2025年【値上がり率】年間ランキング ベスト50 <年末特別企画>

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コラム

 2025年の東京株式市場は、春先の"暴落"から秋の"史上初の5万円突破"へと変貌を遂げた激動の1年となった。極めてボラティリティ(株価変動率)の高い相場展開となる中、日経平均株価の年初来高値と年初来安値の値幅は過去最大の2万1844円を記録。バブルが崩壊した1990年の値幅(1万9169円)を35年ぶりに塗り替えた。安値に対する上昇率も70%を超え、歴史的な大相場となった。

 日経平均は春先、トランプ米大統領による関税政策を巡る米中対立の激化を警戒して急落し、4月には一時3万1000円を割り込む場面がみられた。しかし、夏場に米国の利下げ再開やAI(人工知能)関連の需要拡大を支えに切り返すと、8月12日に約1年1ヵ月ぶりに史上最高値を更新した。さらに10月、高市新政権の発足に伴う「高市トレード」が発動すると相場は異次元の上昇をみせ、27日には未踏の5万円大台乗せを果たした。年末にかけてはTOPIXやNYダウが最高値を更新する一方、日経平均は「AIバブル」への警戒から上値の重さが意識されるなど、強弱感が交錯する相場展開が続いた。

 今回は、2025年に株価の居所を大きく変えた銘柄に注目し、今年の株価上昇率ベスト50をリストアップした。下表では、25年12月30日終値の24年12月30日終値に対する上昇率が大きい順に並べ、その上昇の主因を記した。

●低位材料株にテンバガー相次ぐ

 値上がり率トップに輝いたのは、エス・サイエンス <5721> [東証S]。3月の暗号資産投資事業への参入表明で動意づくと、6月には実業家でインフルエンサーの三崎優太氏が大株主に浮上したことが材料視され、株価は同月17日に昨年末終値(21円)から20.1倍となる422円まで跳ね上がった。その後は100円台まで大きく調整したものの、12月15日に株主割当による新株予約権の無償発行と暗号資産投資枠拡大を発表すると、再び急騰して200円台後半まで値を戻し、大納会終値は259円と「テンバガー(株価10倍)」を達成した。

 ランキング上位には、Sサイエンスを筆頭に、2位のイオレ <2334> [東証G]、4位のコンヴァノ <6574> [東証G]、5位のBitcoin Japan <8105> [東証S](旧堀田丸正)と昨年末に株価が2ケタだった銘柄が目立つ。いずれも低位材料株の強みを発揮して、年の途中でテンバガーを達成した。4社に共通する株高要因は、暗号資産に関連する新規事業に期待が集まったことだ。加えて、イオレはAIデータセンター 事業の開始、コンヴァノは26年3月期業績の大幅な上方修正も好感された。イオレとコンヴァノはともに上場来高値を大幅に更新している。

 3位のキオクシアホールディングス <285A> [東証P]は、 AIデータセンターの新設・増設ラッシュを背景にNAND型フラッシュメモリーに特需が発生したうえ、 半導体メモリーの需給ひっ迫で価格が高騰していることも株高思惑につながった。株価は米サンディスクの急伸などを手掛かりに9月上旬から動き出し、11月11日に昨年末比8.8倍の1万4405円をつけて上場来高値を大きく塗り替えた。

 6位に入った配電制御設備専業メーカーのかわでん <6648> [東証S]は10月29日、26年3月期の経常利益予想を大幅に上方修正し、実に34期ぶりとなる最高益更新見通しを示したことが評価された。半導体関連の大型工場や首都圏を中心とした市街地再開発などの堅調な建設需要が追い風となる。同時に、創業100周年の記念配当を実施する形で配当を大幅増額したほか、11月10日には1株から5株への株式分割を発表するなど、好材料満載で株価は上場来高値圏を快走する展開となっている。

●高市銘柄やフィジカルAIにも熱視線

 選出リストには、マテリアル( レアアースなど重要鉱物)、 造船、 サイバーセキュリティ、創薬・先端医療、AI・半導体など、高市政権が掲げる戦略分野に関連する銘柄が並んだ。中国の輸出規制もあって話題性が高まるレアアース関連では、南鳥島沖でのレアアース泥の採掘事業に参画している10位の東洋エンジニアリング <6330> [東証P]を筆頭に、東京大学「レアアース泥開発推進コンソーシアム」のメンバーである三井海洋開発 <6269> [東証P]が17位、レアアースのリサイクルに関する研究開発を積極推進しているアサカ理研 <5724> [東証S]が25位に入った。

 32位の三井E&S <7003> [東証P]は、7月に政府がレアアース開発のための深海調査母船を新造するとの報道を受けて、海洋調査船の受注実績を持つことから思惑が広がったほか、造船の切り口でも注目を集めた。造船関連としては、日米連携や政府による造船業振興策を追い風に、中堅造船所の内海造船 <7018> [東証S]が21位、船舶用ディーゼル機関専業のジャパンエンジンコーポレーション <6016> [東証S]が31位、船舶用電子機器で世界大手の古野電気 <6814> [東証P]が36位にリスト入りしている。

 高市首相が安全保障の観点で重視するサイバーセキュリティ分野では、FFRIセキュリティ <3692> [東証G]が19位にランクイン。同社はサイバーセキュリティ専業で標的型攻撃に特化したソフト開発に強みを持ち、国産セキュリティの筆頭格として買いが集中した。原子力分野で豊富な実績を有する産業機器メーカーで、核融合発電関連と位置付けられる29位の助川電気工業 <7711> [東証S]も「高市トレード」の一環として急騰劇を演じた。また、11位の住友ファーマ <4506> [東証P]は絶好調な業績に加え、高市政権の戦略分野「創薬・先端医療」のキーカンパニーとして投資資金が向かった。

 そのほか、10月ごろから急速に人気が高まったAIとロボティクスの融合である「フィジカルAI」に関連する銘柄として、FA関連を中心にロボティクス分野で実績を重ねるテクノホライゾン <6629> [東証S](27位)、フィジカルAIの共同研究プロジェクトを開始したビーマップ <4316> [東証G](34位)、AIロボティクスを設計・開発するIT企業の豆蔵 <202A> [東証G](48位)、ロボットの開発支援を手掛ける菊池製作所 <3444> [東証S](50位)が年末にかけて急浮上した。こうした国策に絡む銘柄群は、息の長い投資テーマとして2026年もマークしておきたい。


 ●今年の株価上昇率ランキング【ベスト50】

  ※12月30日終値の昨年12月30日終値に対する上昇率
   (株式分割などを考慮した修正株価で算出)
    ―― 対象銘柄数:4,207銘柄 ――
   (今年の新規上場銘柄、地方銘柄は除く)

      銘柄名    市場  上昇率(%) 株価  個別ニュース/決算速報/テーマ
1. <5721> Sサイエンス 東証S   1133   259  株主割当による新株予約権の無償発行と暗号資産投資枠拡大を引き続き材料視 (12/16)
2. <2334> イオレ    東証G   778   412  AIデータセンターや暗号資産分野に経営資源振り向けショートカバーで需給相場様相に (08/21)
3. <285A> キオクシア  東証P   536  10435  データセンター建設ラッシュでNAND型メモリーに一段の特需期待 (10/24)
4. <6574> コンヴァノ  東証G   457   112  今3月期業績予想の大幅増額修正を受け物色人気集中 (08/15)
5. <8105> BTCJPN 東証S   443   228  米バックトHD傘下企業が筆頭株主に (08/05)
6. <6648> かわでん   東証S   387  2532  26年3月期業績予想を引き上げ年間配当は100円増配へ (10/30)
7. <4889> レナ     東証G   377  1416  サウジアラビア政府医療機関と臨床などで連携の基本合意書を締結 (10/07)
8. <6993> 大黒屋    東証S   363   111  新経営体制の発足などをリリース (12/30)
9. <3902> MDV    東証P   330  1688  日本生命が1株1693円でのTOBを発表 (12/16)
10. <6330> 東洋エンジ  東証P   323  3080  南鳥島沖でのレアアースの試験掘削来年1月開始で思惑 (10/27)
11. <4506> 住友ファーマ 東証P   312  2318  高市政権の戦略分野『創薬・先端医療』のキーカンパニーで海外マネー誘引の思惑 (11/20)
12. <4570> 免疫生物研  東証G   311  1895  空売り買い戻しを誘発し需給相場に再び火がつく (11/25)
13. <3556> リネットJ  東証G   294  1002  10-6月期(3Q累計)経常は黒字浮上・通期計画を超過 (08/14)
14. <4255> THECOO 東証G   282  2405  今期経常を2.4倍上方修正 (11/13)
15. <5706> 三井金属   東証P   278  17635  今期経常を一転1%増益に上方修正・最高益、配当も15円増額 (11/11)
16. <7409> エアロエッジ 東証G   266  2126  チタンアルミブレード好調で7~9月期営業益4.9倍 (11/14)
17. <6269> 三井海洋   東証P   256  11900  今期最終を22%上方修正・最高益予想を上乗せ、配当も20円増額 (11/12)
18. <7084> スマイルHD 東証G   253  2930  株主優待制度の導入を好感 (05/16)
19. <3692> FFRI   東証G   251  7020  高市トレード象徴株の一角で踏み上げ相場の思惑 (10/09)
20. <4412> サイエンスA 東証G   247  1869  アクセサリー売り上げ好調で25年8月期業績は計画上振れ (10/09)
21. <7018> 内海造    東証S   241  14160  円安効果で26年3月期業績予想を上方修正 (10/14)
22. <3997> Tワークス  東証S   237   462  4-6月期(2Q)経常は黒字浮上、株式分割に伴い配当予想を修正 (08/08)
23. <2033> コスピブル  東証EN   233  32280 
24. <5985> サンコール  東証S   232   922  今期経常を28%上方修正・最高益予想を上乗せ、配当も5円増額 (11/14)
25. <5724> アサカ理研  東証S   220  2590  レアアース関連株に投資資金の流入加速 (12/29)
26. <5243> ノート    東証G   219  1632  米グーグルとの連携で思惑膨らむ (12/29)
27. <6629> Tホライゾン 東証S   218  1160  高技術を駆使しAI・ロボティクス分野が活躍領域に (12/22)
28. <3541> 農業総研   東証G   211   765  SOMPOによるTOB価格767円にサヤ寄せ (12/26)
29. <7711> 助川電気   東証S   211  6080  「高市トレード」で核融合や量子コンピューター関連が物色人気化 (10/06)
30. <300A> MIC    東証S   203  3090  上期経常は2.1倍増益で着地 (11/13)
31. <6016> ジャパンエン 東証S   202  12110  造船業支援関連の報道相次ぎ関心が向かう (11/27)
32. <7003> 三井E&S  東証P   202  5560  GS強気の投資判断を追い風に7000円台乗せ (11/28)
33. <4013> 勤次郎    東証G   201  1228  今期経常を5%上方修正・最高益予想を上乗せ (11/12)
34. <4316> ビーマップ  東証G   200  1127  フィジカルAI共同研究「プロジェクトHawaii」始動 (11/06)
35. <9553> マイクロアド 東証G   199   679  株主優待制度の導入と26年9月期33%営業増益見通しを好感 (11/17)
36. <6814> 古野電    東証P   197  7980  今期経常を一転24%増益に上方修正・最高益、配当も40円増額 (10/10)
37. <7273> イクヨ    東証S   192   750  ステーブルコイン活用のB2B越境決済インフラ事業に出資 (08/28)
38. <3905> データセク  東証G   191  1995  エヌビディア製GPU搭載サーバーでアジア最大級のAIスーパークラスター構築へ (07/04)
39. <5161> 西川ゴム   東証S   186  3215  今期は一転最終増益の見通しで配当予想を大幅増額修正 (02/12)
40. <7138> TORICO 東証G   185   427  第三者割当増資と暗号資産事業の新展開を材料視 (12/18)
41. <4062> イビデン   東証P   182  6731  日経平均への採用でパッシブ系資金の流入期待膨らむ (10/28)
42. <3845> アイフリーク 東証S   181   236  4-6月期(1Q)経常は黒字浮上・通期計画を超過 (08/14)
43. <5817> JMACS  東証S   181  1235  上期経常は5.8倍増益・通期計画を超過 (10/15)
44. <1948> 弘電社    東証S   179  5000  上期経常は一転20%増益で上振れ着地 (10/31)
45. <218A> リベラウェア 東証G   176  1244  韓国Sequor Robotics社と業務提携で覚書締結 (09/18)
46. <4464> ソフト99  東証S   172  4015  MBOに対抗しエフィッシモが1株4100円でTOB実施 (09/16)
47. <7318> セレンHD  東証G   170  1033  11月30日を基準日として1株から4株への株式分割を実施へ (10/22)
48. <202A> 豆蔵     東証G   170  3395  フィジカルAI関連のキーカンパニーで目先買い戻し観測 (11/27)
49. <155A> 情報戦略テク 東証G   170  1332  1-9月期(3Q累計)経常が36%増益で着地・7-9月期も3.4倍増益 (11/13)
50. <3444> 菊池製作   東証S   168   708  フィジカルAIブームでロボット試作開発需要の拡大に期待膨らむ (12/03)



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