明日の株式相場に向けて=師走相場突入、大化けリレーのバイオ株
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名実ともに12月相場入りとなった1日の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比950円安の4万9303円と5日ぶり急反落。月初は機関投資家のリバランス売りが出るというのが最近の相場における定石となっており、きょうもその思惑が広がるなか、先物を絡めた売り仕掛けで日経平均は一時1000円を超える大幅安となった。この月初に売られるパターンは今年6月以降7カ月連続とお決まりのパターンとなっている。しかし、もう一つ言えることは、月初の急落場面で仕込んで月末に利益が取れなかったケースは、直近11月を除けば皆無であった。機関投資家の機械的な売り圧力によってもたらされる月初の下げは、経験則からすれば嬉々として買い向かって報われる可能性が高いことになる。 米国では12月9~10日の日程で開催されるFOMCで利下げが実施される可能性は8割を超え、ほぼ既定路線となっている。しかし、そこから1週間あまり後に行われる18~19日の日銀金融政策決定会合では、にわかに利上げの公算が大きくなった。きょう名古屋市の金融経済懇談会における植田和男日銀総裁の発言内容が、利上げ実施を強く印象づけるものだったことから、これが日経平均の下げを助長する格好となった。もっとも、仮に12月に見送られた場合でも、来年1月22~23日の会合で利上げを行うというシナリオが有力視されていたわけで状況的に大差はない。むしろ、今回の利上げの後、半年程度は利上げなしという見方が浮上していることで、これはマイナス材料としてはいったん出尽くしといってもいいくらいの話である。 個別ではバイオ関連株の一角に引き続き怒涛の買い攻勢がみられ、全体相場とは完全遊離した鉄火場の様相を呈している。需給主導の上昇ではあるが株価変貌率の高さという点では、ハイテク系銘柄をはるかにしのぐ。機関投資家の買いポジションが極めて軽い、もしくは保有対象となっていないことから、大口の売りが出にくいという背景があり、年末特有の材料株相場の流れを形成している。何といっても瞠目に値するのが免疫生物研究所<4570.T>。きょうの逆風環境でもストップ高を演じ、これで5日連続ストップ高を記録。同社株の場合、既に11月14日から11月20日のザラ場高値まで5日連続して値幅制限いっぱいに買われていたという現実がある。1営業日のみ小休止を入れたが、計10回のストップ高を演じるという突然変異的な驚異の上昇パフォーマンスで株価は8倍近くに化けた。これは遅かれ早かれ反動が出るにせよ、ここまでのプロセスで、相場の持つ恐ろしさが表現され尽くしている。前半のS高連発の時点で貸株市場を通じた空売りが急増したが、いうまでもなく踏み上げの肥やしとなってしまった。途中参戦も難しい銘柄になってしまっているが、バイオ関連は免疫生物研に刺激され2匹目、3匹目のドジョウを探す動きが相次いでいる。トランスジェニックグループ<2342.T>も免疫生物研の背中を追うような値動きとなっている。きょうは、既に上げ足鮮明となっていたラクオリア創薬<4579.T>も輪をかけて人気化し、1本値でストップ高に買われた。これで2営業日連続して値幅制限いっぱいに買われ、大化け株チケットを手にしたようにも見える。トランスGGに業態が近いフェニックスバイオ<6190.T>もストップ高で切り返している。 バイオ関連では30円配当で4.3%弱という異色の高配当利回りを有する生化学工業<4548.T>に着目。週足でみた長期波動で大底圏に位置しているが、0.5倍台のPBRは同社の場合、財務体質に難があるバイオセクターにあっても、例外的に額面通り水準訂正余地を示唆するものとなる。一株純資産並みに買われたとして1340円までの上値余力がある。このほか、瞬発力の高いキッズウェル・バイオ<4584.T>や坪田ラボ<4890.T>の押し目買いにも妙味がありそうだ。 レアアース関連では急騰を演じてきたアサカ理研<5724.T>が前週末から利食い対象となってしまっているが、日中間の緊張を背景に同テーマをターゲットとした物色の波はそう簡単には消滅しない。ここで主力銘柄の一角と言ってもよい大型株で信越化学工業<4063.T>を中期保有対象として注目してみたい。同社はご存じの通り、塩ビと半導体シリコンウエハーのトップメーカーだが、レアアースの分離精製技術でも世界指折りの技術力を持っている。日本にとって国家戦略的な見地からも重要な存在といえる。 これ以外では、データセンター向けにアルミニウム需要が旺盛で、関連株への恩恵が市場関係者の間で話題となっている。新値圏をまい進する日本軽金属ホールディングス<5703.T>の強さが際立っている。アルコニックス<3036.T>も同様で、こちらは18年2月につけた2690円(修正後株価)の最高値更新も視界に捉えた。 あすのスケジュールでは、11月のマネタリーベースが朝方取引開始前に日銀から発表される。前場取引時間中には10年物国債の入札が行われる。また、後場取引終盤に11月の財政資金対民間収支が財務省から開示され、取引終了後に発表される11月の国内ユニクロ既存店売上高などにもマーケットの関心が向きそうだ。海外では10月のユーロ圏失業率、11月のユーロ圏消費者物価指数(HICP)速報値、10月の求人労働異動調査8JOLTS)など。なお、この日はボウマンFRB副議長が米議会下院の金融サービス委員会で証言を行う予定。(銀) 出所:MINKABU PRESS
