米市場変調で緊張感、調整時に真価発揮のクオリティー系6銘柄精選 <株探トップ特集>
投稿:
―利下げ観測回復も米短期金融市場など波乱の芽、高ROE株は押し目待ち需要旺盛― 5万円の大台替えを達成した日経平均株価は利食いに押され一時的に4万8000円台まで下落した。26日には4万9000円台まで戻したものの、米国を中心にマーケット環境の変調ぶりを指摘する声は多く、日本株についても調整局面入りへの警戒感がくすぶった状況にある。過去を振り返ると全体相場がリスク回避的な動きになった後、下落に一服感が出た場面でROE(自己資本利益率)が高水準な銘柄など「クオリティー銘柄」が先行して物色されるケースが散見される。押し目待ちの資金流入先として期待される有望株にスポットライトを当てていきたい。 ●エヌビディア株の弱気相場入りに警戒感 テクニカル分析において調整局面入りとは、価格が高値から10%以上値下がりした状態を指す。日経平均は下落基調とはいえ、そこまで値下がりはしていない。だが米株式市場の柱と目されるエヌビディアは、すでに調整局面入りとなっており、高値から20%以上値下がりした状態を指す弱気相場入り目前まで株価は下落している。リスク選好度合いを示すとみられる暗号資産のビットコイン価格に至っては高値から3割以上も下落した。 日経平均のチャートをみると、2024年3月に4万円の大台替えを達成した後、その4カ月後に4万2000円台に水準を切り上げてから、2度の急落に見舞われ、再び上昇トレンドに復するまでに1年以上も横ばいの地合いが続いた。3万円の大台替えとなった21年2月に関しては、その7カ月後に高値を上回る場面があったが、再び上昇トレンドを取り戻したのは23年5月以降とかなりの時間を要している。22年3月には2万5000円を下回る水準まで調整する局面があった。テクニカル信奉者に言わせれば、大台替えは調整局面入りのシグナルということになるに違いない。 今月に入り日本株が頭打ちとなった要因として、高市政権の経済対策による国内金利の急上昇を挙げる市場参加者は少なくない。金利上昇はハイテクなどの高バリュエーション株には逆風となり、設備投資コスト増に対する懸念も強まることとなる。21日に閣議決定された経済対策のうち、いわゆる「真水」の部分は21兆3000億円程度。24年の前石破政権の経済対策を上回る規模となった。閣議決定までの過程で、長期金利は一時1.835%と17年半ぶりの水準に切り上がった。ただし直近では金利上昇に一服感が出ている。 円安や債券安(金利の上昇)を受けて、安易な景気対策で英国金利の急騰を招いた22年の「トラス・ショック」を連想する向きもあった。だが、当時の英国と今の日本を単純に重ね合わせることは難しい。22年の英金利急騰は英中央銀行であるイングランド銀行の量的引き締め(QT)開始のタイミングと重なり、債券需給悪化の懸念が強まったことも大きかった。日本株に関しては円金利の上昇とともに、日中関係の急速な悪化など、リスク性資産には逆風となる悪材料はほかにもあったが、やはり無視できないのは米国市場の動向だ。AIブームの収束懸念が日経平均の足を引っ張る要因となっている面は否定できない。 ●米短期金利に上昇圧力 米国では政府機関の閉鎖が終了し、米国の相互関税による世界景気の低迷懸念は今のところ顕在化しておらず、対中貿易摩擦を巡る緊張感は幾分和らいでいる。利下げ観測が後退した場面で米国株が下値を探る動きをみせたのを踏まえると、米連邦準備制度理事会(FRB)の金融政策を巡る観測が依然としてマーケットに大きな影響力を持った状態が続いていると言える。 そんななかで注目が集まったのが、米国の短期金融市場である。22年から始まったQTは米金融当局のバランスシートを約9兆ドルから6.6兆ドル未満に縮小させた。米金融機関の準備預金残高は2.85兆ドル程度まで減少している。短期金融市場での資金供給が減少する一方、大型減税・歳出効果により米政府の資金調達が増え、資金需要が拡大している。資金需給がひっ迫化するなかにあって、短期金利に上昇圧力が掛かることとなった。 QTは12月1日に停止する予定だ。資金需給は幾分改善されると期待されるものの、楽観はできない。多くの米企業が年度末を迎える12月は、クリスマス商戦もあって資金需要が急増するタイミングである。ニューヨーク連銀は11月中旬に大手証券会社で構成するプライマリーディーラーと臨時の会合を開き、短期金融市場の流動性改善に向けて資金調達手段の一つである常設レポ・ファシリティー(SRF)の活用を促したと伝わった。ところがSRFを通じ中央銀行であるFRBから直接資金を借り入れる行為は、経営不安を示唆するものと受け止められる恐怖もあり、利用は進んでいないとされる。 同連銀でFRBの公開市場操作を運用する責任者は、遠くないうちに資産購入に伴う資金供給を開始することになるとの見解を示したとも報じられている。仮にこの通りになれば、株式市場は「実質的なQE(量的緩和)」とはやすかもしれない。FRBにとっては、資産バブルを助長しかねない決断となる。半面、決断が先送りとなればそれなりの失望感をもたらすこととなるだろう。資金需給のひっ迫に対する金融当局の対応が一段と遅れることとなれば、マーケットに深い爪痕を残す可能性も高まっていく。 ●業績拡大中の高ROE銘柄に注目 短期金利の急騰は資金調達コストを増大させ、金融商品を担保として資金を調達しレバレッジを効かせて運用するファンド勢の資金の逆回転にも直結する。信用不安が顕在化した際には日本株も無傷ではいられない。だがリスク回避局面が一巡した際には、「質」を重視する姿勢が顕著となると想定される。その時の銘柄選別となれば、ディフェンシブセクターのほか、財務体質が強固なキャッシュリッチ銘柄、効率的に利益を創出する高ROE銘柄が候補に挙がることとなるだろう。今回は高ROE銘柄のうち、堅調に業績を拡大している6銘柄に注目していく。 ◎船井総研ホールディングス <9757> [東証P] 経営コンサル大手。25年12月期第3四半期累計(1~9月)の経常利益は前年同期比7.2%増の63億9700万円。通期は過去最高益を連続更新する見通しだ。ROEは今期30%近くと5期連続で上昇が見込まれている。12月31日を基準日として1株を2株に分割する予定。株価は9月末から調整含みとなったが、足もとでは下げ止まりの兆しを見せている。 ◎ラクス <3923> [東証P] 「楽楽精算」や「楽楽勤怠」など企業向けクラウドを展開。今期のROEは50%に接近し4期連続の上昇の見通し。11月14日発表の9月中間期決算は2ケタの増収増益で、通期の業績・配当予想を上方修正した。プラスアルファ・コンサルティング <4071> [東証P]との資本・業務提携も好材料視されている。株価は25日移動平均線を下回って推移。1200円が下値サポートとなっている。 ◎守谷輸送機工業 <6226> [東証S] 荷物用エレベーター大手。今期のROEは28%近くと3期連続で上昇の見通し。11月12日の9月中間期決算発表に先立ち、通期の業績・配当予想を増額修正し、今期の売上高は前期比22.2%増の237億5000万円、最終利益は同26.0%増の35億8000万円と連続最高益を計画する。新設エレベーターの粗利益率が改善し、保守・修理の売り上げも伸長。5000円の大台乗せ後に株価は横ばい圏で推移しており、上昇トレンドへの復帰が待たれる。 ◎ユー・エス・エス <4732> [東証P] 中古車オークション運営最大手。今期のROEは20%台に乗せ、3期連続の上昇となる見通しだ。9月中間期は出品台数と成約台数が想定を上回って推移。11月11日に通期業績・配当予想を上方修正し、今期の売上高は前期比7.5%増の1118億円、最終利益は同5.3%増の396億5000万円を予想する。株価は9月の権利付き最終日の直前で急落。その後は少しずつ回復に向かっている。 ◎ANYCOLOR <5032> [東証P] Vチューバーユニット「にじさんじ」を運営。26年4月期第1四半期(5~7月)決算は、経常利益が前年同期比2.6倍の69億9800万円に急拡大した。決算発表にあわせて通期の業績予想のレンジを引き上げている。Vチューバーユニットの周年施策や季節性の大型施策が奏功し、グッズ販売などのコマース売上高が計画を上回る進捗となったことが好業績の背景。今期のROEは58%台と2期連続で上昇の見込みだ。株価は順調に上昇トレンドを歩み、22年の過去最高値が目前に迫っている。 ◎システナ <2317> [東証P] 次世代自動車向けに注力するソフト開発支援会社で、今期のROEは28%台と2期連続で上昇する見通し。9月中間期の経常利益は前年同期比46.5%増の79億2700万円に拡大した。決算発表とともに通期の業績・配当予想を上方修正し、2期連続の過去最高益予想を更に上乗せしている。車載システムなどの開発が好調で企業向け業務システムの売り上げも拡大。成長事業への経営資源のシフトと契約単価の上昇も寄与する。株価は500円台に乗せた後、横ばいで推移している。NTTデータのコアビジネスパートナーに認定されたことなどによる業容拡大を期待したい。 株探ニュース
