木下智夫氏【日銀会合後に金利急騰、年末年始の東京市場を読む】 <相場観特集>
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―長期金利は一時2.1%と27年ぶり高水準、日本株は掉尾の一振なるか― 大納会まで残すところ6営業日となった。日経平均株価は5万円を回復するなど戻り基調にある一方で、日銀の利上げ決定後に長期金利は急騰し、一時2.100%と27年ぶりの高水準をつけた。例年、「掉尾の一振」がささやかれる株式市場において、金利高と株高は併存できるのか。年末年始のマーケット展望について、インベスコ・アセット・マネジメントの木下智夫グローバル・マーケット・ストラテジストに話を聞いた。 ●「金利急上昇も一部セクターに影響限定、来年は内需系セクター優位か」 木下智夫氏(インベスコ・アセット・マネジメント グローバル・マーケット・ストラテジスト) 22日の日本株は前週末の米テック株の上昇が追い風となった一方、長期金利の急上昇を受けて電力・ガスや鉄道など公益関連株が売られる形となった。日銀の利上げ継続姿勢が示され、財政が想定以上に悪化するとの懸念が広がっている。為替は19日の決定会合の結果発表後にドル高・円安に振れ、日銀の政策対応が後手に回るとの見方も海外を中心に出ているようだ。 日銀の次回の利上げについては来年6~7月と想定している。インフレ率自体は今後、ガソリン税の暫定税率の廃止や電気代の補助金による影響もあって伸びが鈍化していく。半面、来年の名目賃金の伸びは3%程度と高い水準を維持しそうだ。実質賃金がプラス基調を維持し、内需がしっかりとした動きとなり企業業績全体が改善に向かうシナリオが想定できる。期待インフレ率は足もとで1.7%程度まで水準を切り上げてきたが、来年中には2%が見通せるようになる。長期金利でいえば2.3%となる計算だ。実体経済の改善を背景とした「良い金利上昇」が起こる可能性がある。 米国では来年に2回の利下げが実施されるとみている。2回の利下げで政策金利が中立金利に達することになるだろう。年明けに公表される12月の米雇用統計が「少々悪い」程度では、1月のFOMCで利下げになるとは考えにくい。そうしたなか、1月には米連邦準備制度理事会(FRB)の次期議長が指名され、5月に交代となる見込みだ。1月の利下げがなかった場合、ハト派的な次期議長の就任後の6~7月に2会合連続で利下げが行われると予想している。インフレになっても景気拡大を目指すFRBの姿勢が鮮明となれば、米国の景気敏感株を押し上げることになるだろう。 米株式市場でAI関連株についてはPER(株価収益率)の一段の上昇は期待しにくく、選別色が強まることになると考えているが、4~6月期に米国経済が潜在成長率を上回る高成長を遂げる見込みとなれば、過去の好景気時に中小型株が物色されたのと同様の動きになるに違いない。米国株の動きを支えにして、日本株は上値を追う展開となると期待できる。日経平均は2026年末に5万6000円程度、この先の1ヵ月間では5万~5万2000円の範囲で推移すると想定している。短期的には金融セクターへの物色意欲が高まった状態が続きそうだ。年末までには円安の流れは一服するだろう。来年は円高基調となり、内需系セクターへの選好姿勢が強まると考えている。 (聞き手・長田善行) <プロフィール>(きのした・ともお) 1987年に野村総合研究所に入社。ワシントン・オフィスやシンガポール・オフィスなどでの海外経済・資本市場分析業務や世界銀行でのコンサルタント業務などを経験した後、野村証券に転籍。香港での中国・アジア経済調査責任者を経て、東京においてチーフエコノミスト、チーフ・マーケット・エコノミストを歴任。2019年4月よりインベスコ・アセット・マネジメントに入社、現職。日米欧や中国、主要新興国を含むグローバル経済・金融市場の分析・情報を投資家やメディアなどに提供している。1987年京都大学経済学部卒、1996年ノースウェスタン大学経済学修士課程修了(経済学修士)、日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)。 株探ニュース
