AI需要拡大で市況高騰、面目躍如の「半導体メモリー」関連株リスト <株探トップ特集>
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―米マイクロンの巨額投資報道も、主要メーカーの投資余力拡大に期待膨らむ― 半導体メモリー価格の急騰が市場参加者の大きな関心を呼んでいる。AIデータセンター を新設する動きが加速するなか、メモリーの需給がひっ迫しており、SSD(ソリッド・ステート・ドライブ)などのストレージに加え、ゲーム機を含め家電製品全般の価格に上昇圧力を掛けると考えられている。供給課題の解消には一定の時間を要するとみられており、関連企業の業績に強い追い風が吹いている。 ●在庫は「ほぼ枯渇」との見方も AIデータセンターは高い処理能力とともに、大規模なデータを保持するための設備の導入が求められる。データを一時的に記憶する DRAMでは、より高性能な「HBM(広帯域メモリー)」の採用が広がると見込まれている。データを長期的に保持する NAND型フラッシュメモリーにおいてもストレージの増大に伴って需要の拡大が予想されている。 台湾の調査会社TrendForce(トレンドフォース)によると、NAND型フラッシュメモリーの需要は11月も強い状況が続き、製品の月平均価格上昇率は20~60%を超えたという。また、DRAMのサプライヤーの在庫は「ほぼ枯渇」した状況にあり、契約価格は急上昇すると予想している。 こうしたなか、日本経済新聞電子版は11月29日、「米メモリー大手のマイクロン・テクノロジーは広島工場(広島県東広島市)に新しい製造棟を建設する」と報じた。記事によると、投資額は1兆5000億円で、このうち経済産業省が5000億円を補助する方針。マイクロン・テクノロジーによる次世代メモリーの出荷時期は2028年頃となるという。 マイクロンの広島工場は、DRAM専業で12年に経営破綻したエルピーダメモリの主力工場である。報道通りの巨額投資となれば、半導体製造装置メーカー各社の受注面で大きなポジティブインパクトをもたらすことになる。 ●急騰劇演じたキオクシア株 21世紀の日の丸半導体は落日の憂き目に遭うこととなった。目下メモリー市場では韓国勢のサムスン電子やSKハイニックス、DRAMのマイクロンなど海外企業が席巻。日本企業はNAND型フラッシュメモリーでキオクシアホールディングス <285A> [東証P]が最大手となり、なんとか高いプレゼンスを発揮し続けている。 そのキオクシアは東芝のメモリー事業を母体とし、昨年12月にプライム市場に上場。四日市工場と北上工場を米サンディスク と共同で運営する。AIデータセンター向けのメモリー需要に対する期待が膨らむなかで、株価は今年9月頭の2000円台から11月には一時1万4000円台をつけるなど急騰劇を演じた。その後は米投資ファンド、ベインキャピタルによる保有株の一部売却報道が出て騰勢は一服したものの、9000円をサポートラインとして下値の堅い動きを続けている。 キオクシアと足並みを揃えるかのようにして、サンディスクの株価も9月初めの50ドル台から11月には一時280ドル台と5倍以上に上昇した。半導体メモリーを供給する企業が市況高を受けて設備投資余力が広がった場合、製造装置や半導体工場の設備を手掛ける企業には受注面で追い風となると期待される。半導体商社に対してもメモリー価格の上昇は業績に好影響をもたらすこととなる。こうした視点をもとに、半導体メモリーに関係する注目銘柄をまとめていく。 ●メモリー価格急騰で注目すべき銘柄群 ◎トーメンデバイス <2737> [東証P] 韓国のサムスン電子のメモリーを国内外に販売する 半導体商社で、豊田通商 <8015> [東証P]グループ。第2四半期(7~9月)はメモリー価格の急騰で収益性が大きく向上し、通期の業績予想を上方修正した。下期には先端AIチップの取り扱いを開始。車載ビジネスでは北米拠点の設立準備を進める方針とあって、成長志向を鮮明としている。株価は11月半ばに上場来高値1万2610円をつけた後、一時的に調整をしたが、1万1000円をサポートラインとして頑強な動きを続けている。 ◎リョーサン菱洋ホールディングス <167A> [東証P] 半導体商社で昨年4月に菱洋エレクトロとリョーサンが経営統合して誕生。29年3月期に売上高5000億円(26年3月期予想3700億円)、営業利益300億円(同95億円)に伸ばす経営目標を掲げている。来期は改革施策の推進フェーズから本格的な成長フェーズへの移行を想定。AIソリューション企業との資本・業務提携などを通じ、フィジカルAIを見据え新たな需要の捕捉にも取り組んでいる。子会社の菱洋エレクトロはエヌビディア製品の正規代理店として「2025国際ロボット展」にも出展し、最先端のソリューションについてデモンストレーションを行っている。配当利回りは4.6%台と高水準だ。 ◎日本マイクロニクス <6871> [東証P] ウエハー検査工程で、電気的検査に用いられるプローブカードを主力とし、メモリー向けでは世界シェアトップ。HBMの需要拡大を背景にDRAM向けプローブカード市場が伸長する。第3四半期(7~9月)のプローブカード事業の受注高は前四半期比で増加。1~9月期の経常利益は通期計画に対し進捗率が約85%に上る。株価は11月以降調整色を強めたが、足もとでは出直りの兆候もうかがわせる。 ◎新光商事 <8141> [東証P] ルネサスエレクトロニクス <6723> [東証P]との特約店契約を24年9月に終了し、事業環境が急変。9月中間期は減収・営業減益と低迷し株価は出遅れ感を強めたが、再編が加速する半導体商社セクターのなかで、新光商はレスター <3156> [東証P]と資本・業務提携の関係にあるほか、5月にはNEC <6701> [東証P]の販売特約店で北陸地方において強固な営業基盤を持つシミズシンテックの子会社化を発表するなどM&Aも展開。任天堂 <7974> [東証P]と強固なパイプを持つ三信電気 <8150> [東証P]にも出資しており、今後の動向に注目が集まる。村上世彰氏の長女の野村絢氏らが大株主となっており、旧村上ファンド系による保有割合は11%まで上昇した。 ◎ジャパンマテリアル <6055> [東証P] 半導体工場向けの特殊高圧ガス供給システムや設備管理、装置メンテナンスを手掛ける。北海道に建設中のラピダスの新工場に加えて、キオクシアHDの北上工場の新工場棟などの案件が足もとの業績に貢献してきたが、マイクロンの広島工場においても来年5月に新たな製造棟の着工が始まると報じられており、Jマテリアルの中期的な業績拡大に大きく寄与するとの思惑が広がりそうだ。9月中間期決算は4割の経常増益ながら株価は下押しを余儀なくされたものの、200日移動平均線手前で下げ渋った。 ◎ミナトホールディングス <6862> [東証S] 産業用メモリーを供給しM&Aを駆使して業容を拡大。メモリー市況高の恩恵の思惑から株価は動意づき、その後11月28日には通期の業績予想の上方修正を発表。翌営業日の12月1日に年初来高値の更新を果たしている。サムスン電子の日本法人とトーメンデバとともに共同事業も展開。国内大手メーカーの製品に搭載されるデバイスへのROM書き込み数量が増加するなど好調に推移している。メモリー価格の上昇も追い風となり、デジタルデバイス事業において、前年同期にあった大型スポット案件の反動を受けながらも26年3月期は経常利益が前期比2倍以上に拡大する見通しだ。株価急騰後の日柄調整を経て再び上昇トレンドに復することができるか注視される。 ◎AKIBAホールディングス <6840> [東証S] 産業用途から一般向けパソコン、サーバー用増設モジュールやフラッシュメモリーを製品群に持ち、通信インフラ工事などに展開する。9月中間期は2割の増収で最終損益は黒字に転換。Windows10のサポート終了に伴う更新需要が追い風となったほか、メモリーの需給ひっ迫による価格上昇も収益拡大に寄与し、主要顧客の大型案件についても受注は想定を上回る規模となったという。サービスロボットの保守代行やエヌビディア製品の取り扱いなど、株式市場にとって関心の高い領域で事業拡大を図っている。PER(株価収益率)は8倍台と割安感が強い。 このほか、半導体商社のシンデン・ハイテックス <3131> [東証S]や、次世代半導体向け計測装置がキオクシアの量産ラインに導入されることとなったリガク・ホールディングス <268A> [東証P]、半導体製造工程で使われるダイボンダーにおいてメモリー分野で圧倒的なシェアを誇るFUJI <6134> [東証P]、半導体工場の保守・運営を得意とし、キオクシア向けに実績を持つティアンドエスグループ <4055> [東証G]などもマークをしておきたい。 株探ニュース
