は、インターネット通販を主体とする生命保険の草分けで、KDDI <9433> [東証P]傘下のauフィナンシャルホールディングスが18%の株式を保有。事業面でもauじぶん銀行を通じた団体信用生命保険契約の獲得が収益に貢献している。団体信用生命保険では京都信用金庫との提携も進めており、インターネット経由での個人保険の直販とともに事業拡大を目指している。29年3月期を最終年度とする中期計画では、会社定義による包括資本(会計上の自己資本に保険契約価値を加味した数値)を2000億~2400億円(25年3月期末実績は1670億9000万円)に増加させる目標だ。配当を実施していないためTSR(株主総利回り)向上を掲げ、株価3000円以上という目標も明示している。 SBIインシュアランスグループ <7326> [東証G]は、SBIホールディングス <8473> [東証P]傘下の保険持ち株会社として、生命保険、損害保険、少額短期保険に展開しており、足もとでは特に生命保険事業が伸びている。グループ各社との連携や地域金融機関を通じた団体信用生命保険の契約高拡大が寄与。28年3月期を最終年度とする中期経営計画では、シナジー、テクノロジー、ニッチを基本戦略に純利益40億円、配当性向30%前後の目標を掲げている。 ●独自のビジネスモデルを持つ異色の銀行も SBI新生銀行 <8303> [東証P]は、旧日本長期信用銀行が経営破綻によって一時国有化され、SBIの子会社となった後、25年7月に公的資金を完済。同年12月に再上場を果たした。銀行だけでなく、昭和リース、アプラスなどのノンバンクを傘下に持っている点が特色。「第4のメガバンク構想」を標榜し、法人業務での地域金融機関連携を進めると同時に、グループ企業と連携した預金、証券、資産運用、住宅ローンの獲得など個人業務も拡充している。足もとの業績は好調で、各段階利益は過去最高益を更新する見込み。現行中期経営計画の収益性目標は前倒し達成が見込まれ、株主還元を含めた新たな戦略の発表が待たれる。 セブン銀行 <8410> [東証P]は、セブン&アイ・ホールディングス <3382> [東証P]のATM(現金自動預け払い機)プラットフォームとして設立されたが、同社の事業再編を受けて、昨年9月に伊藤忠商事 <8001> [東証P]と資本・業務提携を結んだ。現状ではセブン‐イレブンの店舗内に設置されたATMが中心だが、今後は伊藤忠傘下のファミリーマートへも設置・置換を進める方針で、国内ATM数にはアップサイドが見込まれる。足もとの業績はクレジットカード事業の減損などがあって低調とはいえ、ポテンシャルが評価される可能性もありそうだ。 信金中央金庫<8421>は、全国の信用金庫を会員とする協同組織形態の金融機関で、議決権のない優先出資証券が上場されている。優先出資者は、年1回の配当と年2回の優待が受けられ、株式と同様に売買できる(ただし1口単位)。基本的に全国の信用金庫から預け入れられた資金を有価証券や貸し出しによって運用する事業構造で、金利上昇は資金運用収益の増加につながる。業績は堅調に推移しており、26年3月期の利益予想は上振れが見込まれる。今期からスタートした中期経営計画では、28年3月期の純利益450億円程度を目標とするが、やや保守的との見方もある。 銘柄選択の手間を省くなら、銀行株ETF(上場投資信託)もおすすめできる。NEXT FUNDS 東証銀行業株価指数連動型上場投信 <1615> [東証E]は、東証銀行業株価指数に連動するETFとして歴史があり、純資産規模も3000億円に達する。グローバルX 銀行 高配当-日本株式 ETF <315A> [東証E]は、TOPIX銀行業高配当指数に連動するETFで、銀行株の配当に着目した厳選15銘柄で構成された指数が対象。昨年1月に設定された新顔であり、純資産規模が200億円に満たない点には留意も必要だ。 株探ニュース