20兆円超の追い風「建設コンサル」、副首都構想で大車輪の上昇相場へ <株探トップ特集>
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―国土強靱化が強力フォロー、思惑材料満載し成長ロードまい進― 「建設コンサルタント」に活躍の舞台が広がっている。高市早苗首相は「日本成長戦略本部」を司令塔として、「防災・国土強靱化」など17の戦略分野に集中投資を行い「ジャパン・イズ・バック(日本の復活)」を図る方針だ。こうしたなか、AI・半導体、防衛、核融合、サイバーセキュリティー関連株などに投資家の熱い視線が注がれるが、いまひとつ盛り上がりに欠けるのが「国土強靱化」関連株だ。しかし、巨大地震の発生が予想され、大規模な自然災害が頻発化・激甚化するなか防災・減災に向けた動きは待ったなしの状況にある。更に、来年度には防災庁の設立が予定されているだけに、注目は怠れない。言われて久しい国土強靱化による安全で安心な国土の創出だが、ここで重要な役割を担うのが、防・減災やさまざまな社会インフラを支える建設コンサルだ。改めて、同関連株のいまを点検した。 ●20兆円強のインパクト 建設コンサルの役割は、さまざまな社会的基盤構築に及んでいる。防・減災から国土基盤の整備、街づくり、設計、環境、新エネルギー、システム開発まで幅広く、社会資本の整備になくてはならない存在といえる。更に、ここ株式市場でも注目度が極めて高い、老朽化する社会インフラの点検・保守などにも活躍領域を広げている点も見逃せない。今年6月に閣議決定された、2026年度から5年間で事業規模を約20兆円強とする「第1次国土強靱化実施中期計画」も、建設コンサル関連株への強いインパクトとなる。 10月には高市政権がスタートしたが、所信表明演説のなかで、来年度の防災庁の設立に向け、準備を加速させることを表明。また、「デジタル技術や衛星情報、電磁波、ドローンなども活用しながら、防災インフラ、老朽化したインフラの整備・保全を始め、ハード・ソフトの両面で、事前防災・予防保全を徹底」するとしており、こうした面においても建設コンサルの活躍場面が広がりそうだ。また、自民党と日本維新の会との連立で急浮上した「副首都」構想だが、高市首相も「首都及び副首都の責務と機能に関する検討を急ぐ」としており、これが進展すれば建設コンサルは公共事業との連携も強い業態なだけに思惑買いを誘う可能性もある。 建設コンサル株の業績については強弱観が入り交じるが、同業界は「下期偏重」という特徴があると言われている。行政や官公庁に関連する業務が多く、年度末が一つの節目になることで「(一般論として)下期偏重になる傾向は強い」(業界関係者)という。年度末を控え繁忙期を迎えるなか、建設コンサル関連株には目を配っておく必要がありそうだ。 ●日水コン、進捗率は86% 日水コン <261A> [東証S]は昨年10月に上場したニューフェースで、上下水道を中心とした建設コンサルを展開している。官公庁案件に強みを持つが、ゲリラ豪雨や水害が激甚化するなか、6月には「水害対策ワンストップソリューション(都市下水予測)」が福岡市の公募事業に採択されるなど存在感を高めている。25年12月期第3四半期累計(1~9月)の連結経常利益は前年同期比13.9%増の19億8600万円となり、通期計画(23億2000万円)に対する進捗率は86%となった。直近7~9月期の同損益は、2700万円の赤字に転落したが、会社側では第1四半期に利益が集中し、第3四半期は売上計上が少なくなる傾向があるという。株価は9月4日に3595円まで買われ上場来高値を更新した後は調整局面入り。現在は、下値を探る展開ながら2400円割れでは押し目買い意欲も感じられ、じわり調整一巡感も漂う。 ●応用技術は副首都構想で思惑も 応用技術 <4356> [東証S]は構造解析、防災環境解析に定評があるが、環境系コンサル、まちづくり支援関連業務などにも注力している。同社が持つ高度な解析技術を活用したコンサルが伸長しており、業績は好調に推移している。25年12月期第3四半期累計(1~9月)の経常利益(非連結)は前年同期比39.6%増の10億1700万円となり、すでに通期計画(9億3600万円)を超過している。10月20日に2106円で年初来高値をつけ、その後は軟調展開を強いられているものの、1800円近辺では頑強展開となっており、反転期待も高まる。また、同社は大阪市に本社を構えるだけに、副首都構想を巡る動きが加速すれば、その思惑から株価を刺激される可能性も。 ●上値指向を強めるアジア航 航空測量大手のアジア航測 <9233> [東証S]は、空間情報コンサル事業の単一セグメントだが、社会インフラマネジメントと国土保全コンサルを主力とするなか、国土強靱化を背景に成長ロードを快走している。高精度なセンシング機材を活用し、激甚化・広域化する自然災害に対応するための国土の3次元地形データ整備や、都市・森林・インフラ設備などの3次元計測が順調に推移している。26年9月期連結経常利益は、前期比1.5%増の30億7000万円を計画し2期ぶりの過去最高益更新となる見通しだ。株価は、11月19日につけた直近安値1127円を起点とした戻りを試す展開に期待したい。 ●いであ、レアアースで脚光も 環境コンサルと建設コンサル主体のいであ <9768> [東証S]の株価が、高値圏を舞っている。同社は2月、24年12月期決算説明会資料のなかで新中期経営計画(第6次)の概要について公表。このなか自社開発のホバリング型自律型無人潜水機を活用し「コバルトリッチクラスト、メタンハイドレート(砂層型、表層型)、レアアースなどの開発計画における環境モニタリング、環境影響評価などに取り組む」とした。中国との緊張が高まる状況で、レアアース関連には波状的な買いが続くなか、海洋調査事業の拡大を今後の重要戦略に掲げる同社に投資家の熱い視線が向かっている。また、9月にはブルーイノベーション <5597> [東証G]との資本・業務提携を発表。公共インフラ向けドローン点検ソリューションの共同開発・提供などに取り組むとしており、事業領域の拡大にも期待がかかる。同社の25年12月期連結経常利益は、前期比3.3%増の35億3500万円と連続の過去最高益更新が見込まれている。 ●土木管理、NJS、E・JHDなどにも注目 土木管理総合試験所 <6171> [東証S]は土木建設の土質調査を手掛けるが、旺盛な国土強靱化需要を背景に業績は最高益更新を計画している。25年12月期第3四半期累計(1~9月)の連結経常利益は前年同期比6.2%増の3億5000万円となった。通期計画の6億9400万円(前期比14.3%増)に対する進捗率は約50%だが、直近3カ月間の7~9月期では同利益が同51.4%増の1億600万円と拡大しており、年度末に向けて巻き返しに期待も。老朽化するインフラのメンテナンスが喫緊の課題に上るなか、インフラメンテナンス維持管理業務では従来の目視点検に代わる、同社開発の3Dレーダ搭載車による高速調査・解析を活用した維持管理・更新コストの削減にも注目が集まる。株価は、9月9日に573円で年初来高値を形成以降は上値の重い展開が続く。現在は、直近安値の413円を底に切り返せるかの正念場となっている。 上下水道のコンサルを展開するNJS <2325> [東証P]は、戦略・計画の策定と事業運営の両面から下水道事業の課題にソリューションを提案している。今年1月に発生した下水道管の破損が原因とみられる埼玉県八潮市の県道陥没事故で、ドローンを使用した現場調査を実施し復旧活動に協力したことで、株式市場では一躍スポットライトが当たり株価が急上昇した経緯がある。インフラ点検が社会基盤の重要課題となるなか、今後も注目は怠れない。11月7日には、同社及び他9社が、愛知県が進めている「豊橋浄水場再整備等事業」で落札者に決定している。 そのほかでは、受注の大半が官公需という特性を持つE・Jホールディングス <2153> [東証P]にも注目。26年5月期第1四半期(6~8月)の連結経常損益は14億6600万円の赤字(前年同期は10億500万円の赤字)となったが、会社側では納期が年度末に集中するため、売上高が第4四半期連結会計期間に偏重する傾向にあるという。また、建設コンサルの役割が大きくなるなか、オリエンタルコンサルタンツホールディングス <2498> [東証S]や応用地質 <9755> [東証P]などにも目を配っておきたい。 株探ニュース
